第三章 鬼(ウラ)/3
家と道とを繋ぐ林道は酷く落ち着く。
周りは仄暗く、日の光さえ不躾に差し込まない閉鎖された空間。それは私が嫌う今の現状を象徴しているようなものなのだが、確かに私自身は安らぎを覚えていた。
切り刻まれた、ぶつ切りの日光。それとともに照らされる私の双眸。
葉と葉が擦れるざわめき。それにより照らされる私の長い髪。
その日の光は何だがヒトの目に感じて落ち着かない。闇が落ち着く。狭い場所が落ち着く。ヒトのいない処が落ち着く。
思って、哂ってしまう。紅い唇が歪む様を、自分でも明確に想像できる。
だって、私はこんなにも“鬼”を上手く演じれているではないか、と。酷く自然で、違和感など全くない演技。それは故意に演じていない演技など、それは本質だ。
こうして、徐々に徐々に私は自分というものを理解していく。きっかけは父の言葉だとはいえ、理解が深まるのは自身の所業。
延々と続いていた林道が終わり、人のいない一般の道路へと足が出る。――途端に、心臓はざわめく。
それは、恐れか、昂揚か。
無意識に回りを見渡す。広がる住宅街。住宅に囲まれる道路。其処らを歩くヒトは誰もいない。
息が漏れた。それは安堵の息か、無念の溜息か。
何ともなしに、私は道を歩いて行く。林に沿ってぐるりぐるりと。
隣に在する林の在り方は、異界と常世を繋ぐ境界だ。中から外は見れず、外から中は見れない。遮断された別世界、通行不可の並行世界。その向こう側に住んでいるのが、私なのか。
からからと、下駄を鳴らして歩く歩く。密集した林の塀は有り難いが、こう広いのは頂けない。そんなことを思い向かう先は桜の木が集まる場所。
――
「なん、で――」
思わず立ち止まる。思考が止まる。
登って登って開けた視界。木々が囲む中、一際巨大な樹が一本。その根に座っていたのは、一昨日の男。
「あぁ、良かった。もう来ないのかと思った」
何て、尻に付いた土を払いながら立ち上がっている。日の光に負けないくらい、眩しさに包まれた笑顔を浮かべながら。
疑問が浮かび、苛立つ。あの男は何なんだと。どうして私の前に現れるのか。何故、私に会えてあんなにも嬉しそうな顔をするのか。
どうして、私のココロはこんなにも震えているのかと。この感覚は、何なんだと。
だから私は背中を向けてまた立ち去る。
「待って!」
でも、やっぱり男は私を止めてきた。
聞かなければいいのに、私の足は止まってしまう。このまま走って丘から抜ければ良いのに、足は根をはったように動かない。実際はそんなことはないのだから、単純に私自身が私の足を動かす気がないのだろう。
そのまま背中を向け続ける。数秒の沈黙の間、男の息が吸う音が聞こえた気がした。
「君の――」
風が流れる。
「君の名前を、聞かせて欲しい」
風が声を、運んでいる。
▼
「……へぇ、変わった名前だね」
彼女の名前は高司羽羅というらしい。それを聞いた感想を、俺はそのまま口にする。
「変、でしょ?」
「いいや、別に。素敵だと思うよ」
「…………そう」
声はするけど、彼女の声は聞こえない。それはちょうど、俺が背にしている大木の裏側に居るからだ。
俺は片膝を立て、その上に腕を乗っけながら、樹に背を深く任せている。
彼女の姿が見えないのは残念だけれど、彼女がいることは分かるから良い。それだけで、今は十分だ。
「……高司さんは」
「羽羅」
「え?」
「羽羅で良い」
「あ、うん。……羽羅さんは」
「さん付けは嫌い」
「……羽羅は、もしかしてあの豪邸に住んでいたりする?」
「……何で、分かったの?」
「あははは、やっぱりか」
そりゃ、分かるだろう。今の御時世、着物を来ている人など滅多に見ない。何よりこの丘の裏にはあの武家屋敷が林の奥で構えているのだ。この二つを結びつけるのは自然だろう。
「俺ね、間違えて君の家の前まで行っちゃったんだ。いや、間違えてというか……うん、まぁ、行っちゃったんだ」
散歩がてら、とか知らなかった、とか色々あるが割愛する。
「……ねぇ」
「何?」
「……鬼って、信じる?」
不意な質問をされる。今の会話に繋がりがあるのか見当がつかないが、これを無視する訳にはいかないだろう。
だがその前に気になるのは、彼女はどんな表情を浮かべながら訊いているのか、だ。
だけどそんなものは俺には分からない。だからありのままの心内を言う事にする。
「いないとは思わないよ。まだ見てないから、いるって信じることは出来ないけどね」
「なら――」
一旦の沈黙。
「――鬼って何だと思う?」
「……怖い存在なんじゃない? 人を襲うとかさ」
