2.料理
4月8日火曜日朱雀高校登校二日目、深夜まで飛菜子から借りた本を読んでいたら夢中になって徹夜してしまった。かなり眠い。朝から一時間もの時間を登校に時間がかかるため早めに家を出なければならず7:30に家を出た結果、担任からの重要事項の説明時に睡魔と戦う羽目になってしまった。結局大事な話は聞き流してしまい記憶にない大野あたりに聞いてみるか。
「お前大丈夫か?『説明中に寝る度胸はすごいが説明はちゃんと聞けよ』って起こされてたのにすぐにまた寝たから先生引いてたぞ」
「寝てしまったか。悪いが何を話してた」
「その前にそのクマは何だ?」
「5巻まである小説を読んでたら寝るのが遅くなった」
「何時に寝たんだ?」
「3巻を読み終えたときに寝ただけしか分からん、ていうか担任が何を言ったのか教えてくよ」
「まぁ、教えてもいいけど時間には気をつけろよ」
「…気を付けるわ」
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「大して必要そうな話ではないじゃん」
「それどころか同じ話を何回もしてた」
「寝てもよかったような」
「確かにそうだけど」
「次からは起きれるように頑張るわ」
「そうしろよ、あと2時間ぐらいで家に帰れるけどどこか行くか?」
「今日はちょっと用事があるからまた今度な」
「なんかあるのか?」
「ちょっとした用事だな」
「別にいいけど、本の読みすぎで倒れるなよ。華麗が心配してたぞ」
「心配するなって、それくらいは注意してるから」
「リュー、昨日は大丈夫だった?」
「あぁ、少し寝たらよくなったよ。」
「よかった。それでーそのー、昨日のことなんだけど。」
「途中で帰ってごめんな、今日は用事ができたから今日はいけない」
「…そっか」
キーンコーンカーンコーン…
「チャイムが鳴ったな、じゃまた後で」
「…」
しばらく入学後に必要そうな話を聞いていたら気づいたら学校が終わり、俺と大野と華麗は学校で別れて帰った。俺が華麗の相談に乗らなければ華麗が大野に告白するのは少し先に延びるんじゃないだろうか。少し歩いたところで携帯に電話がかかってきた。
「えーと、飛菜子か?また迷ったのか?」
『…はい、すみません』
「とりあえず、今どこにいる?」
『学校を右に出たところです』
「帰り道は学校を出て左だぞ?」
『うっかりしてまして、気づいたら迷ってました。』
「じゃあ、そこから動くなよ。今そこに行くから」
『お待ちしてます。』
これは方向音痴のレベルで済んでいるのか?周りに華麗がいたら変なことを言われそうだな。こっちが揶揄われることには慣れているが、こっちもやり返すことができそうにない時にやられたくない、まぁ合わなければいい話だな。
しばらく道を逆向きに歩いて8分ぐらいで高校の校門についた、飛菜子が通ったであろう道を見てみると歩いてすぐにT字路に突き当たる。どっちに行ったんだ?右か左か、昨日の歩く速さは俺より少し遅いぐらい、なら俺が歩いて7分ぐらいのところにいそうだな。左は…わからないまっすぐ歩いたとは言っていないから逆算できない。仕方なく飛菜子に電話をかけることにした、
「飛菜子、今どこだ?」
『それはこっちが聞きたいです。』
「地図アプリを開いたら分からないか?」
『地図を見てわかるなら苦労はしません。』
「じゃあ、アプリを開いてスクショしてメールに送ってくれ。そうしたら居場所がわかる(あれ?なんで飛菜子は家と反対方向の道を選んだんだ?それくらいは分かるんじゃないか?そもそもうっかりしていたらどっちに曲がったなんてわからないんじゃないか?)」
『負かりました。その方がわかりやすかったですね。』
「あぁ、(まぁ、友達ができて一緒に帰ったとかだろうな)」
メールに添付された画像を見ていると案外近くの商店街にいるみたいだな。途中で道を間違えたことに気づいて修正しようとしたら逆に変に迷ったようだ。携帯に記してあった場所に向かっていると近くの喫茶店に華麗と大野が一緒にいるところを目撃してしまった。気づかれないようにしながら少し歩くと日陰で休んでいる飛菜子の姿を見つけて………何やってるんだ?しゃがんで何見てるんだ?
「にゃ~」
「にゃ?」
なんか1匹の猫がいる。一匹の猫しかいない、2回聞こえた鳴き声のどちらかは飛菜子のものだろうか?
