29.行きのバスの話
多分最近は飛菜子の視点になりそうです。ご了承くださいませ。
~都留飛菜子~
私たちは林間学校のためのバスに乗っている。
朝早い時間から集合していたためバスに乗っているほとんどの人が乗ってすぐに眠りだした。
そのせいで私の周りの人たちは井上さん以外誰一人として起きている人がいなくなった。
雨田も大野君も華麗ちゃんも寝てしまっている。
「あなたは眠らないの?」
「うん。」
「周りと違って楽しみだからって眠れなかったわけじゃないのね。」
「…確かにそうかもね。」
私は中学の最後当たりの学校行事を楽しむことがなかったから久しぶりの楽しみの行事で眠れないと思った。しかし、なぜかは分からなけど私は周りと比べてもあまり眠くない。
「あなたが今読んでいる小説私気になるんだけど。」
「ごめん、私もまだ読んでないから。」
「そうなの。」
「それにこれ借り物だからね。」
「誰に借りたの?」
「そこに寝てる雨田だよ。」
「へー。」
「雨田がいうには結構人気みたいだよ。」
「そうなんだ。」
「私も店に行ったときには売り切れてたよ。」
「そうなの?」
「まぁ、頑張って探すしかないかな。」
「また今度そこの雨田から借りることにする。」
「そうするといいよ。」
私は揺れるバスの中で井上さんにそういった。
雨田と井上さんは席で言うと前後だからすぐに話せる距離にある。
今まで交流はなかったけど雨田なら大丈夫だろう。
少しだけもやもやする気持ちもあるにはあるが気にならない。
「今都留はそれとは別の小説は持ってないの?」
「ごめん…私は持ってない。」
「私は?」
「雨田の荷物の中に大量にあるはずだよ。」
「なんでそれを知ってるの?」
「昨日荷造り手伝ったから。」
「…都留と雨田の関係って何なの?」
「何とは?」
「友達?恋人?想い人?」
「…友達だよ。」
「へー。」
「何なの?」
「なんでも。」
絶対に何かがありそうな顔をして井上さんがそういった。
「じゃあ、その雨田の荷物はどこにあるの?」
「今雨田が寝てる足元にある鞄の中に全体の半分ほど…」
「何冊持ってきたの?」
「えーと、十冊くらい?」
「校外学習なのに小説持ってきて読む気満々じゃない。」
「まぁ、全部雨田が読み終わった本みたいだし読むのが早いしでそれだけ持っていくらしいよ。」
まぁ、持ってきた理由のほとんどが行きのバスで読むための本だったはずなのに雨田が寝ているせいで当初の目的を果たしてない。
「勝手に取って来てもいいの?」
「昨日、勝手に取ってもいいって言ってたし何なら誰かに貸してもとも言ってたから。」
「そうなんだ。」
「私取ってくるよ。」
「え?」
「いきなり井上さんが取ってたら盗んでるみたいに見えるから。」
「そうね。」
「雨田がおすすめしてたものでいいよね。」
「うん。」
私は返事を待たずに雨田の元まで歩き、そして鞄の中から昨日に薦められた本を取り出してまた鞄を元通りの場所に戻した。
「これでいいかな。」
「ありがとう。」
「いいよ別に。」
「また今度返しておくよ。私から。」
「その前に借りたことを言わないとね。」
「確かに。」
それからのバスは無言の空間になった。
井上さんが本を読みだしてからは誰も何も言わずただ走行音だけだ響き時々先生が後ろを確認する音と誰かの寝言が少しだけの空間のままバスは森の中に着いた。
「リュー。」
私の隣で寝ている華麗ちゃんが寝言でそう呟いている。
「す…き…だ…よ…」
「(はい?!!)」
突然華麗ちゃんの寝言がとても私をよくわからない気持ちにさせてしまった。
「(えーと、華麗ちゃんは大野君が好きなんだよね?昔の夢を見ているならあり得なくはないけど。え?もしかして私何か見落としてる?ねぇ何なの?)」
結局バスでの最後の時間はとてつもない疑問の時間になってしまった。
「お~い。楽しみ過ぎて眠れなかったのは分かるがそろそろおきろよ~。」
バスが停車する数分前に谷川先生がそういってみんなを起こし始めた。




