1.入学初日
夢でも見ているのだろうか?ずっと好きだった女の子の相談に乗ったら、自分ではなく親友である大野一が好きだと言ってきた。
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4月7日 校長の長い話を聞き流して終わった入学式、教室に向かう途中後ろから声をかけられた。
「今年も同じクラスだったな。」
大野か…幼稚園からクラスが変わったことがない。
「あぁ、今年だな、よろしくな。」
「あぁ」
「今日はこの後どうなるんだ?」
「俺に聞かれても」
「初日だからって自己紹介だったりして」
「あるあるだけどめんどくさいな」
「そうだな」
教室についてしばらくしたら担任から自己紹介が始まった。
「俺はこの1年D組担任の谷川明だこれから一年別に仲良くとは言わない、性格が合わないとかいろいろあるだろ?そんな奴と組む必要はない、気が合う仲間でも作って楽しい高校生活を送ってくれ」
「1番雨田隆一です。部活は特に決めていません、趣味は読書と散歩です。特に本屋に行くことが好きです。よろしくお願いします。」
俺は普通に自己紹介をした。あとは他の奴の紹介を聞くだけだな。
「3番大野一です。部活動には入らずに帰宅したいです。趣味はゲームや漫画を読むことです。おすすめがあれば教えてください、1年間よろしくお願いします。」
「30番都留飛菜子です。好きなものは甘いものです。3月に他県から引っ越してきたばかりで知り合いがいません。このあたりの土地勘が全くありません、おいしいケーキ屋さんなど教えてほしいですこれからよお願いします。」
他県ってこの学校公立だからほんとに引っ越してきたのか、名字が都留で名前に飛の字が入ってるって動物の鶴をれんそうするな。
「32番丸山華麗です。勉強はあまり得意ではなです。私は楽しいと思うもの全般が好きです。これからよろしくお願いします。」
こいつは俺の幼馴染で昔から大野と一緒に何かしらやらかして怒られていた仲だ。
気付いたら自己紹介が終わっていて帰りの準備をし始めたころ、
「ねぇ、リュー」
「どうした?華麗」
「ちょっと相談したいことがあって…二人で帰らない?」
「大野は?」
「用事があるんだって、だから…相談のってくれる?」
「別にいいけど…」
「内容は後で話すから…」
「今帰る準備をするから待ってくれ。」
何だろう…俺に相談…ずっと好きだった相手から…断る理由がない。
帰る準備が終わり俺と華麗の二人で帰っている途中にレストランがあったので、入り昼食をとることにした。
「リューは何を食べる?」
「俺はここにあるドリアにする。」
「それもおいしそうだよねぇ。」
「華麗は何にするんだ?」
「いろいろありすぎて迷ってる。ドリアにスパゲッティにピザ、いろいろあって迷う」
「自分はこれがいいっていうやつを選べばいいんじゃないか?」
「簡単そうに言うけどそれって結構難しいんだよ?」
「俺はどれを選んでも後悔はしないからな」
「いいなぁー簡単に決められて。じゃあリューのドリアちょっとちょうだい、それでちょっと選択肢が少なくなる」
「いいけど、それならメニューのここにあるピザなら小さいし二人で分ければいいんじゃねぇ?」
「あ、それいいね、じゃあ私は、ここにあるミートスパゲッティにする。」
「じゃあ店員よぶぞ。」
「お願い」
今決めたメニューを店員に頼んで料理が来るのを待つことになる。
ずっと好きだった相手だとしてもずっとこの間柄だったから一緒に昼食ぐらいで慌てはしないけど相談の内容が気になるなぁ。なんか待っている間何か話そうとして様子を見てみると少し様子がおかしい?まぁとりあえず、なんか話を振ってみるか。
「明日からって普通の授業だっけ?」
「明日はガイダンスとかで普通の授業はなかったよ」
「午前授業?」
「うん、午前中学校で午後から帰って良し」
「明日どこか遊びに行く?」
「…う」
「お待たせしました」
そういって店員が料理を運んできて華麗の言葉が遮られた。
「とりあえず食べようか」
「おう」
これ普通においしいな、
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「それで、相談って何?」
「リュー、やる気だね」