一体この質問に何の意味があるというのだろう。まるで意図が分からない。
だけど、どうして彼女の声には、こんなにも悲痛な色が混ざっているのだろう。
▼
「……怖い存在なんじゃない? 人を襲うとかさ」
その言葉に私の心臓は収縮した。それはきっと、悲しみから。
どうして私はこんな質問をしたのか分からない。どうして彼の言葉にここまで反応してしまったのか分からない。
彼が言ったことは当然の事柄だろう。今更言われたって何とも思わないし、自分でも分かっている事だ。
だというのに何故こんなにも私のココロは反応してしまったのか。
彼なら、何か違う答えを言ってくれるとでも期待したのか。
「……帰るわ」
気づけばそんなことを言って、立ちあがっていた。
彼は別に悪くないというのに、私のココロには苛立ちの色が滲んでいて、それは彼に向けられている。
歩き始め、気づく。まだ彼の名前を聞いていないことに。
「貴方、名前は……何ていうの?」
「伊佐見諾」
「そう……良い名前ね」
何となく、彼が笑った気がした。
帰ろう、と一歩足を踏み出すと、
「明日は――!」
そう慌てたように言って、
「明日は、来るのかな?」
「……ええ」
何て、気づけば答えてしまっていた。
▽
本来、忌縛なんていう仕事は高々第六階級の人間がやるようなものではない。
当然と言えば当然だ。幽閉を施し、世界から隔離させなければならない存在だ。それは少なからず、世界に在ってはならない存在ということだろう。だがそれが、世界にとって世界にあってはならないのか、と問われれば返答に困るところなのだが。魔術沿慨神意会などと崇高な名を気取っているが、それが世界という神に通じているのかと言えば、それは甚だ疑問となる点ではある。しかし、神意会に身を置く以上、その命に従う必要はある。
だから、千姫も文句を言いながらも師から送られた伝通の指示に従っている。
忌縛の対象となった存在には自覚して危険な存在もあれば、自覚せずに危険な存在となっている場合もある。
後者の例を挙げれば現象の類に当たる。そういうものは当然自覚など持たない。時が螺旋する閉鎖された街であったり、極端な例を挙げれば抗えない呪いもその類に分類される。
そして、前者だ。こちらは当然、生物に限定される訳である。そして歪曲のしようもなく、千姫に課された任というものは紛れもなく前者だ。
故にそれはとても厄介だ。犬や蛇などの動物ならばまだ事は容易い。だが、対象は仮にもヒトの形を成しており、社会に溶け込んでいる。
それが一番厄介なのだ。魔術師といえども所詮は人間だ。社会という檻の中に住まう一人の生き物に過ぎない。加えて、千姫という一個人は日本という国に国籍を置いている。
そうであるならば紛れもなくその身に受けるものがある。法だ。
それが、今回の千姫に課された任務に於いて厄介な点。
だがそれを理由にして尻込みしていては何も始まらない。下手をすれば、自分の首が飛んでしまうからだ。
千姫は目的地へと向かい、迷いなく歩を進める。身を切る風が、ベージュの長いコートを背後に棚引かせていた。
歩に迷いがない理由は単純明快。予め、資料は受けていたし、調査もある程度は終わらせていた。だから対象がどういう存在なのかは七割方知っていると言える。だが、更に細かい事を知らなければならない。その人間性や、私生活の内容まで。事は慎重に運ばなければ、命を落としかねない。
――
目的地に辿り着いた。目の前に連なる雑木林。それが千姫の向かっていた場所に相違はない。
だからその奥に佇む屋敷に用があるのだが、千姫は雑木林を割いて存在する道へと脚を踏み入れるのは躊躇われた。円形状の土地に沿って林が広がっているのだから、千姫の目の前に広がる林と歩道の境界が高司家へと踏み入れるか否かの境だ。故に、その空間には結界という見えない防御壁が聳え立っている可能性がある――いや、十中八九、まず間違いなく林に入った時点であると見て構わない。
今立つ千姫の場所では、魔術師として何も感じないが、何もないとは限らない。
結界とは、その効力と秘匿性の両立にあると断言できる。それは当然だろう。結界とは術師自身の身を護ると同時に、罠としての機能がある。例えば、戦闘時に於ける盾としての効力に期待を寄せるのであればそれは当然、強固さなど身を護る要素を高める。だが、罠としての機能を求めるのであれば、それは当然秘匿性が優先される。罠の類に分けられる結界としての最大の代表例は“監視”だ。
