32.仲直り(上)
~雨田隆一~
俺と飛菜子と井上は西田と瀬川も二人がいなくなったことを確認してすぐに探して現場を見てみることになった。
幸い今は自由時間でアスレチックで遊ぶことが許可されているため周りにほかの人間はいない。
大野も華麗も初めてのアスレチックで遊んでいる。
「あの二人どこにいるんだろうね。」
「本気で見る気か?」
「?」
「あの二人は犬猿の中って程ではないんだろうな。」
「え?」
「多分、あいつらのいつも通りを見て終わりだぞ。」
「どういこと?」
「喧嘩をするのが当たり前のような関係で今回だけはいつもより酷い状況の可能性だな。」
「えーと、私たちが期待するような展開にはならないってこと?」
「あぁ、おそらくそんなことは一切ないだろうな。」
ラブコメ的展開を期待してはいたがよく考えれば可能性の低いことに気が付いた。
西田が取扱説明書が必要だと言っていたのを思い出したが俺は別にそんなことはないと思ったぐらいだ。瀬川の性格は簡単に予測できる。
あれの場合は適当に人の居ない場所を選ぶだろうな。その情報から逆算して今人が集まっている真逆の方向が怪しい。
あの初恋だからって俺を巻き込んだあいつの考えは俺と少しだけ似ている部分があるのだ。
「雨田がなんか悪い顔してる。」
「いや、全然。ただのラブコメをカメラに収めようかと…」
「悪くない?」
「そうかもな。…あ、いたぞ。」
「ほんとだ。」
俺は傾斜の下の方にいる二人を見つけた。
そして、見つからないように周りを見ると本当に誰もいなかった。
「飛菜子、一応ここから動かないないって約束できるならこれを着てくれ。」
「?」
「ここの景色に合ってるはずだから遠目では見つかりにくいはずだ。」
「なんでこんなもの入れたのか分からなかったけど…こういうこと。」
俺が出したのは茶色の迷彩柄のポンチョだった。
これを着ておけばある程度は誤魔化せるはずで後ろから遠目で見てもばれにくいし、もしも背後から先生が来れば面倒なことになるための対策でもある。効果があるかは分からないけど。
ここは生徒には来ることが禁止されたエリアだったから注意しなければならない。
「これを上からかぶっておけばいいんだよね?」
「飛菜子がこれをきて一人でどこかに行けば俺は見つけることができないから動くなよ?」
「はーい。」
飛菜子がそれを着た状態で迷えば最悪総当たりで見つけなければならないため手間だ。
まぁ、この辺りは風下で近くに行かないと聞こえないなんてことがないためポンチョをきて隠れる必要がないかもしれないが念のために来ておくことにした。
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~西田春樹~
俺は瀬川林という女にひどいことを言った。
最初からこんなことをいうつもりはなかった。
ずっと心の中で押さえておくつもりのもので、いつか瀬川の成績を追い越すことができれば言うつもりだったのだ。
あいつは勉強していないと言いながら疲れた様子もなく簡単に中学で高い順位を取ってしまっていた。
ある時、俺が図書館で勉強をしているときにあいつは話しかけて来た。
『あれ、西田ってそんなに勉強をする人だっけ?』と。
俺はあの時何を答えたか覚えていないが平凡な答えだったのだろう。
そして、あいつが俺の何に興味を持ったのか分からないがあの後から段々と俺に話しかけてくるようになったし、いつの間にか俺の方からも話しかけるようになったことにも気が付いた。
元カノと話せば怒り、無視をすれば拗ねる?そんなこともあるよな奴でそんなときは本当に理解できなかった。
そんな瀬川は俺が勉強をしているときだけ偉そうにふるまってくる。
テストなど余裕で一位を取れるだったりいろいろと言われた。
本当にその通りなのかあいつが勉強をしている姿を見たことがない。
だが、俺は違った。どれだけ勉強してもあいつにだけはかなわなかった。
いつの間にか俺とあいつは学校の二位と一位の立場まで来てしまっていた。
それからも俺は何度も挑んだが結果は連敗で俺に勝ち目はなかった。限りなく100点に近いあいつの点数をどうやって抜けるのか分からなくなった。
そして高校受験という物にぶつかり俺は自分がいけるところである程度の余裕があるところに行くことにした。高校なんてある程度の成績と資格さえ取っておけば大丈夫だというのが家訓だからあまり学力には興味がない。ただ、一度でも瀬川に勝ちたいだけ…