「相談に乗ってくれって言ったのは華麗の方じゃないの?」
「いやー、内容を教えていないのにやる気満々なのはすごいなーって」
「…そうかな」
「実際12年ぐらいの付き合いでも相談内容を教えずに相談に乗ってくれるとは思えないぐらいめんどくさい内容だからねー」
「学校でなんかあったのか?イジメ?」
「生憎イジメを受けるようなことをした覚えはないよ」
「それなら俺は予想できそうにないな。」
「それじゃあ教えましょう、私がリューに相談したい内容は『私の好きな人』だよ」
「ぇ?」
今なんて言いました?えーっと…もしかして振られた?告白もしてないけど振られてしまったような状況だな。
「ヒントは『私とよく一緒にいる人』」
「(大野か)分からん」
「分からない?じゃあもう一つ『出席番号が一桁』」
「(やっぱり大野か) やっぱ分からん」
「(あれ?わからないって何?答えはリューなのにわからないってある?)分からない?」
「あぁ、なんか調子が悪くなってきたかもしれない」
「大丈夫?」
「あぁ、ちょっと頭が痛い」
「えーと、今日は相談を終わりにして帰ろう?」
「いいのか?」
「リューの調子が悪い時に無理して相談に乗ってもらうことはできないよ。」
「ごめん」
「それは私の言うことだよ、調子が悪い時に呼び出してごめん」
そういえば今日、家に誰もいないな。
「一人で帰れる?」
「俺ももう高校生だ。調子が悪くても家には帰れると思う」
「じゃ、じゃあお、お大事に」
「あぁ」
そういって俺と華麗は店を出て、別れた。といっても調子が悪いというのは華麗から逃げるための嘘だけど…まさか華麗が大野のことを…だなんてな。思いもよらないことを言われて気が動転したのを隠すためとはいえ嘘をつくのは気持ちいいものではないな。
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家に帰る途中に行きつけの本屋によって見ることにした。いつも通り本屋は品揃えがいいな見ていて飽きない、適当に本屋の中をうろついていると本棚の陰から出てきた人とぶつかってしまった。相手がびっくりしたみたいでしりもちをついてしまっていった。よく見るとうちの高校の制服だ、しかも女子。
「すみません。ぼーとしていて」
「いえ、こちらこそすみません。」
「この本落としましたよ」
この人いったい何冊本を買う気だ。落ちている本は一目見て数えきれないほどだ。
「あ、ありがとうございます。ってあれ?あなたは…」
「えぇーと(よく見るとリボンがうちの学年のだなって、)あなたは、都留さんでしてっけ?」
「あ、はいそうです。あなたは確か…」
「雨田隆一です。同じクラスです。」
「あ、確か1番の?」
「ひ、そうです。」
この人いきなり知らない土地でこの量の本を買うのか…
「あのー、その量の本を買われるんですか?」
「はいそうです、ちょうど買いだめている本をすべて読み終えてしまったので」
「軽く10冊はありますね。」
「18冊あります。…あのーレジまで運ぶのを手伝ってくださいませんか?私だけだと、無理があるので」
「いいですよ。」
18冊も小説を買う人を初めて見た面白そうな題名が多いな。
「面白そうな題名が多いですね。」
「えぇ、つまらない本を選びたくはないですから。」
「でも、さすがに18冊一気に買う人を俺は初めて見ました。本が好きなんですか?」
「はい、ですがあまり人には言わないでください。中学でずっと本を読んでいたらみんなからバカにされてしまってそれから人には言わないようにしているんです。」
「そうなんですか。でも俺には言ってしまってよかってんですか?」
「もう見られてしまっているので隠しても無駄化と」
俺と都留さんは並んで歩いていると、都留さんが道を間違えてしまった。
「あのーそっちはレジではないですよ。ここを曲がるんですよ」
レジって一個しかない入口の目の前にあったよな、まさか都留さんって…
「すみません。私昔から方向音痴でして」
「(方向音痴の人ってここまで簡単な道でも間違うのか?)都留さん、どうやってこの本屋まで来たんですか?」
「たまたまとおりかかった道に本屋があったので寄り道に…」
「レジまですぐだから会計をしますか?」
「はい…」
なんかちょっと恥ずかしそうだ。
「合計14200円です。」
