4.授業
ふと声が聞こえ意識が覚醒する。あたりは暗く最後に記憶があるのは5限の授業終わった休憩時間だ。そのことからわかるのは学校が終わったということだろうか?
寝ぼけて頭が回らない…寝すぎたのかな。時間を確認しようと顔を上げようとした時、
「私はあなたのことが好きだよ」
いきなり耳に入った言葉には意味がつかめず、混乱する。状況がつかめない…
客観的に自分を見たらわかるのは俺は寝ているようにしか見えない…
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目が覚め周りを見る、自分の部屋だ。目覚まし時計には05:28と表示されている。夢を見た気がするが頭が回らない。時間的にはまだ余裕がある。だけど、今寝たら間違いなく寝坊する…起きて準備するか。
回らない頭で学校の準備をしたら朝飯を用意する…眠い。食パンを焼いてコーヒーを入れる、バターを塗って口に運ぶ。カフェインに期待してコーヒーをすする。が、眠気が覚める気がしない。昨日はなぜか眠れなかった。遊び疲れたからよく眠れるはずなのに全く眠れなかった。布団に入り目を閉じているのに、意識がなくなる気配がなかった。睡眠時間は体感で2時間ぐらいだ。
飛菜子から借りた本を読み終わると気づいたら学校に行かなければいけない時間帯からかなりすぎている。やべー急げ、急いでバスに乗ればまだ間に合う。
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結果的に間に合ったが朝のホームルーム中に着いた。
…ガラガラ…
「すみません、遅れました。」
「雨田か、よかったな今始めたばっかりだ。」
「…」
席に着き担任の話を聞いてホームルームが終わった。
「よ、雨田寝坊か?」
「朝早かったから本を読んでたら遅れた。」
「雨田は本を読んでたら周りを見ることがないから気をつけろよ?」
「俺ってそんな節あったか?」
「リューが気づいてないだけで、あるんだよ」
気を付けよう…
「華麗、次の授業なんだっけ?」
「英語」
「…あの女の先生の授業か…」
「女の先生?」
「マジ?」
「華麗と大野、まさかあの先生を男の人かと思ってた?」
「女の先生って事実?」
「いや、雰囲気でそう思っただけだけど?」
気付けば周りでは議論が始まっていた…
「えぇー、じゃあ神代先生が男か女か分からない…」
「おい!何騒いでる、とっくにチャイムはなっているぞ。早く席に着け!」
「あ、神代先生だ。…先生ー、先生は恋愛関係の彼女いますか?」
「(勇気あるな華麗、そしてその聞き方は遠回りだな。)」
「そもそも恋愛に興味がない」
「(華麗が『先生は女ですか』 神代『そんなの関係ないだろ!』 先生答えになってないです。)」
「はーい」
「今日は教科書の3ページからだ、今日は10日だから10番!読め!」
「(相変わらず怖い…)」
「My name is jon.I like to read book.……」
「(要約すると、私の名前はジョンです。私は本を読むのが好きです。…)」
「よし次、1+0で1番読めー」
「(そのタイプの先生かー)分かりました。」
「お前は教科書を見るな、」
「なんで?」
「敬語忘れてるぞ」
「なんでですか?」
「とりあえずむかついたから、(初めて気づかれたけどそれを大勢の前で言われたからな)」
「あのーすみません、かなり難しいので許してください。」
「許さん」
「分かりました、じゃあ読みます。(とりあえずさっき見たからそれをそのまま読むか)」
「早く読め」
「I want to go to japan,because i want to buy japanese comic.(日本の漫画を買いたいので、日本に行きたいです。)…」
「終了だ…よく覚えてたな」
ずっと本を読んでたせいか知らないけど、一度見た文章は少しの間は覚えている。設定が多い小説とかいちいち読み返すのめんどくさいし、
「じゃあ、本文の解説をするぞー」
疲れた…
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「リューはなんであんなに神代先生が起こってたのぉ?」
「知らない、俺は何も分からない」
「(まさか雨田が神代先生を女の先生って言っているのを聞いたから?それなら、神代先生が女の先生っていうのはあっているんじゃないか…)」
「大野は分かるか?」
「知らんぞ」
「リュー、明後日のことだけど…リューが教室に来る前に行き先が決まったみたいだよ。行き先は"rain"だって、」
「あそこカラオケか、分かった」
「リュー明後日一緒に行かない?」
「そうだな」
「(別にいいけど今雨田に突撃するのはあまり効果を保証できない)」
「雨田、土曜日の場所ってどこ?」
「あ、飛菜子、言っても分からないと思うけど?」
「…お・し・え・て…」
「分かった、また後で地図送るわ」
「ありがと」
「つ、都留さん、リューと結構仲がいいのね」
「………すみません」
あ、帰っちゃった。
「都留さん、どうしちゃったの?」
「昔ちょっとあったらしくて…人と仲良くするのがちょっと苦手みたい」
「(へー、それがあるのに雨田には気が許せるんだ。)」
「私はリューと都留さん関係が気になるけど聞いてもいい?」
「いいけど、そんなに気になるか?」
「気になる」
「基本的には昨日大野に言ったことと一緒だけど…」
「(雨田は完全に勘違いしているみたいだな。)」
キーンコーンカーンコーン
「授業が始まるからそろそろ席に帰らないとな」
「…」
それからは普通の授業だ。俺はひたすら教科書を読んで過ごしていた、国語の授業はまさに天国だ。授業中に合法的に小説を読める。教科書にあるもの限定だけど…この教科書センスがいい。
「おい、教科書を熱心に読むのはいいけど、音読している奴がいつからちゃんと聞いてやれ…じゃないとお前に教科書を見ずに音読させるぞ?」
怒られた。ていうかこの高校は怒ったら教科書を見せずに音読させる風習があるのか?
