26.家
定期考査のせいで更新が遅れてしまってすみませんでした。
書くのが久しぶりで設定などがおかしいことになっていたら教えてください。
~都留飛菜子~
昔、ある時に私はクラスメイトからの嫌がらせにあった。理由は分からない。なぜ、私にそんなひどいことをするのかを。
最初は軽くて特につらいと思うこともなかった。
しかし、だんだんと日が経つにつれて嫌がらせが少しずつ少しずつ激しくなっていった。
私はだんだんとクラスの居場所がなくなっていった。
最初は本を読んでいただけなのに…
先生に相談しても何もしてくれなかった。ただ話を聞いてなんの処置もしなかった。
理由を聞いても何も言われずにただ、『自分の胸に手を当てて考えろ』とだけ言われた。
それからも嫌がらせは続き、私は学校に行くことが嫌になってしまった。
中三の初夏のあたりで私は不登校になった。
それでもテストだけは受けていて成績は良かった。
しかし、授業を聞いていない私が高得点を取っている私を先生はちゃんと評価した。悪い方向に。
それもそうだ。私は学校に行かず、授業を聞いていないのだから。
中学の卒業に迫ってきた私は高校に行く気がなかった。
また高校でも同じことをされてはいやだったからだ。
しかし、社会では中卒の人をあまり欲しがらない。
そんなことは中学で言われていたことだった。
私は悩んだ。
学校は行かなければ将来何かしら不利になる。しかし行けば同じような嫌がらせに合う。
そんなときに父から
『仕事の都合でこの家から引っ越さなければいけなくなったんだ。…そこで、飛菜子は県外の学校に行くこともできるけど…どうする?県外ならまだ今と同じようなことにはならなくて済むんじゃないかな?』と言われた。
そして、今の学校の人との縁を切れば今のような環境にならずに済む。
だから、今日こうして雨田と歩けている。
だから、今楽しく高校に通えている。
そんな夢を見ていた。
久しぶりに思い出した同級生の顔はトラウマになっていた。
「…はぁ…」
今になってなぜこんな夢を見たのかは分からなかった。
雨田たちと出会ってからあまり見なくなったのに。…なんで?
ピコン。
頭の中にある暗い感情を整理していると携帯からメールの着信音がなった。
{雨田}{小説が読み終わったから、いつでも貸せるけどどうする?}
行こう。雨田の家に。隣だけど。
今はすぐにでも雨田の顔が見たい気分だった。
~雨田隆一~
昨日から眠れずにずっと小説を読んだいたせいで楽しみだった小説を読み終えてしまった。
次に読む本もあったためすぐに飛菜子に貸せる状況だったためにメールを送った。
送ってすぐに飛菜子からの返信があった。
{飛菜子}{今行っていいの?}
{雨田}{いいぞ。}
{飛菜子}{じゃあ、すぐに行きます。}
そうメールが送られてから数分後に飛菜子は俺の家に来た。
「おはよう。」
「おはよう。飛菜子。」
「ほんとにいいの?」
「あぁ、いいぞ。」
「…雨田の目の下のクマ、いつもよりひどいけどどうしたの?」
「徹夜で読んでた。」
「…ごめん。急がせちゃって。」
「別に、急いだわけじゃないぞ。ただ単に読み終わってしまっただけだよ。」
「そうなの?」
「そうだぞ。」
「…」
なぜだかさっきから、飛菜子の顔が暗い。いやなことでもあったのかと思うくらいに。
こういう時に俺はどう声をかけていいか分からない。
「家に入るか?」
「うん。」
俺がそういうと飛菜子が家の中に入った。
「飛菜子。」
「何?」
「何かあったのか?」
「なんでそう思ったの?」
「飛菜子の顔が暗いと思ったから…」
「…そんなに出てたかな。」
そういった飛菜子の様子から多分俺の予想は当たっている。
でも、その話は聞きだした方がいいわけがない。
無理に聞いても意味がない。
「今日の朝に昔通ってた中学の夢を見たんだ。」
「…中学?」
「そう。昔、私が嫌がらせを受けて不登校になった学校。」
「…」
「それで私、今でもそのことがトラウマになってるみたい。」
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないからここにいるんだよ。」
「…?」
「なんか雨田の顔が見たくなったから来たんだよ。」
「本借りに来たんじゃないんだな。」
「…それもある。」
