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再びガラッ、とドアを開けると中には戦闘準備万端な方々がドアの前にズラッと並んでいた。
「テメェ等さっきからギャーギャーっせえんだけど?なーにか用ですかぁ凡クラのお二人さん」
「ひぃっ」
やややめて欲しいなそのちょっと顎を上に向けて顔に影つくんの。こっ怖いんだよね、ちびりそうなんだよね!!
ビビリだと自覚している俺にはキツイ。
「あははは、やっぱバ神田だぁ」
秋と俺の後ろに続いて入った佐藤都留が秋にケラケラと笑う。
俺達の後ろから聞こえた声に前に立ちふさがっていた不良さんたちは驚いたような顔をして後ずさった。
なんだなんだ、やっぱ佐藤都留を見ると皆後ずさるのか?
「さっ佐藤…チッ…んだよじゃあそいつが生徒会長に喧嘩売った転入生かよ」
そういって指差した不良。
「……え?」
「じゃあさっさと久木の前出せよな、寝てんぞアイツ。おら」
「相変わらず口が悪いね~、もーっとおっとり優しく喋らないと駄目だよ~警戒されちゃうヨ」
はしっ、と不良さんのうちの一人、金髪さんが俺の。
[俺]の襟首を掴んだ。
「は?え?えっえっ」
「あれー?そっちって……」
わけもわからず俺は襟首をつかまれずるずると引きづられる。まったく理解できていない俺を見て佐藤都留がこてりと首をかしげる。
「おらよっ!!!」
襟首を掴まれた俺、ふわっと体が浮いた。
正確には、投げ飛ばされた。
(ちょっちょっまっ!!つっ机机!机に当たっ!!?)
目の前に迫る机。俺は咄嗟に腕で頭を抱え込んだ。
――ガタアアアンッ!!
机をなぎ倒しながら吹っ飛ばされ落ちた、壮絶な音がなる。
「こっ幸助!!お前幸助に何すんだよ!!!!」
「あ?幸助?だれそれ、神田秋じゃねえの」
「神田秋は俺だ!!!」
その答えに志摩を投げ飛ばした生徒は「は」と固まっていた。
すると他の生徒たちは「じゃあアイツは誰だ」とざわめきだした。
「あ~やあっぱ間違えてる~、あはは。悲惨だねえ志摩幸助」
「あれ…幸助名乗ってたっけ…ってそれより!!お前酷いぞ!!」
目の前の男に食って掛かった秋。
しかしガタリと机の動く音でぴたりと教室は静かになった。
「い~っ……たく…ない?」
静まり返った教室で俺の声がやけに大きく聞こえる。
ぶん投げられ叩きつけられたはずの体にあるはずの痛みはほとんどない。
俺は不意に自分が固い床に叩きつけられたわけではないことを、柔らかなものの上で気づいた。
「ってぇな……いつまで俺に跨ってんだテメェ…」
「わ…すげぇ美人……ってぎゃあああ!!!」
丁度腹辺りに跨った形の俺。傍から見ればゴホンゴホン失礼しました、っていっちゃうようなこの格好。
俺の下にあるすばらしいプロポーションのお方は真っ黒に塗りつぶしたような綺麗な髪の持ち主でした。俺…髪フェチだったりすんのかな。
なんて事、只の現実逃避だったりするんですけど。
「竜也~その普通君は神田じゃなぁいからね~」
「お前誰」
瞬時に現状を理解した俺は慌てて体を起こして綺麗に体を90度に折り曲げた。
「すっすいません!!わっわざとじゃないんです俺っな、投げ飛ばされて!!たまったまたま貴方がそこに居て!!!」
「あ?あー…腹いてぇ」
むく、と上半身を起こした相手はボリボリと頭を掻くと欠伸をしながら立ち上がった。
「!!!」
(背ー高っっ何センチあんだこの人…)
「神田って野郎はどれ」
「どれとか言うな!お前態度最悪だな!!」
竜也という生徒は秋を見つけると小さくニヤリと笑った。秋は顔を真っ赤にして起こっている。
つかつかと前に進み出た秋は俺の腕を引くと俺を背に隠した。おおっ格好いいぞ秋!残念ながら俺のがでかいから隠れきれてないけど…。
「へーお前があのナルシストに啖呵切った転入生なァ?思ったよりちっせぇ」
「ッちっさい言うな!」
「ついでに言うと顔も微妙、隣の奴ァ不細工」
至極つまらなさそうに指をさして言うその男。
ぶ、不細工?え、不細工?
え、俺?俺だよね?え、むしろ俺じゃないわけないっすよね。
ふんっ、と鼻を鳴らしながら、なんてさすがに会長とそっくりな態度はしなかったが目の前の野郎はケッ、と鼻であしらった。
俺は、美形でもないわけだ。でも不細工でもないと思うんだ?しいて言えば普通だと思うんだ。つーか初対面の相手に不細工とか微妙とか言うか普通!!!
「都留ーんなゴミ連れてきて何のつもりだよ、んな面白くねえンだけど」
「そ?俺は面白いと思うんだけど~」
「糞つまんねぇよ」
――むか…っ。