33.仲直り(下)
(SSiNN)「仲直りでいい話を作るのって考えたら難しいので勘弁してください」
~雨田隆一~
「えーと。なんであいつら黙ってんだ?」
「ひどくない?」
「そうかな。」
「…そうだと思うよ。」
俺があげたポンチョを着ながら飛菜子にそういわれた。
「私は、なんとなくだけど雨田がこういう状況に慣れてることが怖い。」
「え?」
「私が知らない雨田を気分。会ってまだ数週間だけど。」
「そうかもな。」
そういえば、今は中学時代の遺物を使ったりしているため怖いのかもしれない。
あぁ、あの時代はこんなものが必要になるほど危険な時代だったのか。
俺は少しだけ気配を消しながら西田たちを見ていたため
「あ、西田君が話し始めたよ。」
「ほんとだ。」
「…ごめん」
最初は西田が沈黙を破って謝罪の言葉を言った。
それを見ても瀬川は何も言わなかった。
「あの時は怒りに任せていろんなことを言った。」
「…。」
「俺はあれから何度も謝ろうとしたができずにいた。それはお前に『ごめん』っていう言葉しか言えないからだ。」
「…?」
「お前みたいに賢い人間ならもっといい言葉があっただろうが俺にはその頭がない。」
「…」
まるで自分を卑下するように西田が言った。
まぁ、ある程度は予想通り。
これで瀬川が許すもしくはあいつも謝るという展開になればあいつの思惑通りの仲直りが出来てしまうだろう。
「これで許してくれとは一切言わない。お前が絶交とか言うなら俺は受け入れる。絶対にかかわらないと誓う。」
「え?」
自分の思っていた状況との差が予想以上に大きかったのか瀬川が少し動揺してる。
俺もはっきりと西田の口から絶交という言葉が出て来たのが意外だった。
俺は具体的に西田が何を言ったのかは分からないがそれほどひどい内容の暴言を吐いたのだろうか?
「…私は…」
「私は?」
「西田が好きだった。」
「は?今なんて?」
なぜか瀬川が西田に対して告白と取れる言葉を放った。
しかし、肝心の西田はそれを聞き逃しているのか聞き直した。
「…もう何もいわない。」
「聞かせろよ。」
「…」
瀬川がそういった後すぐに西田とは真逆の方向に歩いて行った。
しかも、俺たちがいる方向で本来俺たち部外者が立ち入ることを嫌がっていたためすぐに隠れなければならない。
そもそも仲直りは?この出来事で俺の仕事は終わったのか?
いろいろと確認することはあったがひとまず目先の安全を確保するために飛菜子の手を引いて隠れることにした。単に手を引いたのは飛菜子を見失わないため。ある程度この場から離れることができればいい。
「ちょ…」
「今は目先の安全が第一だ。あいつが怒れば処理が面倒だからな。」
ポンチョについているフードを目深にかぶらせていたのと下を向いているせいで顔が全く見えないけど飛菜子の体温が高くなっているのを感じた。
先ほどまで隠れていたせいで俺の体温が低いのか飛菜子に熱があるのか後で確かめる必要があるな。
そう思いながら俺たちはひとまず逃げた。
足場が悪いということはないが足音が立つのが嫌だったため飛菜子を抱えて移動することにした。
意外と盗み聞きをするのは難しい。
適切な距離感を保てないとすぐにばれる。面白半分でここに来るのではなかったと後悔した。
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「本当は私も悪かったんだよ。」
「え?」
「私は西田と…じゃなくて単に勉強を教えれるくらいの余裕はあったつもり。」
「そうだろうな。」
「…」
先ほどからの言葉を聞いて俺は不器用だと思っている。自分が本当に伝えたい言葉を伝えることができずにただ、間違えないように遠回りをしているようにしか見えない。
「(なんで好意を寄せられてる人間はその好意に気付くことができないのだろうなぁ)」
