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避けようとすればするほど近づくあれ


毎朝毎朝、正直な所泣きたくなる。俺の一日はまず大声から始まるのだ。


「ぎゃああああっ」


むくっ、と俺はベッドから起き上がり部屋を出ると隣の部屋のドアを開けた。


「やめっ馬鹿どこ触ってんだよ変態!!」


「あ?俺様に触られて光栄だろ?」


「っざけんな!!あっこっ幸助!!たっ助けて!!」


そんな大きくないベッドに図体のでかい男と小柄な男。立派な男二人の下で可哀想に、ベッドがギィギィと泣いている。まさしく悲鳴を上げている。


「……朝っぱらから何やってんですか会長」


寝起きの方々に飛び跳ねた頭を掻きながら、俺は最近転校してきて同室者になった神田秋の首根っこを掴み自分のほうへと引き寄せた。

ここで助けないと後で騒ぎが大きくなる事はここ数日でしっかりと学んでいる。


「テメェ…この俺の邪魔をするとはいい度胸だな…」


それはそれは端麗なこの学園一のモテ暴君、生徒会長の鋭い眼光に少し肝っ玉が冷える。

今までならこの距離で生徒会長の視界に入るなんて、考えられなかった事が今自分の身に起きているのだという現実に未だに眩暈がした。


「や、邪魔とかじゃなくて隣で朝からサカられてる俺の身にもなってほしいというか…なんというかその…アハハ」


「そうだよ~舎弟ちゃんに粗末なもん見せないでよ~」


不意に後ろから聞こえてきた弾んだ声に俺は驚く。その声もここ数週間で聞き覚えのあるものになってしまった…。まさか、いままでごく平穏に過ごしてきた自分がこんな人たちに囲まれる事になるとは…想像もしていなかった。


毎朝のように繰り返されるこの光景も、もうすっかりおなじみだ。


くしゃくしゃになったベッド、その上でつかみ合う生徒会長、敷島揚羽しきしま あげは先輩。

俺の後ろでニヤニヤしてる性悪、そんな事恐ろしくていえないけど。佐藤都留さとう つる先輩。


で、不運としかいいようがない俺、志摩幸助。

なんて他の生徒が見れば白目をむきそうなメンツにため息をこぼしていると俺の部屋の左側のドアが蹴破られた。


「…お、はよう八重」


「あんの糞会長が!!!!!」


ああ、俺の言葉は無視なのね。

で、後ろで爆笑しないで下さい佐藤先輩、久木ひさぎ先輩にちくりますよ。


俺の日常が変わったのは先々週頃の話。

転入してきた秋が校内で迷っているのを助けた所から始まった。


部屋に戻ってくると部屋が一つ増えてるし、秋を愛おしそうに見つめる会長、そんなツーショットを見て。


(グッドバイ、マイハッピーライフ。)


なんて直感した。


「幸助?」


「テメェ俺様の秋の呼び声を無視するたぁいい度胸じゃねえか」


「生徒会長が舎弟君を馬鹿にすると許されないよ~」


「わらわらわらわら毎朝お前等うぜぇえ!!!」


(…その通りだ、八重。だけどお前も似たようなもんだよ!!)


秋は決して根が悪い奴ではないのだ。ただ若干おつむが悪いだけで、後頭もゆるいだけで。無邪気な奴なのだ。

あとイケメンに好かれる率が異様に高いだけの話である。


「幸助!」


「…はいはい、さっさと用意していこうな、とりあえずシャツ着ろ?」


そんな格好だと食われるよ、ここにいる獣2匹とドS一人に。


にぱっ、と笑った秋は「うんっ」といい返事を返し着替え始めた。


最初こそ天下の生徒会長様や不良クラスの頭の親友に八重にとびびっていたのだが、なんともない。慣れてしまったのだ。


どんな怖い人たちだと思えば、そりゃあ怖いときもあるが俺はまだ一度も見たことがない。ただただ、変態なのだという見解で終わったのだ。


(ああ…俺いつからこんなことに慣れちまったんだろ…。)


ほろりと心の涙を流していると不意に数日前、最強最悪のD組に秋と一緒…というか半ば無理やりに連れて行かれた事を思い出した。


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