35.夜
~都留飛菜子~
林間学校の一日目が終わって今私たちは部屋の中で本を読んでいた。
華麗ちゃんたちは初めは楽しそうに話していたけど疲れがあったのかすぐに眠ってしまったため今起きているのは私と井上さんだけでその井上さんは私が渡した小説に夢中になっていて今この部屋はとても静かだ。
私自身疲れていないわけではない、とても疲れているが眠れないので本を読んでいる。
「井上さん。」
「ん?」
「井上さんは眠くないの?」
「んー。旅行とか家と違う場所で寝ようとするとちょっと寝れないんだ。」
「そうなんだ。」
「都留は眠い?」
「眠たいはずなのに眠れないんだよ。」
「ごめん、電気消そうか?」
そういって井上さんは電気を消そうと立ち上がった。
「いや、いいよ。そういうので言ったんじゃないから…」
「そうなの?」
「別に電気を消したくて話したんじゃなくて話がしたくて話しかけたんだよ。」
「何か話があるの?」
「えーと、特にはないかな。でも何もないからって話しかけてはいけないってことはないじゃん。」
「ま、そうだよね。」
そういって井上さんは座って本を閉じた。
「私も都留と話すのは嫌いじゃないし。」
「私も。」
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「へー。あの後そんなことが…」
「そうだよ。」
「あの西田が告られてたとは…」
「その結果はどうなったかは分からないよ。」
「気になるけどそれじゃあ仕方ない。」
井上さんが気になっていた西田君のあの後の話を私はしていた。
「それよりもよく見つからなかったよね。」
「うん。なんか雨田が迷彩柄のポンチョを貸してくれたからなのか見つからなかったよ。」
「あいつなんでそんなものを…」
「それは私も分からないよ。」
「普通の人がそんな物持ってると思う?」
「いや、思わない。」
「じゃあ、雨田は普通の人間じゃ考え着かないような人だということになる。」
「雨田は信用していいよ。」
「んー。どんなところが?」
「…んー。そう聞かれたら悩んじゃうよ。」
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「それで、私が迷子になった時に助けに来てくれたよ。」
「へぇ。」
「まだ、雨田が信用できない?」
さっきまで雨田のことを言った見たけど井上さんにはどう映ったのかな。
「都留が雨田を信用してるのは分かったけど。私は雨田が嘘をつくことを知ってるから…」
「どういうこと?」
「雨田のは嘘をつきなれている。」
「?」
「雨田が嘘をつくときは人から嘘をついた時に出る癖が全くないんだ。だから、私は雨田をあまり信用したくない。」
「雨田がどんな嘘をついたの?」
「あれは、ひどい嘘だったよ。」
具体的にどんな内容だったのかを聞いた私の質問の返事は内容を答えていなかった。
ただ、雨田と井上さんは高校で出会ったはずで話す機会は限られているはずで雨田がどのような内容の嘘をついたのか私的には気になった。
「まぁ、今はどうでもいいことだけど…」
「許してるってこと?」
「怒ってないってことだよ。」
「同じじゃない?」
「謝られてないから…許してないだけ」
「…」
雨田が謝らないということがあるだろうか。
たぶん、私のしらない雨田ならあり得ると思う。
私のしらない雨田といえば、中学時代の雨田位…だったはず。
「私は雨田が他の人よりも嫌い。」
「…」
何も言えばくなった。
井上さんの言葉を否定したくても材料が足りなすぎる。
「もしも、雨田が謝れば許すの?」
「いや、多分あいつは謝らないと思うけど?」
「なんで?」
「それを言えば都留は絶対に余計なことをするんじゃない?」
「余計なこと?」
「雨田に謝らせようとすることだよ。」
「…そうかも。」
井上さんが言うとおりだった。
私は多分、井上さんにとっての余計な一言を言ってしまうと思った。
「私は謝ってほしいんじゃない。ただ…」
「…ん?」
井上さんが言った言葉の続きが聞こえなかった。
聞き返そうと聞いてもただの独り言だと言ってもう一度言ってくれなかった。
「…もう、遅いから私は寝ようと思うけど、都留は?」
「あ、私も寝るよ。」
本を閉じながら井上さんが言った。
時計を見るともうかなり遅い時間で明日も早いためそろそろ寝た方がいいと思った。
~雨田隆一~
眠れない。うるさすぎる。頭の悪い奴らと同じ部屋になったために出た被害だ。
大野と西田が寝た後にうるさくなっているので起こさない限りは被害は出てない。
何?あいつら。疲れ知らずなの?もう12時なのにまだはしゃいでる。
持参したおやつを掛けてトランプをしている。俺はその様子をバナナを掛けてはしゃいでいる猿にしか見えなかった。林間学校という瘴気に充てられて野生化してしまっている。
しかも壁が厚いし角部屋で隣の部屋は電気系統の故障で使用されてないせいで苦情も来ない。
一度怒鳴ったが聞きもしなかった。
気絶させた方がよろしいでしょうか。
いや、この解決方法は平和じゃない。そのため俺は別の解決策を探した。
「あ。」
思いついた。ドアを開けよう。
「…ん?」
トイレは部屋の外にあるしうるさい元凶が頭の回る奴なわけもなくすぐに先生が怒鳴り込んできた。
トイレに避難している俺は巻き込まれずに済んだ。
まぁ、その場に置き去りにした二人は寝ているため巻き込まれていないか心配だけど。
しばらくトイレに避難して部屋に戻るとタニヤがいた。
なぜだか生徒の間で広まっている谷川先生のあだ名だ。
「おい、雨田。」
「…ん。はい。」
俺は眠そうに返事をした。
「雨田はこの部屋の部屋長だったよな。」
「そうですけど。」
いやな予感がする。
よく見れば先生の後ろには部屋の奴らが涙目でいて俺を睨んでいた。
「こいつらがうるさいのをお前は注意したのか?こいつらは注意なんてされてないって言ってるぞ。」
「…ッチ。」
俺は道連れにされたことに気付いて舌打ちをした。
「なんだ舌打ちか?」
「そのあほどもが勝手に嘘ついて俺を悪者にしてるだけですよ。」
「雨田は注意したのか?」
「注意しましたよ。一度だけ。」
「一度では足りないだろ。」
「一度で十分ですよ。俺の注意を聞く気のないこいつらの様子を見ればね。」
「まぁ、そうかもな。」
ため息をつきながらタニヤが言った。
俺はタニヤがこの部屋を注意しに来た時に見た様子を想像した。
予想以上に猿化した男子どもだったことだろう。
では今はタニヤの躾によって猿達はおとなしくなっているということだろうか。
「じゃあ、もう一つ質問だけど。」
「はい。」
「扉を開けっ放しにしたのは故意か?」
「いいや、全然。こいつらのせいで眠くても眠れずにいたときに尿意を感じてトイレに行くときに閉め忘れました。」
「…まぁ、そういうことにしておく。」
「先生。」
「ん?」
「またこいつらがうるさくならないように扉は開けっ放しにしてもよろしいでしょうか。」
「…まぁ、俺がいなくなればうるさくなるかもしれないしな。いいぞ。それで。」
やっとちゃんと寝れそうだ。
少ししてタニヤが帰っていき、俺もこの男子たちも寝ることにした。
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