監視の結界はとても存在感が薄い。高潔な魔術師でも、その術者の技量を込められた結界を見破るのは至難の業、というレベルではないほどのもの。その秘匿性にのみ魔術を追及した者に於いては、見破るのは不可能だと言ってもいいほど。
効果は薄いものの、それだけのもを創れる可能性を秘めているのが結界だ。だが、効果は薄いとはいえ、侵入者が分かる程度の情報が入るのならば、それは両手を上げて喜べるほどの見返りだろう。
故に悩む。
まだ屋敷に接触する気は毛頭ない。だがしかし、ここからでは林が邪魔で何も分からない。生憎、千姫には透視の類の魔術は持ち合わせていない。即興で会得したものなど、多少の魔力が内包されたモノで、歪められ、弾かれてしまう。加えて、結界に感知されてしまう。百害在って一利無しとはまさにこの事だ。
だから、千姫は一先ず策を練ろう、と踵を返した。
▼
「やあ……待ってた」
風に撫でられた長い髪を手で押さえながら、羽羅は変わらず現れた。腰を上げずに、笑顔と挙げた片手だけで出迎える。
橙色の着物を纏った姿に思考が止まりそうになったが、何とか堪える。それだけ、黒い髪を携えた彼女は美しかった。
何も言わず、羽羅はこちらへ歩いてくる。羽羅の向かう場所は、もう何度も繰り返された定位置。俺が寄り掛かる巨木の裏側だ。
「待って!」
「……何?」
「こっちに来て、話さない?」
気づけば、体温を上げながら俺はそんな事を口走っていた。
―――
「……そう言えば君は、学校は何処に通ってるの?」
もう既に俺と羽羅は何度か顔を合わせているのに、お互いの事というものを殆ど知らなかった。だから脈絡のない無言からでも、そんな質問を投げかけていた。
「仁稜学園に、進学する予定よ」
「本当に!? 俺と同じだ!」
そうなの、という問いかけに俺は頷きで返す。が、何故か羽羅は俺から顔を逸らしてしまっていた。
その行動に僅かにショックを覚える。だって、その反応は俺と一緒の高校の通うことが嫌だという表れだろうか。そうだったら、本当に……ショックだ。
でも、羽羅は少なからず俺に会いに来ている。俺がいることを分かっているのに、連日ここに――初めて会った場所に来ているのだ。
もう何度だろう、と数え掛け止めた。そんな無粋な真似はしたくない。けれどもし、羽羅が俺と同じ学校に通う事を実は嫌がっているのなら――。
と、悶々と考えだした瞬間、くぅ――という何だか間抜けな音が空気を震わした。
「――――」
「――――」
無言になる俺と羽羅。
羽羅のお腹へと目をやる俺。そこから反対へと目を逸らす羽羅。
「お腹……減ったの?」
「わ、悪い?」
その羽羅の様子に思わず笑ってしまう。笑いを堪える為に鼻から息を漏らして、腹を震わす。
途端に、羽羅は頬を染めながらこちらを睨んで来る。その様子にまた笑ってしまう。
「帰るわ!」
そう言って髪を振り乱して羽羅は立ち上がってしまった。
「分かった! ゴメン! 謝る! お詫びにお昼ご飯奢るから!」
▽
「ここはね、料金が安い割には味が保障されてるって評判の店らしい」
そう言って、暖簾を垂らした個人経営の料理店の前で立ち止まる。
少し小汚いというとあれだが、そういう外観の雰囲気と、一軒家一階建てといった具合のその店の規模がまた、チェーン店ではなく個人でやっているのだと言う雰囲気が漂っている。加えて建てられた場所も大通りに面している訳でなく、そこから二、三外れた通りにあるこじんまりした店だ。
割と金のない貧乏学生はこういう所へと足を運んでいるのだが、やはり羽羅は滅多に来た事がないらしく、珍しそうにきょろきょろと店の建物全体を観察している。
「もしかして、こういうとこ来たことない?」
「ええ、無いわね」
そう答える間も羽羅の観察は止まらない。微妙に身体を傾けて窓から中を覗く羽羅の姿は、普段の落ち着いた姿とはまた違っていて、何だか子供みたいで可愛かった。
と、そんな羽羅が来ている服は今も着物だ。当然、丘から降りてきた際も、当然この着物姿。街を練り歩いてこの店まで来た時も、この着物姿。似合っているからこそ、様になっているからこそ、羽羅自身の秀麗さに周りの目が奪われていた。初めは少し恥ずかしいとか感じていたが、周りの視線が自分に向けられている訳ではなく、全て羽羅へと注がれていることを早々に気づき、別に何とも思わなくなったのだが。その実際に見られていた本人は、まさしく何処吹く風、と言った具合だったのだが。
「……じゃあ、入ろうか」
――
よくある定食屋、という表現が恐らくぴったりなのだと思う。カツ丼やカレー、コロッケ定食など、そう言った値段も安く量もある、という雰囲気のメニューだ。
