10.トラウマ//委員会
クラス会が終わり日曜日をただ本を読んで過ごし気づいたら翌日になった。
…いや、実際一睡もしていない。できていない…来週発売の推理小説の後編が気になって仕方なくて少し考察しようと読み返していたら朝の6時を迎えていた。日曜の夕方から初めて朝の6時を迎えたわけだから…今日は4月14日、月曜日だ。
今一睡もしていない状況から少しでも睡眠時間を取った方がいいかもしれないが今寝たら絶対に遅刻をすると本能的に分かるため朝食の準備を始める。
そういえば昨日、小説を買うことに使うはずだったお金が余ったから自転車を買ったんだった。
今日はそれに乗って学校に行こう…
学校について、教室に入ると誰もいなかった。いつもは飛菜子がいるのに…時間はいつもより早い、飛菜子より早く来てしまったみたいだ。
それじゃあ、ゆっくり寝ようか…
「おはよう、雨田」
「…おはよう」
「どうしたの?すごく眠そうだけど」
「昨日、探偵小説を読んでたら気づくと朝だった。そこから朝食とってそのまま学校に来た。」
「何を読んでたの?」
「『七矢探偵 上巻』」
「それって来週後巻が発売されるっていう推理系小説だっけ?」
「そうだy」
「私それまだ読んでないんだよね。」
「マジ?」
そういえば飛菜子の家の本棚にはなかったな…
「私は前編と後編を一気に読みたいから買わなかったんだよ。」
「そうか、俺は別れていても買うかな…長い時間をかけて考察ができるからさ」
「そういう楽しみもあるんだね」
「この小説かなりこってるんだけど。前編発売からかなり時間がかかってるから考察の数が多いんだよ、まぁどれも確証があるわけではないんだけど。」
「今度貸してよ、なんか読みたくなってちゃった」
「今持ってるから貸そうか?読み終わったし」
「じゃあ、貸して」
「はい、」
「ありがとう。…そういえば、土曜はありがとね。私途中で寝ちゃって、運んでくれたんでじょ?」
「そうだけど、あの後大丈夫だったか?」
「起きたときにものすごく頭が痛くて昨日は一日寝込んでた」
あれ、まさか記憶に残ってない?記憶に残ってないなら、思い出させることはないんじゃない?むしろ黒歴史になりそうだからな。
「今調子は大丈夫か?」
「うん、もう頭痛は引いたみたいだし。なんかお父さんがなんか言ってたけど…」
「まぁ、元気になったんだったらいいか。」
「リュー、おはよう~」
「おはよう華麗ちゃん。」
「おはよう華麗、なんでそんなにテンション高いんだ?」
「いや、なんか土曜日途中で寝ちゃったからさー、元気が有り余ってしまってねー」
「それで、そのテンションですか。」
「私も途中で寝ちゃって起きたら自分の部屋にいたよ。」
「飛菜子も?!不思議だね~」
不思議でもなんでもなくだた二人は以上に酒が弱かっただけだな。
持ってきた霧島には非はなく、たまたま今回のようなことになっただけだな。
というか、この二人以外はだたテンションが高くなっただけで記憶に残ってるみたいだな。クラスの中で帰りにどこかに食いに行った話をしてるやつがいるからな。
「そういえば、大野は?」
「熱が出たから休むって言ってたよ?」
「マジ?」
「うん、珍しいよね。」
「あぁ、大野が体調不良になるとはな、明日雨でも降るのか?」
「そんなに珍しいの?」
「大野は今まででインフルにかかったことがなくて、というかかかってないことがおかしいというか…」
「うん、インフルがはやり始めた時期に友達と遊んでそいつら全員かかったのに大野だけかからなかったんだよ、それが5回くらいあったかな?」
「5回だったはずだ。俺たちも何回かあったけど。あいつ以外かかるんだよ…」
「それってだたインフルエンザに強いだけで、他には耐性がないんじゃないの?」
「いや、ただ熱が出ることは稀にあったんだ。でも本人が全く気付いてない…ケロっとしてるのに体温39.8度とかあったから」
「あの時はすぐに親を読んで家に帰らされてたね」
「そのたびにクラスで『大野は人間として不味い方向に進化したんじゃないか』って議論が始まるんだ。」
「すぐに終わったけどね」
「…え?なんで?」
「みんなが『大野ならあり得るか』って誰かが言ってみんな納得するからね」
「…そうなんだ」
「雨田、今日も両t」
「佐伯、ちょっと来い」
佐伯の口元を抑えて中断させて強引に連れていく。こいつには口止めしないといけないな。
「佐伯、お前に命令する。あの時の状況に触れるな、あの二人の前では」
「なんで?」
「あいつらは見事に記憶に残ってないからな。下手したら黒歴史になるかもしれない、それを俺たちが知ってるということをアピールすることに等しいからな。あいつらは知らないほうがいいだろう。」
