38.相談
~雨田隆一~
責任を取って付き合う。
俺が呼んできた小説の中にそんな話はあまりなかった。
それほど、本気で好きでいた相手からすれば嫌がる行為なのだろうということは分かる。
だから、あの時にあの日にあの結末になったんだと思う。
期限を決めていない華麗との話をどうするべきなのか家の中で考えていても何も浮かばなかったため、気晴らしに適当に外を歩くことにした。
「…はぁ。」
ため息をついても何も状況は変わることはない。
だけど、ため息をつかないとやっていけなかった。
ただ、ため息をついただけでいい案が思い浮かぶわけでもなくただただ、時間が過ぎていった。
そんな時だった。
視線を感じてみてみると一人の後輩がいた。
竹取だった。
実際、相談する相手としては申し分ないのかもしれない。それほど頭はいいと思う。
「こんにちは、先輩。」
「あぁ、こんにちは。」
「何か悩み事ですか?」
「そんな風に見えるか?」
「はい。今はそんな風には見えませんが私に気付く前は何か悩みがあるような雰囲気でしたよ。」
「まぁ、その通りだな。」
竹取と会ってすぐに悩み事をしていることを表面上で隠すことにはしていたけれど簡単に見破られた。
「先輩は数少ない嘘が見えない内の一人ですからね。私なんかに先輩の悩み事が何なのか全く分かりませんがアドバイスはありますよ。」
「…聞こうか。」
大体、今俺の中学は授業中のはずで竹取がここにいることに疑問はあったがそれよりも竹取のアドバイスを聞いてみたくなった。
「先輩は悩む必要のないことを悩んでると思います。」
「…は?」
「先輩は人と比べて確実に頭がいい。ですから、先輩が頭を悩ませる悩み事がどんなことなのかは全く想像できませんが、確実に言えることは思い悩みすぎだと言えます。」
「?」
「先輩が思い悩んでも解決できない問題なら時間をかけてゆっくり解決していけばいい。すべてを一手で解決しようとするから思い悩んでいるのでは?…別に今すぐに解決しなければいけない状態でもないはずですよ。そんな問題なら私も手伝いますし。」
竹取らしい話だった。
「そうだな。」
「それで?悩み事というのは?」
「…お前に相談したら貸が一つなくなる気がするんだが?」
「…まぁ、そこまで言うなら相談料は取りませんよ。」
竹取は俺に貸がある。
金額に直せば確実に数万ぐらいにはなるだろうというほどの貸だった。
「まぁ、話すけど…」
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俺は竹取に悩み事をすべて話した。
「…驚きました。」
「何に?」
「先輩だって男の人だったんだなぁって…」
「俺を何だと思ってるんだ。」
「だって、私に対しても何もしなかったじゃないですか。」
別に顔に興味がなかったあの頃の俺は竹取が何をしようとも無視をしていた気がする。
「あの頃の私はそれが悔しくて何回か思わせぶりな態度とっても無反応の先輩を見て恋愛に興味がないんだと思ってたんですけど。」
「…」
「まぁ、私もそんな先輩は人として好きですけどね。」
「それは聞きなれてる。」
もう何度目だったか中学時代に聞いた覚えがある。
それに竹取に言われたからと言って何も思うこともないため俺は無反応を示した。
「…俺から一つ質問いいか?」
「はい。いいですよ。」
「竹取、お前。学校は?」
「…今日はゴールデンウィークですよ。」
「嘘つけ。それは明日からだろ。」
「…まぁ、正確に言えば親戚の命日のお参りですよ。」
よく見れば竹取は中学の制服を着ていた。
「…すまんな。変なこと聞いて。」
「別にいいですよ。会ったことありませんから。」
「そうはいっても、会社の偉いさんだろ?」
「まぁ、私とか先輩と比べれば見劣りするかもしれませんけど。」
「買いかぶりすぎだ。俺にそんな実力はない。」
実際、働く上での実力は上なのかもしれない。ただ、積み上げた実績や信頼、経験などは俺にはないため総合的には俺よりもはるかに上のはずだ。
「へぇー。じゃあ、私からも質問です。」
「なんだ?」
「先輩はどうして高校に行ってるんですか?わざわざ行く意味があるんですか?」
「暇つぶし。」
「私としては留学してもらえればありがたかったんですけどね。」
「ムリだろ。英語話せないし、ボランティア活動もしてない。」
「まぁ、そうですけど。私が雇うときに少しだけ苦労しそうだなぁって思っただけですよ。」
「まだ、本当にお前のところの会社で働くかなんて考えてないぞ。俺は…」
「やっぱり、そうですよね。…まぁ、いい返事を期待してますよ。」
そういって竹取はどこかに帰って行った。
誰かに相談したからか気が楽になった俺はその場にいる意味がないためまっすぐ家に帰ることにした。
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