「じゃあ…はい、これ。」
「…ありがとう。」
俺は最初の目的であった小説を飛菜子に貸した。
~都留飛菜子~
私は雨田の家に来てからしばらく本を読んで過ごしていた。
雨田もこの間に私が貸した本を読んでいる。
お互いが何も話さない無言の空間でも、特に私は寂しいとは思わなかった。
「なぁ」
「何?」
「もうすぐ昼なんだけど…ご飯どうする?」
「そうだね。雨田は何食べるの?」
「家にはインスタントあるからな。」
「いつも飽きないの?」
「飽きる」
「よかったら私作ろうか?」
「いいのか…家の人は?」
「今は買い物に行ってるし昼は食べてくるよ」
「…」
「雨田の冷蔵庫に何かあればだけど。」
「料理できるほどないぞ。」
「やっぱり。」
「すまんな。」
「まぁ、うちにあるものを持ってきたらいいわけだし。」
「?」
「私、家に一人だからさ。料理作っても面白くないんだよ。」
「…いいのか?」
「うん。」
「…」
「どうしたの?」
「飛菜子には作ってもらってばっかりだなって思っただけ。」
「確かにそうだけど。私が作りたいだけだよ?」
何度目だろうか。この話をするのは。
雨田が感謝してくれてるのはありがたいけど、お礼が欲しくてやっているわけだはないのでこの話はやめてほしい。
どうせならいきなり何かのお礼とかの方がうれしい。
というか何もなくても一緒にいてくれるだけで私は嬉しい。
「で、どうする?」
「え?何?」
「昼。」
「あ、そうだね。」
「なんだと思ったんだ?」
「別に何も。」
本当は欲しいものの話だと思ったことは言えない。
「どうする?」
「私が作るよ。ちょっと材料取ってくるけど何がいい?」
「(なんでもいいとか言ったら怒りそうだな。)…」
「なんでもいいよ?」
「じゃあ、飛菜子のおすすめでお願いします。」
悩むことを放棄した雨田が店の常連のような人の言い方をしてきた。
「(家に何かいいものあったかな。)」
~雨田隆一~
昨日感じた違和感は何だったのか、考えることを放棄するために小説を読んでいたせいで今ものすごい眠気に襲われていた。
今、飛菜子が昼ご飯を作ってくれているのに俺だけ寝るのは失礼な気がする。
そういう理由で寝たくないという気分だった。
俺はソファーに座りながらテレビを見ながら飛菜子を待っている。
『雨田は座ってて。』
そう飛菜子に言われてしまったのですることがない。
俺は適当にテレビの昼ドラを見ている途中で意識を失ってしまった。
~都留飛菜子~
私が再び雨田の家に来てから料理を作っている時に雨田の方を見てみると船をこいで眠っていた。
徹夜で本を読んでたらしいしこのまま料理ができるまでおいておくことにした。その方がいい気がしたから。
私が今作っているのはそんなに時間もかからないものだし出来たときに起こせばいい。
それにしてもよく眠れなかったのかと心配になりそうなほどよく寝ている。
眠っている雨田を放っておいて料理を作っているとすぐに出来上がった。
「雨田。」
「…」
「ご飯できたよ?」
「…華麗。」
雨田が寝言でそういった。
「私は飛菜子だよ?」
「飛菜子?」
雨田が目を覚ました。
「おはよ。」
「おはよう。」
「すまん。寝てた。」
「別にいいけど何の夢見てたの?」
「…覚えてない。」
興味本位で聞いてみても雨田は何も覚えていないようだった。
寝言で雨田が華麗ちゃんの名前が出ていたからおそらく昔の夢でも見ていたのかもしれない。華麗ちゃんに告白される夢でも見ていたのかもしれない。
「もう出来たのか?」
「うん。」
「ありがとな。」
「…うん。」
「じゃあ、私そろそろ帰るね。」
「そうだな。」
私が雨田の家にいる間に時間が遅くなり夕日が見える時間になっていた。
「飛菜子。」
私が家の玄関から出るときに雨田が声を掛けてきた。
「何?」
「何かあったらメールなしで来てもいいからな。」
「なんでそういうことを言うの?」
「朝、飛菜子がいつもよりも暗い顔をしてたから言っただけなんだけど…間違ってたか?」
「…」
そういえば、今日の夢に出てきた中学のことで私は気分が沈んでいたんだった。
「理由は言わなくていい…まぁ、隣だからあんまり意味がないかもしれないけどな。」
「ありがとう。…じゃあね。また月曜日。」
「あぁ。」
そういって私は雨田と別れて家に帰った。