25.倉庫裏
~雨田隆一~
夢でも見ているのだろうか?ずっと好きだった女の子から呼び出しを受けて待ち合わせの場所に行くと、大野ではなく俺のことを好きだと言ってきた。
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「…もうそろそろチャイムが鳴るな。…じゃあ、キリがいいからここで終わるからな。うるさくするなよ。」
先生がそう言って教室を出て行った。
先生がいなくなるとみなそれぞれ机をかたずけて食堂に行こうとしていた。
「雨田。」
「どうした?飛菜子。」
「昼どうするの?」
「後で購買で何か買って食べとく。」
「…じゃあ、私先に食べとくね。」
そういって飛菜子が大野と合流して教室から消えた。
飛菜子と別れた俺は、昨日にメールで華麗から呼び出しがあった体育館倉庫裏に行くことにした。
4限目の授業が終わると華麗は早足でどこかに行った。先にいるのかもしれない。
理由は今のところ不明。朝からすぐにどこかに消えていたため理由を聞くことができなかった。
昼飯を食べずに歩いき、目的地に着くと俺の予想通り華麗が先に待っていた。
「ねぇ、リュー」
「なんだ?華麗。」
「私さ、今日言いたいことがあるんだよね。」
「なんだ?」
「…ずっとさ…入学式に行ったこと覚えてる?」
「…あぁ、細かくは覚えていないけど確か、『大野が好き』だったっけ?」
「はぁ」
「どうした?ため息なんかついて…珍しいな。」
「なんでかな。」
「?」
「なんであの時ちゃんと言わなかったのかな。」
「何言ってるんだ?」
「なんで、あの時私は誤魔化したんだろう。」
「?」
「言いたいことをちゃんと言えなかった。」
「何か言いたいことがあるのか?」
「そうだよ。だからリューをここに呼び出したんだよ。」
「なんだ?」
「わ、私。」
「慌てるなよ、舌噛むぞ。」
「私が好きなのは大野じゃなくてry、…リューだよ!!」
俺はいきなりの華麗の発言に最初は何を言っているか理解できなかった。
今から二週間も前になんと言われたか忘れたが大野のことが好きだから手伝ってほしいと言われたと思っていたが俺の勘違いで実は俺のことが…
ついこの間華麗に対して諦めることを決心してちゃんと実行してほとんど完璧にできたはずだった。
「(返事は…?どうすればいい?)」
今、華麗に対しての気持ちを聞かれても中途半端なもになっていてちゃんと答えることができない。そして、なぜか少しだけ華麗は違うという気持ちもある。
俺が少しだけ頭の中で混乱し、考えている間華麗はずっと無言だった。返事を今すぐに返さなければいけないと思ったときにはかなり時間がたっていたと思う。
「華麗。」
「…」
「すまないけど…今すぐ返事ができない。」
「…どうして?」
「この間まで華麗は大野のことが好きだと思ってた。でもそれは勘違いだった。」
「うん。」
「入学式から今まで俺は華麗のことをあきらめようとしてた。」
「うん?」
「中学のころから好きだったけど…今の気持ちはよくわからない。」
「…」
「よくわからなからこういうことの返事は今すぐできない。」
「…」
「…ごめんな。」
「…リューが謝ることじゃないよ。」
そういった華麗の顔を見ると悲しそうな顔をしていた。
「私があの日にちゃんと言えなかったからリューが勘違いしちゃったんだよ。だから私が…」
「それなら俺も悪い。…ちゃんと考えればわかるものかもしれなかったし。」
「…そうかも。」
そもそも、こういう話で悪いやつを決めようとすれば終わることがない。
じゃあ、どうする。
「…リュー。」
「ん?」
「…今日、ここで私が告白することはなかったことにして。」
突然、華麗の口からその言葉が出てきた。
あまりに理解ができないような内容で俺は意味が分からなかった。
「今日、ここでリューの誤解がなくなった。でも、リューは中途半端な気持ちで返事をできない。…じゃあ、今日この告白をなかったことにしていつも通りに過ごしていつかまた、ちゃんとしたところで告白する。…いい?」
華麗から今考えたとは思えないような言葉が出てきた。
しかし、筋が通ってる?
「もちろん、リューから告白してもいいよ。」
「…」
「私はリューの初恋の女の子みたいにかわいくはないかもしれないけど…でも、リューを好きっていう気持ちは負けてない。負けない。誰にも。」
「それで行こう。…ちゃんと気持ちを整理してちゃんと言うから。」
「うん。」
目に少しだけ涙を浮かべた華麗が笑って言った。
「…そろそろ戻らないと授業に間に合わないな。」
「そうだね。じゃあ、行こうか。…今から走って先に購買に着いたほうがおごりね。」
そう言った華麗が先に走り出した。
「ちょっと待て…俺と華麗じゃあ速さが違いすぎるだろ。」
聞こえてないことを分かっていても言った。
俺よりも華麗の方が体力があって足が速い。
しばらくして俺は華麗に昼飯?をおごらされてしまった。