「なんでここの学校の先生は教科書を見せずに音読させる人が多いんですか?てか?神代先生がそうしていたって聞いて面白そうだからだ。」
この学校の先生は怒らせたらだめみたいだ…そんな理由でまた教科書を暗唱した。
「反省しろよ?」
俺この学校の先生に嫌われている気がする…どうしよう?
適当に過ごしていたら、午前の授業が終わり昼食の時間になった。
「「リュー(雨田)一種に食べよう」」
華麗と飛菜子が同時に誘ってきた…華麗は入学式以来少し距離をとるようにしているからどうしようかな。…そうだ、飛菜子と華麗一種に食べて二人を仲良くさせれば飛菜子に友達ができるんじゃないか?試してみよう。
「二人とも一緒に食べるか?」
「…(私まだ雨田以外の同級生としゃべるのが苦手なのにしかも女子…)」
「…(リューと都留さんの関係について聞く機会を得ることができるけど…)」
「どうした二人とも、」
「…食べます」
「…食べる」
まぁこれが二人の仲良くなるための第一歩になるのかな?
「都留さん、」
「はい、何ですか?」
「好きなことはなに?」
「…本を読むことです。」
「(本ばっかり読んでいても華麗ならバカにはしないだろう…)」
「ジャンルは?」
「…小説なら何でも好きです。」
「今度私の行きつけのケーキ屋があるんだけど一緒にどう?」
「…行きたいです。」
「ねぇ、私も都留さんのことリューと同じ飛菜子って呼んでいい?」
「…いいですよ」
「その代わり私のことも下の名前でよんでね」
「分かりました。」
もともと華麗がこういう性格だからすぐに打ち解けそうだな…俺がしたことは余計なお世話かもしれないけど…まぁいっか。
「ご馳走様。」
「リュー、食べるの早くない?ていうかそれで足りたの?」
「ご飯はちゃんと食べないとだめだよ?」
「ちょっと今日は食欲がない」
そういって食器をかたずけ食堂から出ていき自分の席に帰った。あからさまに華麗から距離をとるといけない。いくら失恋したからといってもそれを伝えていない俺は距離をとることは怪しまれて華麗の邪魔をする可能性がある。できる限り華麗の邪魔はしたくない…
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5限の授業は数学で教科書を読むところもない…寝不足だったからか昼食をとった直後の授業はとても眠い。さらに最初の方の数学は基本の復習みたいで睡魔を加速させる。これ以上先生からの評価を落とせば何かしら後で困る可能性が高い。がんばって意識を保たなければいけない…
かなりの時間睡魔と戦い5限目が終了した。次の授業は選択科目の音楽か、確か教室が遠かった気がする。歩き始めて5分休憩が終わるタイミングで教室に着いた。
選択授業は音楽、美術、書道、家庭科の4つでここの教室にいるのは同じクラス奴がの4分の1がいるはずだ。そこにほかの4クラス奴がの4分の3がいる…はずだ。俺は絵は下手だし、字をきれいに書くことは得意ではなく、残った二つからの消去法だ。同じ選択を選んだのは華麗と飛菜子だ。
「リュー、帰るの早すぎない?」
「雨田、いきなり帰るから探したよ…」
「すまん、教室に忘れ物したから取りに行ってた。」
少し話していると先生らしき人…谷川が入ってきた?谷川は体育の担当だから音楽ではないはず…
「今日、音楽の鈴木先生が昼頃に体調を崩されて早退した。俺がその代わりとして来た谷川だ、1年D組の担任をしている。席順は関係なく適当に座れ。って言っても俺は音楽の授業はさっぱり分からないし、授業をしろともいわれていない。お前ら、何をしたい?出来れば音楽の授業と関係するものを言ってくれ、それをするから。」
「はい、先生」
「えーと、丸山どうした?」
「映画を見たいです。」
「映画か、音楽と関係する映画なら準備室にあるからそれにするか…」
そういってとってきたのは題名が朝読んでいた小説と同じだった…内容は小説だからこその面白さがあった作者の表現方法が面白い恋愛ものだった…
映画を見始めて10分くらいが経過した。とりあえず思うのは小説での面白さを表現しようと工夫があると思ったけど、映画での面白さが全くなくあまり面白いとは言えないけど周りの奴らは真剣な顔をして見入っていた。
周囲が暗いため睡魔が襲ってきた…ここまでくらいなら寝てもいいだろう、別にこの授業出席大事じゃないし。
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ふと声が聞こえ意識が覚醒する。あたりは暗く最後に記憶があるのは5限の授業終わった休憩時間だ。そのことからわかるのは学校が終わったということだろうか?