「カードでお願いします」
迷わずカードって金持ちかよ。
しばらく待っていると会計が終わった都留さんがこっちに来た。
「あのー、帰り道の案内していただいてもよろしいでしょうか?」
「いいですけど、まずどこに住んでいるんですか。」
「あ、はいこれが地図です。」
「…あのーこれって俺の家の隣なんですが…」
「…え?」
「まさかこの前引っ越してきた人って都留さんだったんですか?」
「そうみたいですね。」
「えーと案内すればいいんですね?」
「はい、よろしくお願いたします。」
「とりあえず荷物を持ちますよ。」
「お願いします。」
しばらく歩いて見える住宅街が俺の住んでいる家のある住宅街だ。高校には歩いて1時間ぐらいだ。
俺と大野と華麗は歩いて行ける距離にあるから決めた。
「重くないですか?」
「多少重いですが大丈夫ですよ。」
それから少しして家の前につくと。
「隣にあるのが都留さんの家で会ってます?」
「はい」
「登校するときは歩きですか?」
「行きは親が車で送ってくれるので大丈夫ですが帰りは歩きなので迷わないか不安です。」
「そうですか。」
「扉を開けるので入ってください。」
「え?」
「今は親が仕事でいないので気にすることは何もないですよ?」
「いきなり家に入れと言われたのでびっくりしてしまいました。」
「…では扉を開けますね。」
「…」
「2階にある私の部屋に持ってきてください」
「…」
おかしくない、見知らぬ人をいきなり家に上げるか普通?重い荷物をとりあえず置きたいからまぁ従うか。
部屋に入ると大きな本棚があってそこに大量に小説が置いてあった。見た限り300冊はあるんじゃないか。羨ましい、一日中この量の本に囲まれて生きれるって最高にしあわせそうだなぁ。
「今日はありがとうございました。おかげで迷わず家に帰れました。」
「いえいえ、困っている人を助けるのは当たり前ですよ。」
「あのー、連絡先を交換してもらっても構わないでしょうか?帰り道で迷子になったときに困りますから」
これはよっぽど方向音痴ってことでいいのか?まぁかわいそうだから交換しておこう。
「これが俺の携帯のアドレスです。」
「いいんですか。雨田さんには特がないですけれど。」
「いいんですよ。さっきも言いましたが、これはあなたが困っているからそうしているだけで会って決して損得で動いているわけではないんです。」
「そうでしたら、ありがたく頼らせていただきます。ですが雨田さんが困っていたら私に相談してください力になりますよ」
「ぅ…」
…相談ねぇ…
「どうしたんですか。」
「いえ、大丈夫です。」
「大丈夫ではなさそうです。現に今顔色が悪いですよ、困っているなら話してください気分が楽になると思いますよ。」
「別に大したことではないです。単にずっと好きだった女の子にさっき振られたばかりなだけです。」
「大したことあるじゃないですか。」
「まぁ面白い話ではないですが聞きますか。」
「はい。」
なんか生き生きしてない。
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「そんなことがあったんですか。」
「まぁ、こんな面白くもない話聞いてもらってありがとうございます。少しだけ楽になれたと思います。」
「でも悲しいですねずっと好きだったってことは何年前からですか」
「自覚したのは3年前ぐらいですかね」
「3年ですかー長いですね。」
だんだんと口調が変わってきている気がする。聞いていて面白かっただろうか。
窓の外を見ると日が傾きそろそろ夕方になりそうな時間帯だった。
「じゃあ、俺はこれくらいにして帰ります。」
「あ、そうですか、」
「そうだ、今俺まだ読んでいな小説がなくて…ここの本棚から少し借りてもいいですか。」
「いいですけど二つ条件があります、」
「何ですか?」
「一つは、読んだらその感想を私に教えること。もう一つは、私に敬語を使わないことです。」
「はい?」
「私はこれから、一人の友人としてあなたに頼らせてもらいます。ですからあなたも…」
えぇーとつまり友達になりましょうってこと?
「いいですよ。飛菜子さん」
「敬語はダメですよ。」
「分かった、これからもよろしく飛菜子」
こうして今日、華麗に振られ飛菜子と友達になった。
この物語はフィクションです。