19.メール
~雨田隆一~
今日は昨日と違いかなり早めに目が覚めた。
…いや、早いどころの話ではない。午前3時だ。
華麗も今は隣の部屋で寝ているだろう。
うるさくして起こすとかわいそうだから静かにしないと…
「(二度寝するにしても眠れる気がしないし、何しよう)」
テレビ…こんな夜中にやってる面白い番組を知らないからダメ
散歩…補導されそう。
ゲーム…一人でやっても面白くない。
読書にしよう。
そうして朝6時になるまで読書をして時間をつぶすことにした。
~都留飛菜子~
眠れない。
昨日からずっと…ベッドに入って目を閉じても眠れる気がしない。
「(なんでだろう。)」
昨日、華麗ちゃんがうちに来て雨田に料理を作った。(私が面倒を見てたことになるけど)
華麗ちゃんは大野君が好きなはずなのになんで雨田が好きと思わせるような行動をとっているのか分からなかった。
「(雨田の好物、多分カレーだよね)」
毎日変わらずに学校の食堂にはカレーのメニューがあるからか雨田は3日に一度は必ずカレーを食べてると思う。それ以外はいつも日替わりなのに…
考えても眠れそうにないので窓から隣の家を見ることにした。
「(雨田の部屋が電気ついてる?消し忘れ?)」
私が気になって眠れないことがあるから今からメールすれば答えてくれるかな。
{飛菜子}{起きてる?}
{雨田}{起きてる}
{飛菜子}{華麗ちゃんそこにいる?}
送ってから数分して雨田から返信が来た。
{雨田}{いるけど隣の部屋で寝てるぞ}
「(隣の部屋なんだ)」
{飛菜子}{雨田は今何してるの?}
{雨田}{本読んでる}
「(いつもどうりの回答だ。じゃ、じゃあ聞いてもいいよね?)」
{飛菜子}{カレー美味しかった?}
{雨田}{美味かったよ}
…華麗ちゃんと一緒に作ったんだよ。
なんで私が作ったみたいに言うんだろう。
{雨田}{飛菜子は何してるんだ?}
{飛菜子}{ずっとベッドに籠ってた}
{雨田}{もしかして眠れないのか?}
{飛菜子}{うん}
{雨田}{寝る前に携帯触ってると眠れなくなるって知ってる?}
「(た、確かに…聞いたことがある。)」
{飛菜子}{雨田だって携帯触ってるじゃん。}
{雨田}{本読んでるときにメールしてきたのは飛菜子だし}
「(私だった。
でも、私が眠れないのは雨田と華麗ちゃんのせいだし
…あれ?
でもなんで私、二人のことが気になってるの?
華麗ちゃんが雨田のことを好きなのかの疑惑が気になるから?
…分からない。)」
{雨田}{俺も今、眠れないんだよ。}
{飛菜子}{どうして?}
{雨田}{
華麗のことはあきらめたはずなのに華麗が俺に距離を詰めようとしてるような気がする。
俺は意識してないと思うのになぜかは分からないが華麗が意識に残る。
華麗との距離が本当に近くなってるのかも分からないからな。
}
「(
雨田も同じことで眠れてないのかな。
じゃあ、華麗ちゃんにそれを聞けばいいんじゃないの?
寝てるんだっけ?
)」
{雨田}{寝たか?}
{飛菜子}{起きてるよ。}
{雨田}{…}
雨田から空白のメールが送られてきた。
「(なんで空白?)」
{飛菜子}{雨田?}
{飛菜子}{寝た?}
それからしばらく待ったが雨田からの返信がなかった。
本当に寝たのかもしれない。
夜遅いし、午前4時だし。
「(…4時?)」
どうやら全く寝ていないのにこんな時間になってしまっていたらしい。
本当に今すぐに寝ないと徹夜した状態で学校に行くことになりそうだ。
~雨田隆一~
…うるさい。
眠いのになんで眠らせてくれないんだ。
「リュー、パン焼いたよ?」
…華麗か。
記憶の最後は飛菜子とメールしてたところで途切れてる。
多分、メールしている途中に寝落ちしたな。
そして華麗が自分で食パンを焼いていた。
目を覚ましてリビングに向かった。
「リュー、昨日眠れた?」
「分からん」
「どっち?」
「よく眠れた方だな。」
「よかった。」
「華麗はよく眠れたのか?」
「うん。」
こいつ昔から旅行行ったとしても熟睡してたな。まぁ僻地じゃない限り熟睡するだろうな。
それからいつも通り、テレビをつけてコーヒーを飲みながらパンを食べた。
~都留飛菜子~
学校まで歩いて帰るときに掛かる時間は約一時間、今から学校に行けば多分間に合う。
今日は、お父さんたちがいつもより早めに家を出たから送ってもらえなかった。
いつまでも頼りきりはよくないから自分で歩くけど…寝不足で少しだけしんどい。
結局、睡眠時間ニ時間もないような気がする。
こんなに眠れなかったことは今までで一度もなかった。
「おはよう、飛菜子。今日は歩きか?」
「おはよう飛菜子。」
歩いている途中に後ろから急に声をかけられた。
「…二人とも…」
振り返ると雨田と華麗ちゃんがいた。
「よ、」
「おはよう。二人とも」
「眠そうだな。」
「そうだよ。とっても眠いよ。」
「飛菜子、眠れなかったの?」
「うん。」
「大丈夫か?」
雨田が心配そうに聞いてきた。
「(あの時、寝落ちしたとはいえ雨田は眠たくないの?)大丈夫だよ。」
「そうか?まぁ、大丈夫ならいいか。一緒に学校に行こうか。」
「うん」
学校まであと歩いて三十分くらいのところで三人で学校に行くことになった。
「雨田は自転車に乗らないのになんで自転車を押してきてるの?」
「…別になくてもいいけど、あって困ることもないし。荷物は運びやすいからな。…飛菜子の鞄も持とうか?」
雨田は自分の鞄と華麗ちゃんの鞄を自転車のかごに入れていた。
「…じゃあ、お願い。」
「分かった。」
雨田はそういうと私の持っていた鞄を取って自転車のかごの上に乗せた。
それからしばらく三人で楽しく会話しながら学校に向かって歩いていた。
「そういえば…飛菜子は自分で学校に行けるようになったの?この前は私たちについてきてたのに…」
「そういえば、確かにそうだな。」
「…今日はいけるかなって思って。」
「道はあってるな。」
雨田とあったということは今までの道はあっているはず。
「じゃあ、明日から私歩いて学校に行こうかな。」
「そうしてもいいんじゃない?」
「そうだな。」
「…そうなったら、飛菜子も一緒に学校に行けるね。」
「そうだな。」
「じゃあ、あしたから一緒に行く?」
「時間決めないとね。」
それからは、三人で朝に集まる時間を決めていた。
私が朝家を出る時間が雨田たちより早く少しだけ時間には余裕があった。
話あって決めた時間はいつも私が家を出る時間よりも一時間ほどは遅かった。。
「明日からって言っても親に言わないといけないからあとでメール送るね。」
「分かった。」
「多分、いいと思うけどね。」
この物語はフィクションです。