なんか声をかけづらい。
「おーい、来たぞ」
「……あの、見ました?(猫)」
「え、何のこと?」
「ならいいです。」
「あ、猫が逃げた…」
「…」
「ところでなんでこんなところに?」
「さっきまでいた猫を追って来ました。」
「…気に上った猫が木から降りれなくなったみたいな感じだな。」
「そうですね。」
「なんで俺に対して敬語なんだ?」
「大した理由ではありませんよ、私は昔から友達というものをあまり作るのが苦手でして…せっかく仲良くしてくれる人を大切にしたいんですよ。」
「…俺からしたら敬語を使われたら逆に気を使われてる気がするし、なんか壁を作られているかがする。それじゃ仲良くしている気がしないぞ。」
「…はい」
「まぁ、ゆっくりでいいよ。無理しても仕方ないし。」
「ありがとう…ございます。」
まぁ中学で周りからバカにされたって言ってた記憶があるからなぁ、今無理しても無駄だろう。
「今学校はどうだ?仲良くなれそうなやつでも見つけたか?」
「…今は、雨田以外いません」
「ま、まぁがんばれよ…話が変わるが、これから帰るのか?それともどこかに寄る?」
「今日は食料品がないので、その買い物に付き合ってくれますか?」
「分かった。帰り道にはスーパーとかはないからちょっと遠いけど歩ける?」
「歩けるとは思いますが、ちょっときつい…」
「じゃあ、帰りはバスに乗って帰るか?」
「そ、そうしよう…」
なんか飛菜子、結構がんってるな。
「ここから歩いて10分ぐらいのところにスーパーがあるからそこでいい?」
「そこでお願いします。そのは今日卵が安いんです。」
「じゃあ、出発するか」
歩いて10分だからといってもその間会話をしないという選択肢はない。なんか無茶苦茶気まずい、なんか話せる話題ってあったっけ?………思いつかない。
「昨日貸した本はもう読みましたか?」
「3冊ぐらい読んだよ、1巻から設定が簡単で分かりやすいのに読みやすいし話は面白かった。気づいたら3冊読んでたよ。」
「それでそのクマが出来たの?」
「正解」
「ちゃんと寝ないと健康に悪いよ」
「気を付けます…」
「毎日本の読みすぎでクマが出来ていたら本は貸さないよ」
「ごめん、」
「分かればよろしい」(エッヘン)
なんか変な効果音が聞こえた気がする…
昔ほんの読みすぎでバカにされて人と仲良くするのが難しいって言っていたのに案外すんなりとなれるのがはやそうだ。
昨日失恋したけど飛菜子と話しているだけでかなり気が楽だな。相談に乗ると言っておきながらこっちが避け続けるのは気が引けるなぁ。まぁ、大野と華麗はうまくいっているみたいだし。それじゃ俺は必要ではないな。次あったら相談のことは断っておこう。『恋愛相談は俺には荷が重い』って言ったらいけるかな。そんなことを考えていたらスーパーの目の前に着いた。
スーパーに着くと普通に買い物の手伝い(荷物持ち)をしていた。というか飛菜子、お菓子買いすぎじゃないのか?特に甘いもの…そういえば自己紹介のときに言ってたな『甘いものが好き』って、ほんとだったんだ。板チョコ3枚 チョコクッキー2袋 バタークッキー1箱 飴4袋 板チョコ2枚 クッキー4袋……
「まだ買うの?」
「え?」
「いくら何でも、お菓子買いすぎじゃない?」
「そうですか?できるだけ賞味期限の短いものから食べてるから1か月くらいは持ちますよ?」
「そうですか。」
「そろそろレジに行ってきますね。カートを渡してください。」
「分かったよ、じゃあそこらで待ってるから」
「じゃ、並んでくる」
『あとは少し待っておくだけ』そう思ってレジの向こう側に行こうとしたときに不意に見られているような気がして、周囲を見渡すが気のせいか…
飛菜子を見ていると、会計が終わりこちらに来る様子だ。持ってきた荷物を受け取ってバス停に向かおう。
「持つよ。」
「あ、ありがとう」
「あと買うものはないのか?」
「ない」
「じゃあバス停に行こうか」
二人でスーパーを出てすぐそこにあるバス停に着いたタイミングでバスが到着し、それに乗った。
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丸山華麗は大野一と相談を終えて買い物にスーパーに寄ったところで雨田隆一を見つけて声をかけようとしたときに雨田が女の子と仲がよさそうに話しているようにしているのを目撃してしまった。
「(リュー?なんで?…確か同じクラスになった…都留さん?高校始まって2日なのにもう仲良くなったの?どういう関係?…用事ってこれ?)」
焦った華麗は大野に電話して意見を聞いてみることにした。
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「………なんでそうなった…」
昨日雨田が体調が悪いと言って告白の機会を逃したといって連絡を取ってきたので、状況を聞いてみると雨田に与えるヒントが『華麗とよく一緒にいる人』と『出席番号が一桁』と言ったとのこと。
(与えたヒントをよく考えたら俺もはいるんだよなーそれを雨田は話の順番で勘違いして調子が悪いと言って逃げたと思ったら、次の日には用事があると逃げられた。仕方なく今日は延期にして明日にしようとしたら別の女と仲良くしているところを目撃したと。
状況から考えると失恋したと勘違いした雨田が都留という女の子と仲良くなり今の状況になったのか?