寝ぼけて頭が回らない…寝すぎたのかな。時間を確認しようと顔を上げようとした時、
「私はあなたのことが好きだよ」
いきなり耳に入った言葉には意味がつかめず、混乱する。状況がつかめない…
客観的に自分を見たらわかるのは俺は寝ているようにしか見えない…
顔を上げて周囲を見渡してみると…前にあるスクリーンに恋愛もののようなシーンが映されている。
そういえば、音楽の授業で映画を見ることになったんだった。
「雨田、そろそろ起きないと怒られるよ?」
「分かった。」
前に移っているシーンを見てみると、小説で読んだところで一番面白かったと思ったシーンだった…
…ちゃんと見よう…
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キーンコーンカーンコーン
「終わったな、休憩中に言っていた通り感想文を書いて来週のこの授業に提出してもらう。」
「(そんなの知らないんですけど…)」
「雨田は寝てたから知らないと思う…」
「リュー、どうやって書くの?」
「今朝映画の原作をたまたま読んでいたからそれでごまかそうかな…」
「まさか今朝それで遅れたの?」
「寝坊」
「チャイムなったから授業は終わり、解散!!」
「はーい、」
今日の授業はこれで最後だ。今日はまっすぐ家に帰ろう…
「雨田、一緒に帰ろう?」
「あぁ、分かった。」
「リューと都留さん結構仲がいいね…」
「…華麗ちゃんも連絡先交換しない?」
「いいけど?」
「私は華麗ちゃんとも仲良くなりたい…」
「これ私の連絡先だよ」
「(何があったんだろう?こんなにも早く飛菜子が同世代の女の子と仲良くできるとは…)」
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学校が終わり、華麗と別れた。華麗は大野と同じ方向だから一緒に帰るみたいだ。俺は飛菜子と一緒に家に帰る道での最短ルートを通って帰っている…
「雨田、今日の昼に華麗ちゃんから聞かれたんだ『リューとどんな関係ですか?』って、これってなんか意味あるの?」
「…それは多分、俺が急に仲良くなったやつのことが気になっているだけだと思う。昔の大野のときもそうだったし…」
「嫉妬ってこと?」
「そうかもな、まぁやきもちではないと思う。」
「何が違うの?」
「やきもちは好意からくるもので嫉妬の一部、嫉妬は好意があるなし関係ないみたいな・?」
「そんなことの違いなんだね…」
実際俺のことを華麗が好きなはずはない。断言しよう、華麗は大野のことが好きだ。今はこの気持ちをできる限り隠して、傷をいやそう…
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「そうだ飛菜子、また本を貸してくれ。」
「もう読み終わったの?」
「読み終わった」
「私より読むのが早いね、」
「普通だと思うけど?」
「私はこの前買った本をまだ3冊くらいしか読めてないのに…」
「家でずっと本を読んでるからな。それ以外を何もしていないし」
「…じゃあ、部屋に上がって」
「分かった…」
飛菜子の部屋に行き本棚を物色していると、飛菜子がコーヒーを入れて入ってきた。
「ちょっとだけ話そう…」
「何を?」
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食堂で華麗ちゃんに言われたことが気になった。
私と雨田の関係はどんな関係か?華麗ちゃんの顔は真剣だった。小説とかに出てくる恋する女の子そのものに感じた。そもそも好きでもない男と一緒にいる女の関係をそんな顔で聞くだろうか?
もし華麗ちゃんが大野君を好きなのなら矛盾が生まれる。雨田は何か恋愛関係の話を聞いて勘違いしたんじゃないだろうか…もし雨田が失恋したというのが勘違いなら私は雨田から距離をとらないといけないのだろうか?
「ちょっとだけ話そう…」
「何を?」
「えーと、(これを直接聞いたら雨田が傷つくんじゃないだろうか?)」
「どうした?」
「いや、やっぱりなんでもない(雨田を傷つける覚悟をできないし、私の思い込みかもしれないし…)」
「調子が悪いのか?」
「元気だよ、ちょっと何を言おうしたかを忘れただけ」
「そうか、」
「借りる本は決まった?」
「うん、ここの本借りていい?」
「いいよ、」
「コーヒーおいしいな」
「おいしい豆から挽いたからね」
「そろそろ時間が遅いし帰るわ、」
「そうだね、また明日」
「また明日、」
玄関で別れてすぐ自分の部屋に戻る。部屋に入り、ベッドに寝転ぶ。
…なんであんなこと気になったんだろう…