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勘違いの果て  作者: SSiNN
31/40

30.オリエンテーションの話

~都留飛菜子~


 私は先ほどの華麗ちゃんの寝言を華麗ちゃんに聞くに聞けずにいた。

 その状況のまま林間学校の時間は流れて行きオリエンテーションの時間になった。

 私たちの班は6人で他の班よりは少しだけ人数が多い。

 一人につきだされる課題が違っていて早く課題を終わらせた班はご褒美があるみたいだ。

 つまり、一番課題が多い私たちが実質不利だ。

 その代わり私たちが一番先に始めるようになっている。

「それにしても不利じゃない?」

「うん。」

「順番なんてあんまり関係なさそうだし。」

「それよりもご褒美って何なのかな。」

「もらった班のお楽しみとしか言われてないよな。」

「うん。」

「…なぁ、ゲームしないか。」

「ゲーム?」

「どうせご褒美はもらえないわけだしご褒美を楽しみにするために。」

「「「?」」」

 急に西田君がそんなことを言いだした。

「そう、ご褒美が何か当てた人が…何かを命令するっていう。」

 特に深い意味のなさそうに西田君が言った。

「王様ゲームみたいなもの?」

「ん?…あ~、そんなものだ。」


 私ー>記念品。

 雨田ー>木で作った記念品。

 大野君ー>夕飯が豪華になる権利。

 華麗ちゃんー>お菓子。

 西田君ー>おやつ。

 井上さんー>不参加。


「えー、井上は不参加かよ。」

「西田君、私は誰からかの命令が変なものだったらいや。」

「ごもっともだな。でも予想だけはしてもらうぞ。」

「…普通に考えてどこかの班だけ食材が違うとかになったら学校的に不公平だし…おやつは持ち込み可で…無難に記念品とか?」

「なんか普通に俺の票を否定された。」「俺も。」「私も。」

 三人が出した答えを変えようにも変更しないというルールがあったため変更できない。

 諦めた三人は自分が嫌な命令が来ないことを祈るしかなかった。

「雨田、なんで木で作った記念品なの?」

「ここの山、調べたらイベントとかでそういうものを渡してるって出てきたのを思い出したから…」

「…それじゃあもう、お前の勝ちだろ。」

 雨田の答えた訳を聞いた西田君がそういってしまった。

「お前が決めたルールでお前が『ずるい』という権利はないぞ、西田。」

「…」

「まぁ、まだ勝負が決まったわけじゃないから…急いでこの課題を終わらせよ?」

 ゲームの話になってみんなが止まっていたので私はみんなにそう言った。

「そうだな。」

「そうしましょ。」

「サンセー。」

 そうして私たちは課題を再開した。


「なぁ、もしかしてこれで終わり?」

「そうみたいだ。」

「結構な数があった気がするんだけど…」

「リューと西田と井上さんが問題をすぐに解決するからだよ。」

 実際、出された課題のほとんどをこの三人が解決していった。

 結果私たちは予想よりも早く課題が終わり一番乗りになってしまった。

「ご褒美ってなんだろ。」

「そこにいる先生に聞けば?」

「ミシロセンセー。ご褒美って何ですかー。」

「なんだその呼び方は。」

「…別にいいじゃないですか。」

「ミシロセンセイとはなんだ?」

「すみません。」

 ミシロセンセイとはなぜか生徒の間で広まった神代先生の愛称だった。

 それを華麗ちゃんが間違って呼んでしまった。

「去年の生徒もなぜどこからその呼び方を拾ってきたんだ…」

「去年の生徒?」

「気にするな。」

「華麗、多分この人が昔周りから呼ばれてた呼び方だろう。俺たちみたいな生徒が気軽に読んだら怒られそうだからやめておけ。」

「惜しいな雨田。この呼び方は分かれた恋人が呼んでいたものだぞ。」

「…すみません。もうその傷には触れないですから怒らないでください。」

 雨田が少しだけ怯えながらそう言った。

「別に怒ってはいないぞ。」

「それで…その…ご褒美って何ですか?」

 華麗ちゃんが神代先生に質問をやり直した。

「後で分かる。」

「後ですか。」

「後と言えば後だ。」

「分かりました。」

 先生と雨田はとこか仲がいい。

 男同士の仲なのだろうか。

 昨日も何か話している場面を目撃したけど何を話しているか分からなかった。