「へー、もうすぐホームルームが始まるからそろそろ戻ろうか。」
「…そうか、そうだな」
「えーと、今月末に林間学校があることは前に行ったよな。今週末までに一緒に行動する奴らを決めておけよ。一班4~6人まで男女関係ないからな。」
4月末に林間学校?確か…4月30から始まって5月二日に帰る二泊三日の行事だったはず、まぁ四人ならいつもは俺と華麗と大野は決まりとして飛菜子も来るか。それなら四人で決まりかな。
まぁ、追加がいたとしてもあぶれた奴らだな。
「リュー、班はいつも通りだよね?」
「そうだな。ここに大野はいないが別にいいだろ…」
「華麗ちゃん、私も入っていい?」
「当然だよ、私とリューと大野数えても3人までだよ?いつも通りとしても最低一人は足りないよ?そこに誰が入るのよ」
「ありがとう」
「そういえば、土曜の話覚えてる?」
「?」
「言ったじゃん、社会の先生が過去問使ってクラスの実力を見るって。二人とも勉強した?」
「してない」
「一応しましたけど、授業を受けた方が理解しやすいと思いました。」
「朝一限目にそれだけどリューは勉強して百点取ってみてよ。」
「別にいいけど」
あー、教科書を読もう…まぁ百点を取れないはずのテストで百点を取ったら先生の反応が面白そうだけどな…
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「一応、前に授業をした範囲をメインでやってくれ、自習してきた奴がいたらそこも自分で書け、できたやつから前にもってこい。採点する。」
教科書を見ながらではないからみんなかなり点数がひくそうだな…というか、なんで授業を開始して早々に確認テスト?普通もう少しは先じゃないの?
そんなことを考えながら適当に解答用紙を埋めていく…はっきり言って教科書の丸写しは簡単すぎる。
少しづつ回答を書き終えた人が先生の所へ解答用紙を出しに行く。俺、やっと半分終わったところなのにな…
「最後まであがくなよ。どうせみんな全部終わらないんだから、できる範囲でもってこい。」
「じゃあ、これでいいですか?」
最後まで埋めていたら俺が最後になっていたみたいだ。
一応全部埋めることができたがギリギリすぎる。何回か見ただけでこれはきつい…そのうえ睡魔が襲ってきた。これはまずいな。
「お前…頑張ったな、百点だぞ」
「そうですか…あんまり驚いてませんね。」
「ときどきいるからな」
「(時々って百点取る奴いるの?)」
「毎回思うがなんでこんなテストにここまで頑張るんだ?テストは一か月以上先なのに…」
「ただ、教科書を一通り見て覚えただけですよ。」
「この前、教科書を見ずに暗唱してたな。お前記憶力いいのか?」
「いたって普通です。」
「そうか…」
「それより、このテストで頑張る得点でもあるんですか?」
「ただ、俺のテストの難易度がどうなるか決めるだけだ。ただちょっとだけ、お前に加点しておくか…」
ちょっと頑張ったけど、加点もらえてよかった…何もなかったら頑張った意味がないからな。
でも、この先生百点取ることを予想してなかったのに驚く様子がないよな。面白くない。
結構がんばったんだぞ俺、特に睡魔との戦いが…
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「あの先生、あんまり驚かなかったね。」
「そうだな。あの先生が見たかったのはたった一度の授業でどれだけ理解してるかだと思うな。だから、それ以外の範囲が埋まっていたとしてもあんまり意味がないって感じだったな。…今後の方針を考えるためならわざわざ過去問を使う意味はないんじゃないの?」
華麗は先生が驚く反応に期待していたが、あまり先生が驚かずがっかりしてるみたいだな。
まぁ、多分俺がいくら頑張ろうとあの先生を驚かすことは無理だと思うけどな…ははは
「飛菜子はどうだったの?」
「普通かな…」
「そういってるけど。飛菜子は50点くらいとってたよな。」
「とったけど、雨田は100点だでしょ?負けてるよ」
「そもそも、雨田と成績の勝負をしたら駄目だよ?ある種の天才みたいな感じだしね」
「そうかもね。」
「いつも、テスト前に先生たちが気を利かせて次週にしてるのに一人だけ小説読んでるやつだよ?」
「それって怒られないの?」
「それで成績は安定してるから先生も何も言わないんだ」
「見放されてるんじゃないの?」
「確かにね」
だって、小説の続きが気になったんだよ。
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~放課後~
俺と飛菜子は委員会活動で図書委員になったため、図書室に来ていた。