ただ、なぜか瀬川が付いて来ているとは思わなかった。あいつなら俺よりももっと賢いところに行けるはずだからだ。おそらく日本で一番賢いと言われる高校にも入学することが出来たはずで今の高校のレベルはあいつにとって余裕で入れるほどだろうな。
案の定、ある時、俺は瀬川から社会の小テストで指定された範囲以外をすべて答えて満点を取ったことを言われた。正直ふざけていると思ったが俺のクラスにも一人同じことをしたやつがいたためきにすることなく過ごした。
そして、前の日曜に俺は瀬川にひどいことをいった。
俺が一方的に暴言を言いそしてその場を後にした。帰る前に見たあいつの顔は涙を浮かべていたように見えた。
俺が傷つけたのだ。
俺が謝らないといけないことは分かっている。
何も悪くないあいつがなぜ泣かなければいけないのだと何度も後悔した。
しかし、あの後何度も会って謝ろうとしたが言葉が出なかった。
何度も挑戦し失敗して林間学校までもつれてしまった。
正直あまりいい気はしない。
友達と喧嘩をしたまま楽しいはずのイベントを過ごすのは心苦しい。
俺は気晴らしに班のメンバーに賭けの勝負をした。そして、負けた…
勝った人間は負けた人間に命令できる権利を賭けていたため班の誰かが命令を聞かなければならない。
命令が下ったのは俺で命令は『喧嘩するほど仲が悪い奴に告白しろ。』だった。
最初聞いた時は驚いた。なぜなら喧嘩をした事実はそいつに言った覚えがなく、しかも瀬川という女子であったためだ。しかし、他の班の奴に聞いてみると告白する必要はなく瀬川と仲直りできればやらなくていいらしい。
雨田の命令は告白して自爆か仲直りするだけ。
どちらを選ぶかと聞かれれば俺は仲直りだろうな。
勝ち目のない勝負に乗るつもりなど毛頭ないのだ。
だから、俺は瀬川に『あって話がしたい。』とメールを送ると瀬川が会う場所を指定してきたた。場所は自由時間で行動を許可されているエリアを出て少し歩いた辺りで先生にばれたら怒られる問題だがばれなければ何も問題ないはずだ。
そのため、俺はおとなしくそれに従うことにした。
~瀬川林~
私は西田が好きだった。
西田が本気で勉強を始める以前から…
あの頃の西田には彼女がいた。
だから私から手が出せないでいた。しかし理由は分からなかったけど西田がとその彼女が別れた。そしてそのころから西田は勉強をし始めていた。
チャンスでしかない。だから近づいた。
勉強に苦戦している西田に近づくために余裕でいるふりまでした。西田に勉強を教えることで距離を縮めようとしたのだ。
実際にある程度は余裕であった。西田に勉強を教えるくらいどうということないぐらいだった。
しかし、西田に勉強を教えてくれと頼まれることがないまま時が過ぎていき中学校で私の次に賢い程まで努力してきてもう本当に教えることなんてないと思えるほどになった。
このころになると西田よりも高い点数を維持するのが少し難しくなった。
ほんの少しの偶然でも立場が変わってしまうような状態だった。
その後、なんの進展もなく私は西田に進学先に併せて同じ高校に入学した。
自分の将来なんてその時になって考えればいいためどうでもよかった。
だから、西田も驚いていた。
当然理由を聞いてきたけど告白まがいの理由なんていうことはできないため家が近いからと答えた。
その後もなんの進展もなかった。それもそうだ。今までで一度もクラスが同じになったことはない。ある程度予想どおりである程度予想外だった。淡い期待だった。西田と同じクラスになって付き合って…何を考えているのだろう。
そんなの私の軽率な行動でかなうはずのないものになったのだ。
今までずっと西田に見せていた余裕は妬みになって帰ってきた。
良かれと思ってやったことでも相手にはいいと思われないという言葉を実感した。
この気持ちに区切りをするつもりでいる。私たちはどこかで間違えた。だから諦める。
でも、最後ぐらいは誤解を解いて終わりたいと思ったから雨田という人に伝手を頼んで…いろいろとお願いした。無償で頼んだのが申し訳ないけど今はその余裕がない。
告白というものを入れたのは最後の期待で叶うわけのないこの気持ちであきらめきれないから。
でも、これで終わりにしよう。
そもそも、初めて話しかけたときから間違っていた。
私が普通に西田と接していればこんなことにならずに済んだのだ。
だから、この間違えた関係を終わらせるのだ。
その後はもう何も考えてない。
たとえ、どういう結果になっても私は受け入れるつもりでいる。
ポンチョ必要だったかな?
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