この過程が正しいなら今華麗に勝ち目はないんじゃ?)
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バスに揺られていると飛菜子がいきなり予想外のことを言ってきた。
「今日、昼食食べていきませんか?確か昼間はご両親が家にいなくて一人なんですよね。」
「…一人だし昼食はまだだしインスタントで済まそうとしてるけど、いいのか?」
「いいよ別に、家に誰もいないし自炊なんだけど一人だと寂しいっていうか作り甲斐がないというか、まぁインスタント昼食ならきてよ。」
「分かった」
「何か食べれないものはありますか?」
「ほとんどなんでも食べられるよ、シソとかゴウヤとかキムチとか好き嫌いが分かれるものは苦手かな」
「じゃあオムライスでもいいですね。」
「はい」
そうして会話しているうちに家の近くのバス停についたのでバスを降りて二人で歩いて帰る。思い荷物は俺が持って軽いお菓子だらけの袋を持たせていたらこっちが無茶苦茶重たい。
「やっぱりそっちを持とうか?」
「いや、大丈夫だ。家まであと少しだからな」
「そう、じゃあ任せようかな」
「ほら見えてきたぞ」
家の前まで来ると飛菜子がカギを開けて家の中に入り、キッチンまで案内してくれた。
「冷蔵庫に入れておくからそこらへんに座っといて」
「分かった」
かなり大きな冷蔵庫だな、テレビも大きいなぁ。
「もしかして、飛菜子の家ってお金持ち?」
「世間からしたらそうなんだと思うけど」
「だから昨日カードで支払ってたのか…」
「お金持ちだからと言って、カードを持っているとは限らないよ?」
「いや、昨日1万いくらかの支払いを躊躇なく支払ったのを見てそう思っただけだから」
「カードに上限はないよ?お使いの時も使うし、お小遣いはもらうけどカードで使った分は引かれてるよ、そろそろ作り始めるから待っててね。」
「分かった」
なんかエプロンを付けた飛菜子を見たら無性にカワイイと思ってしまった。なぜだろう昨日は失恋して傷心中なのに、どうしてだろう?…考えてもわからなさそうだからこれは放置しておこう。
それからしばらくして飛菜子の料理が完成した。ナニコレ、漫画でしか見たことがないようなおいしそうなオムライスだ。
「飛菜子って料理できるんだ。」
「できなかったら雨田を家に呼んでふるまわないよ。」
「食べていいか?」
「いいよ、口に合うかはわからないけど」
「いただきます。」
おいしい、無茶苦茶おいしい。ずっとインスタント生活をしていたからか普通よりおいしく感じる。
「…感想は?」
「とてもおいしいです。店で食べるオムライスよりおいしい。」
「ありがとう。小さいころから料理しているから今ではかなり自信があるよ。」
「どおりで、おいしいわけだ。」
しばらく二人無言のまま飛菜子の作った料理を食べていた。
オムライスを食べ終わると二人で皿を片付けてソファーで二人して本を読むという無言の空間になっていた。
「そうだ、あれから華麗さんとはどうなの?」
「今日、飛菜子を迎えに行くときに大野と華麗が二人でレストランで楽しそうに会話しているのを見たよ。多分、俺はこれで用無しだな二人の仲を邪魔したらいけないし」
「雨田はほんとにそれでいいの?」
「叶わなかった恋をいつまでも引きずるような情けないようなことはしたくないからな。」
「…そっか。またなんか困ったことがあったら言ってね。相談に乗るよ」
「ありがとう。」
ふと、窓を見ると空が赤くなっていた。
「もう夕方か、そろそろ帰らないとな。」
「そうだね、明日から授業だから準備とかしないとね。あ、雨田はいつでも来ていいからね」
俺は帰る準備をしていると、いきなりそんなことを言われて気が動転してしまった。
「え?」
「雨田の両親単身赴任中で家にいないからさ、連絡入れてくれればご飯も作るよ。」
「…飛菜子の料理はおいしいからたまにお願いしようかな。それじゃまた明日」
「また明日、バイバイ」
この物語はフィクションです。