「雨田は勝負に勝ったら何を命令するの?」

 みんながそれぞれ休憩し始めた後、私は気になることを雨田に質問した。

「どうしたんだ飛菜子。」

「別に私はなんでもいいよ。」

「ん?何を言ってるんだ?」

「え?」

「勝負を仕掛けてきた西田に命令するだろ…普通。」

「…」

 二人でそんな風な会話をしているうちにどんどんと人が集まってきた。

 課題がすべて終了した人たちだ。

 少しして雨田から離れたところで座っていると雨田と知らない女子が何か話している風に見えてしまった。

「(背が低い女の子って…あの子どこかで見たことあるような気がする)」

 私は何を話ているのか気になり近づいてみることにした。

「…それ本当?」

「あぁ。使い方は今決めろ。あとで相談できる時間はあるとは思えないからな。」

「メールは?」

「携帯ばかり見てたら怒られるだけだぞ。」

「…えーとじゃあ。」

 雨田と二人で話している女の子はいまだに分からない。

 でも、今あってすぐの人たちの会話には聞こえなかった。

「(もう少しだけ様子を見てみよう。)」


「なぁ、今思いついたんだけど。」

「どうした?」

「『喧嘩をするほど仲が悪いやつに告白しろ』って西田に言えばどうなると思う。」

「え?」

「そんなに驚くこと?」

「だってそれを命令すればあいつがお前に告白するってことじゃないのか?お前はそれでいいのか?」

「別にあいつが私を好きで告白してくるならそれでいい。でも好きでもないのに告白してくるのはなんか違う。」

「そうだよな。」

「でも、告白をしない方法はある。」

「?」

「もしも、あいつが告白したくないなら私と仲直りすればいい。」

「…?…あ~そういうことか。」

「分かった。」

「仲の悪い状態を解消して告白する相手の条件を満たさなければいいのか。」

「そういうこと。」

「今考えたのか?」

「喧嘩した日からずっと考えてた。」

「へぇー。」

「じゃあ、俺が勝ったらそれを命令することにする。周りには後から俺が言う。」

「お願いね。私の頑張りが無駄にならないように。」

「まぁ、頑張るってみる。結果は後で伝える。」

「いい返事を楽しみにしてるよ。」

 そういって二人は分かれた。

 話を断片的にしか聞いていないため結局何を話しているのかが全く分からなかった。

 しかし、女の子が誰かと仲直りしようとしているのかなとは思った。

「リュー、どこ行ってたの?」

 雨田と女の子の距離が離れてしばらくして華麗ちゃんが雨田の後ろから話しかけた。

「ちょっと散歩。」

「さっき子のだーれ?」

「…見てたのか。」

「見えちゃった。」

 多分、私と同じ理由で見ていたのかもしれない。

 盗み聞きをしている私には罪悪感があるのに華麗ちゃんは悪びれもせずにそういった。

「まぁ怒らないけど。」

「それで?」

 なぜだろうか華麗ちゃんが少しだけ怒っているように見えてしまった。

「あれは西田の友達の中学の女子らしい。」

「西田君の…」

「この間喧嘩したんだと、それであいつが仲介してくれって命令してきたからな。」

「それで手伝ってるんだ。」

「そうだ。結構面倒だけど。」

「…」

「(そうだったんだ。)」

 雨田と華麗ちゃんの二人が話しているのを隠れてみていると安心してしまった。

 盗み聞きは質が悪いとは思うけど…

「何してるの?」

「!!」

「何驚いてるの都留。」

「びっくりしただけだよ。いきなり後ろに来てるから。」

「そう?」

「足音聞こえなかったよ。」

 雨田たちを見ることに気が行っていたのか全く井上さんの足音が聞こえなかった。

「もう少ししたら集合がかかりそうだよ。」

「あ、ありがとう。」


 しばらくして課題を終えた班がすべて戻ってきた。

 先生が少しだけ話した後に各自弁当を受け取ってテーブルの向かうように指示を出されたけど私たちの班だけは呼び出された。

「雨田班の6人。君たちは他の班よりも早く課題を終わらせた。」

 私たちを呼び出してすぐに先生からそういわれた、

「約束してたようにご褒美を上げよう。」

「…」

 そういった先生から渡されたのは木で作った記念品だった。

 結果、西田君の出した勝負は雨田の一人勝ちになった。

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