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「なあ、悪いって」


「誠意が見えねー」


現在午前7時半過ぎ。

まぶしい太陽が昇って窓から朝日が差し込んでくる俺達の部屋の空気はどんよりだ。

哲平の謝罪にも俺はツンと顔を背けたまま一切答えない。


「飯くわねーの?」


「食わん」


「学校遅れるぞ」


「遅れねーよ」


ムスーンと頬をふくらます俺。膨らませなくても頬は腫れているのだけど。


「俺はソファで寝てる哲ちゃんを寒いだろうなと思って毛布かけにいったのに…」


よよよ、と泣きまねをすれば少し焦った声で哲平は濡れたタオルを俺に渡した。


「ごめんって、夢だと思ったんだよ」


まさかお前が起きてくるとおもわねーじゃん、と眉を垂れ下げて弁解をする相手に内心ほくそ笑んだ。事件は昨夜。尿意を催した俺はリビングへ行くとソファで哲平が寝ていた。


普段吊っている目は伏せられ、あどけなさが見え隠れしている。

スースーと心地よさそうに寝息を立ててはいるが、寒そうだと思って俺は毛布をかけようと顔を覗かせた。

その時だった。


――ゴ…ッ!!


「ぶふっ!!!??」


強烈な右フックが俺の頬にヒットした。

チッと舌打ちをして俺の手から落ちた毛布を体に巻きつけ再び寝息を立てだす哲平。

俺はソファの後ろでばたりと完全のノックダウンしていたのだ。


で、現在。


「いい加減許せよ」


「哲ちゃんが俺の言う事一つだけ聞いてくれるなら」


「は?そんぐらい別にかまわねーけ…」


「マジで?言ったぞ今、聞いたからな」


「…やっやっぱ無し!!今の無し!!」


ぐりっ、と首の方向を変えてきらきらした目で哲平を見つめると途端に顔を青くさせた哲平は、顔の前で両手を振った。しまった、と顔に書いているがもう遅い。


「無理無理、もう俺の心の中に録音されたから、もう無理」


「っテメェ…狙ってたな!!」


「なぁんの事かなぁ?げへへ」


「っの野郎!!」


「どわっちょっタンマタンマ!!!俺非力だから実力行使とか勘弁!!」


がっ、と掴みかかってきた相手に俺は反対に顔を青くさせた。

いやいやいや俺たしかに殴ったりするけど俺非力だからダメージ全然ねーじゃん!!可愛いもんじゃん!!

結局バランスを崩した俺は頭をテーブルにぶつけ、そこでもみ合いは終わった。


「~おぉおおおおっっ!!!」


「ハッ、自業自得だ」


悶絶する俺を楽しげに見下ろす哲平をにらみつける。哲平のベッドの中に熟女もののAVを入れておいてやろうと思った。


「哲平、おぼえとけよ…お前は俺の言う事を一つは聞かないといけないんだからな!ハーッハッハッハッハッハッ!!!!」


「…お前程高笑いは似合う奴はいないかもな」


「俺はね、下っ端の笑い方が似合う奴なの」


「なんの自慢だよ」

俺の要望に渋々と答えるはめになった哲平は苦い顔でわかったと呟いた。


(さ~て、なんにしよーかなー…高い飯でもおごらせるかな~)


神田とか志摩とかに関わらせるのも面白そう。哲平は何かと最終的にはいい奴だし男前な性格だし、誰かに惚れられてもおかしくない。

そんな展開も面白そうだ。


(まぁ…哲平玩具にするつもりなんかないけどさぁ!)


目の前で苦々しいしてやられた顔をしている相手を見つめ軽く微笑んだ。


「……腹立つその顔やめろ」


「えー俺微笑んでたじゃん!」


「微笑みじゃねーよ!お前のはニヤニヤって効果音が似合う笑みだった」


「お前はとことん俺を悪者扱いしたいらしいな」


やさぐれたような雰囲気をかもし出す哲平に俺は苦笑する。

いやいや、やさぐれたいのは俺の方だろ、だって俺昨日殴られて今日悪者扱いじゃないすか。


「まあ哲平は俺の言う事一つ実行すればいいだけだし?俺のかわりに神田と仲良くしてもらおうかなー、とか」


にたっ、と笑った俺に哲平は大きく目を見開いた。


「冗談じゃない!あんなトラブルメーカーなんかとかかわりたくねーよ」


激しく首を横に振る相手に俺はきょとん、とほうける。

珍しい。人の好き嫌いはそんなにないのに神田は受け付けないってか。


「神田嫌いなの?」


「嫌いっつーわけじゃねーよ、只面倒なだけ。巻き込まれたくないだろ、志摩みたいに」


「ほうほう」


「でも小豆がいなかったら俺も神田の事いい奴っておもってたかもな」


「そう?哲平は多分俺と関わってなくても神田には近づいてなかったと思うな、だってああいうタイプはしんどいっしょ?」


お前のがよっぽどしんどいけど、なんて言葉はご愛嬌だ。

へらへらと笑う小豆に哲平は怪訝そうな顔でため息をつく。とりあえず食べられることのなかった朝食にラップをかけて冷蔵庫に入れた。


「ま、なんせ今日はぜーんぶ奢って下さいよ、全部」


緩んだネクタイをしめブレザーを着ると靴を履いて玄関を出る。

ちらほらと他の生徒たちも登校しはじめており、すれ違うと軽く挨拶を交わす。


「おはよう猫田」


「おはよう」


おしゃれ眼鏡をかけながら、にこにこと愛想を振りまく俺に哲平はじとりとした視線を送りつけてきた。


「別に普段も素でいけばいいのに…」


「あー?だってそんなの僕もてもてになっちゃうでしょ?」


きゃーん、と内股で指先が少しだけ出た手を頬に添えるとあからさまに顔をしかめられる。


「モテるわけないだろ、お前鏡みたことあんのか」


「すっごい真顔で冷静に言われた!!俺の心が傷ついたよ!?」


「うっせぇ馬鹿!!さっさと行くぞHR始まる!!」


横暴だ!

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