「えーと今日来ていただいたのは、主にシフトって言ったらいいのかな?登板を決めてもらうためです。皆さん、この日は行くことができないっという日はありますか?毎週出ない場合は、誰かにシフトを変わってもらうことにしてもらいます。まずは、自己紹介をお願いします。」
またか、自己紹介…一クラス二人で一学年四クラス、それが三年までだから…24人か。そんなに時間はかからなさそうだな。
「一年A組山蔭博人です。」
…
みんなが自分の名前を言うだけの自己紹介はすぐに終わり、次にシフトを決めることになったが…この場にいる全員に決まったタイミングの予定がなく、自分から積極的にシフトを決める人がいなかったためシフトの順番をくじ引きだ決めることになった。担当になるのは一日に二人で希望のある人同士で組むことが許された。希望がない人は同じクラスの人、開いてないなら別の人と組む…
飛菜子は特に希望がなかったらしく、俺も希望がなかったから組むことになった。
くじ引きの結果、俺は一番を引いてしまった。明日の当番が決まった。
「明日は、帰ったらだめだよ?」
「俺ってそんなにやる気なさそうに見えるか?」
「…まぁ、本を読みたいからって言ったさぼるっていうのは華麗ちゃんから聞いてたかな」
あったな、そんなこと…中学の時に先生が追加で授業をするっていうのを無視して先に帰ったっけ、参加自由って言ってたのに俺以外全員参加していたっていうことになっていた。
なんか当初の予定と少しづれて俺のクラス以外では説明しててテストももう作ってた。この状況で俺帰ったのか…あれ?これって参加しなきゃいけないんじゃないの…
『元々用事がある奴は帰っていいぞ。ただ別の日にやることになるがな』
だから、あの時先生が起こってたのか…
「これは図書委員だぞ。」
「…そうだね、本を読みたいからって帰ることはないよね」
「ここにある本を読みつくさない限りは…」
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~翌日~
昨日、大野は体調不良で休んだが、今日は元気に登校してきた。
「大野、昨日は大丈夫だったか?」
「大丈夫だぞ、西田。寝てたら熱が下がってたからな」
「何度位出たんだ?」
「41度くらいかな?」
「大丈夫かそれ?」
「西田、大野はいつもそれくらい体が強いんだよ。インフルにかかっても無症状だったからな。」
「頑丈すぎだろ」
最近、大野と西田の仲がいいな。飛菜子と華麗も…
なんで、気づかなかったんだろうか…そもそも、距離を置くといってもいきなりそんなことをすれば華麗はどう考えるかなんて、考えもしなかったな。自分が傷つくことを恐れているからか…
「リュー、どうしたの?顔が暗いよ?」
「華麗か、なんでもないぞ。少し考え事をしていただけだ。」
「どんな?」
「華麗が声をかけてくるから忘れてしまったよ。」
「そっかー、忘れっちゃったかー」
「華麗ちゃん、明日前に行ってたお店行かない?」
「明日ね、分かったよ。」
この二人いつの間にこんなに仲良くなった?
キーンコーンカーンコーン
「おーい、チャイムが鳴ったぞ。席に着け!!」
チャイムが鳴り、担任が入ってきた。この先生の名前ってなんだっけ?
「この紙を前においておくぞ、昨日言った班をもう決めてるやつらは名前を書いて俺に出してくれ。出すときには班全員で来ること。勝手に名前を書いて提出した奴が数年前にあったらしくてその対策として作られたらしい…」
昨日、大野に勝手に決めたことになってるけどな。いつものことだし、華麗が連絡したらしいしな…
このクラスに40人いるから、班を作るとしたら4~6人で最大10班になるけど。もし事前に決めたとしたら、何人かあぶれないか?対策をする意味ないんじゃ…
「リュー、このプリント書いてー」
「書くのはいいけど、それを提出するのは金曜の終わりでいいだろ。」
「なんで?」
「…そうだな。まぁ、急ぐ必要はないかなと…」
「早く決める分早く帰れるんだよ?リューらしくないな」
「…そうだな。」
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林間学校 班
班長:
副班長:
メンバー:
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「班長と副班長誰にする?」
「大野と飛菜子に聞かないといけないから、今は無理だな。もうすぐ授業が始まるから、あとでにしようか。」
大野は二つ後ろだからいいけど、飛菜子はちょっと離れてるな…華麗の席と飛菜子の席って近くなかったっけ?
「華麗、飛菜子に聞いといてちょうど席が近いし」
「いいよ、分かった。」
周りの人は次の授業の準備をしてるのに華麗は大丈夫なのか?