俺は頼まれたのが仲直りでよかったと心から思った。あのような問題児を相手にしたくないのだ。
「最初、西田は勉強に苦労してた…よね?…私は全然余裕だったけど…暇だった。」
「…」
「あの頃の私はその時からの私は西田に勉強を教えて…たくなった。」
「はい?」
「私の頭の中ではお花畑みたいに甘い考えで西田の前では余裕でいると勝手に勉強を教えてほしいと頼んでくれると思ってた。もちろん家ではちゃんと勉強してたよ。」
「おいおい。」
西田が驚いたような声が出て少しの間があった。
それはそうだろう。西田は瀬川が授業外で勉強をしていないと思っていた。思っていたから喧嘩になったのだ。
しかし…
「でも、西田は私に協力を求めることなく自力で私に追いついてきた。私が教えなくてもあんまり関係ないくらいに。」
「…じゃあ、お前が高校に入学してからも同じようにしていたのは理由があったのか?というかどうして俺だったんだ?」
「それは…」
「別に言いたくないなら聞かない。」
「いや、これは言わなければいけないからいう。最低でもこの誤解だけは解きたいから、…………………………もう一度さっきのことを言うからよく聞いて!!」
「はいはい。」
「私はあなたが好きだった。」
「(今は?)」
「あ、間違えた。…好きです。」
もうすぐ自由時間が終わる時間になろうとしている時に瀬川がそう言った。
「…」
「付き合ってとは言えない。」
「え?」
「私はどうせ面倒な女だし…西田に選ばれる訳なんてない。最後に伝えたい気持ちだけは伝えたかっただけだから…」
そう言った瀬川の目には涙が浮かんでいた。
俺は西田を諦めるとは一言も聞いていないため予想外の展開で理解が追いつかない。
「そうだな。お前は本当に面倒だった。」
「…少しは否定してもいいんじゃない?」
「今から思えば元カノと話してた時に怒ってたのはそういうことなんだな…」
「…」
「ちょっとは否定してもいいんじゃないか?図星にしか見えないぞ。」
「どうせ図星だよ。」
「そうだろうな。」
「…バカ」
「何とでも言え。俺はバカだからな。」
「バーカ。」
俺にはなんとなく結果が見えた
そしてある人が見えたので俺は最後を見送ることなくその場を後にすることにした。
神代先生が歩いて来ていたのだ。
「おい、ここで何してる。」
「「え?」」
「ここは生徒には立ち入りを許してないぞ?2人もそれを破るとは…」
もうあの二人をどうすることもできない。どうせあの何をしても二人は怒られるのだ。
迷彩柄のポンチョと少しだけ距離があったからか先生に見つからなかったので俺は二人を置いて飛菜子を連れて逃げ帰った。
「西田君達怒られちゃってる。」
「そりゃそうだろ。ルールを破ったんだからな。」
「私たちはばれなかったね。」
「そうだな。」
逃げている最中にそんな話をしているがもうじき集合時間に差し迫っている。
急がないと俺と飛菜子も先生に怒られる羽目になる。
「…雨田。速いよ。」
「あ、すまん。」
少々飛ばしすぎたのかもしれない。
手を引きながらの走りだったので痛かったのかもしれない。
「大丈夫か?」
「…うん。大丈夫。」
そう言った飛菜子は目を合わせてくれない。
怒らせた?
俺は怒っている飛菜子を見たことがない。会ってまだ数週間だからどうすればいいのかもわからない。実際に先ほどまで感じていた飛菜子の手は熱かった。
「そういうとこだよ。」
「はい?」
「なんでもない。」
そういって飛菜子が先に歩いて行くが方向を間違えている。
「どこ行くんだ?飛菜子。」
「どこって…」
「広場はあっちだ。」
「そうなんだ。」
そう言った飛菜子がすぐに俺の後ろに着いてきた。
ポンチョは俺が持っているためはぐれてもすぐに見つけることができるだろうから俺はすぐに広場に戻るために歩き出した。
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