「おい、早く席に着け授業は始まってるぞ。」
「やっば」
素の状態の神代先生といつもの口調が変わってなかったけどこのしゃべり方は素なのかな。
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なんの変哲もない時間、授業を過ごしていたら放課後になっていた。今日受けた授業の大半を覚えてない。
「雨田、忘れてないよね?」
「忘れてないぞ。図書委員だろ?」
「そうだよ。」
「最初は仕事は先生が見てくれるから大丈夫そうだな。」
「…」
「不安か?」
「正直不安かな。」
「おいおい、飛菜子に誘われた俺が緊張してないのに飛菜子が不安になってどうするんだよ…
「受付みたいなことをするのが苦手」
「まだ、知らない人は苦手か?」
「苦手かな…でもね雨田のおかげでましにはなってきたかな」
「…そうか」
「こんにちは、昨日も説明してけど今日も説明するよ。まず、…」
「はい…はい、…」
………
「それじゃあ、説明は終わりね。この時期はあんまり人は来ないけど、まぁ居たとしてもいつもここにいてる人が来るだけだからね、あの子たちここで本を借りずにほかのところから本を持ってくるんだから…まぁ、あんまりほんの貸し借りはないから気長にね。」
「分かりました。」
「分かりました。」
「それじゃあ、私職員会議があるから失礼するね」
そう言って先生が出て行った。
「はーい」
「仕事見てくれるんじゃないの?」
「あんまり仕事がないとしてもこんなに適当でいいのかな」
言ったとしても聞こえていない。もう先生の姿はここにはないから。
「雨田、昨日貸してもらった本まだ読んでるんだけど面白いね。」
「そうだろ。」
「犯人が誰か分からないからすごくドキドキする。」
「うん」
「この作者の小説ってみんなこんなに面白いの?なんで私は気づかなかったの?」
「巻数が少ない、発売周期が長いからじゃないかな。これが発売されたのは一年半ぐらい前だし…」
「来週に後編が発売なんだよね?」
「そうだよ。」
「じゃあ、その時一緒に買いに行こうよ」
「分かった…人が来たみたいだな。」
「…人、そうだね。図書室では静かにしないとね。」
「ねぇ、あの人って井上さんだよね?」
「…そうかな?だけど…」
「そうだよ、私たちのクラスの委員長だよ?」
「…そうだったな。」
「まさか、忘れてたの?」
「…」
「否定してよ!!」
「ちょっと、うるさいよ?」
「「すみません。」」
「本を読んでるんだから静かにして」
「ごめんなさい、井上さん…」
「あなた、誰?後輩に知り合いはいないはずだけど。」
「え?」
「飛菜子、よく見ろよ、この人のリボンは青、俺らの学年は赤だ。多分この人は先輩だ。」
「あ、ほんとだ。」
「その色だと、君たちは一年か?それじゃあ、君たちはさくらと同じクラスか?」
「もしかして、井上さんのお姉さん?」
「そうだね。さくらはクラスでどんな子かな?」
「みんながクラスの委員長を誰にするかで悩んでるときに手を挙げて立候補した優しい子ですね。」
「…そうか、あの子はまたそんなことを…」
「さくらさんがどうかしたんですか?」
「…あの子は、昔から人とうまく付き合うことができないんだ、いつも周りを疑ってるから友達ができたことがないんだ。多分、学級長に立候補したのは人づきあいをうまくなるためだと思う。…そういうことだから、どうかあの子を嫌わないでほしい…」
「…そんなことで人を嫌いませんよ。」
「僕も同じです。」
「…そうか、あの子が困っていたら声をかけてみてくれ…」
「分かりました。」
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キーンコーンカーンコーン
飛菜子と二人で本を読んむ時間が終わった。図書室の本を見てみると一度読んだことがある本がいろいろとあった。
「そろそろ、終わりの時間ですので本を閉じて帰る準備をしてください。読みかけで借りたい人はここに来て手続きをして借りてください。」
「…」
図書室には3人いるが誰も何も言わない、それどころか動こうとしない。限りなく夢中になって読んでいるみたいだ。
「お待たせ、どう?仕事は…」
「見ての通り誰も動こうとしてません。」
「あれはいつものことだから気にしない。少ししたら勝手に帰っていくから」
「そうですか。」
「都留さんは今どこにいるの?」
「ちょっと、…言ってくるって言ってどこかに行きました。」
「さぼりじゃないんだよね。」
「そうですね。あ、戻ってきた。」
「都留さん、できればチャイムが鳴るときにはここにいてください。分かった?」
「はい、すみません。」
少しすると、一人が席を立ち、それにつられて一人、少し開いてまた一人と帰っていった。
後は、少しかたずけて今日の仕事が終わる。
~~
「疲れたね。」
「そうだな。」
「人があんまり来ないって言ってたけど。5人位来たよね。」
「…そうだな。」
「でも、ずっと本を読めたのは楽しかった。」
「犯人が誰か分かるか?」
「分かんない、でももう少ししたら読み終わるからその時に考えようよ。一緒に」
「分かった。」
二人で学校から帰る道でいつものように二人で帰る。こんな日常がずっと続けばいいのに…