俺は無難にカツカレーを選択させて貰った。失礼かもしれないが、カレーに関してならよっぽどでない限り外れにはならない筈だからだ。奇抜な隠し味とか、何か材料を間違えるとかのハプニングが無ければ食えないものは出ない筈。そう判断した上の選択だ。
それに反し、羽羅が選んだのは刺身定食だった。他の商品に比べて割と高めだったりする。しかしそんなものは羽羅には関係ないのだろう。何せ、メニューを開いた途端、開口一番飛び出した言葉は「桁間違ってないの?」であるのだから。それがどちらに間違えていると思ったのかは、言うまでもあるまい。
俺に並べられたものはまあ、言ってしまえば普通と言った出来栄え。可も無く不可も無く、だ。だが値段と量の対比を比べれば、それは可であると言える。
カレーを食べてみて、明らかにレトルトな空気が漂っていたら、味に関しては他の品々も期待しにくくなるだろう。それも考えた上でのカレーだ。
だが、刺身定食はどうなのだろうか。鮪のお刺身が数枚器に乗せられ、且つ他の海産物を用いた汁物、加えて煮物。そして、ご飯にはどうやら鯛の切り身が塗してあるらしい。飲むお茶とは別にお茶の急須を添えられた所を見ると、ご飯にかけろという事なのだろう。
「……何か、おいしそうだね、羽羅」
はっきり言って、とても美味しそうだ。っていうか美味しいだろう。値段が高いだけあるということだ。
だから羽羅が箸を二つに割る動作を、その手に箸を持つ動作を思わず見つめてしまった。と、そこで気づいたが、羽羅はとても上品な動きでそれらを行っていた。俺の様に片方に比重が傾いたような割れ方はしていないし、先がずれた様な変な持ち方もしていない。羽羅の持つ綺麗な箸使いなら豆腐も軽々と掴めそうだ、そう思えるほど。
そこで改めて羽羅の育ちの良さを認識する。箸を持つ姿も、着物姿に相まって様になるというものだ。
迷い箸などせず、ゆっくりと煮物を掴み口に放る様子は、何処かの高級料理店での批評家のような貫禄があった。
ゆっくりと噛まれ、咀嚼された後に静かな店内に通る様な声量で羽羅の口から飛び出た言葉は、
「――不味い」
俺は即座に千という価値のある札を二枚出し、羽羅の手を引いてその場から立ち去った。
「本編の雰囲気を多大に壊す恐れがあります。そんなの関係ねえという方や、だが断るという方は踵落とし!」
↓
↓
「あ? 踵落とし?」
「舐めてんの?」
「すいません。一杯一杯なんです。止めて、ボコらないで」
▽
「さあ、ローテンションが定評のこの作品、この場では上げていきましょう! HOOOOOOOOOOO!」
「……」
「…………え?」
「ちょ! 二人とも! 何でテンションそんな低いんですか!? もっとこう……アゲアゲで行きましょうよ!」
「いや……むしろ何そのノリ」
「気持ち悪いわ……」
「……御免なさい!」
――
「で、何でこの場が未だに続いているんだ?」
「何かやることはあるわけ?」
「いや、まぁ、アレですよ。作者が結構楽しんでいるという事ですよ」
「なん……だと……」
「ただの自己満ね……」
「いや、でもやることあるじゃないですか。……では登場して貰いましょう、この方です」
「「お、お前は……」」
「――ドンッ――」
「いやいやいや」
▽
「……で、本当に呼び出しちゃったわけね」
「――――」
「きっと千姫さんがイタコ能力できっと呼んだんですよ!」
「――――」
「いや、私にチャネラーの術など無いんだが……まあ細かい事は気にしてはいけないな」
「――――」
「……いや、喋りなさいよ、貴方」
「……うむ」
「「「あ〜〜〜〜〜〜、もう!」」」
▽
『名前、生年月日その他諸々個人情報を提示して下さい』
「名は志藤玄朗。生年月日は1951年4月1日。年齢は28、血液型はA型だ。体格は……結構筋肉質だとは言われるな。髪は、短髪だな」
「お前……生まれた日すら虚だったのか。何かもう、運命づけられてるんだな」
「あ、眉毛が動いた」
「結構気にしているようね……」
▽
『趣味は?』
「ない」
「うわぁ……」
「盛り上がらねぇー」
「こういう人が飲み会にいたら困るのよね……」
「何か、ないのか……こう……な、何でも良いんだぞ?」
「ないな」
「「「うわぁ〜」」」
――
「んで、名前の由来なんだが」
「おお、恒例の」
「…………ないそうだ」
「ああ、そう……」
「ちなみに私の由来をここに述べようじゃないか」
「言い忘れたものね……」
「日本の神社・九十九神社、また日本神話に登場する女神・栲幡千千姫命より、だ」
「「へぇ……」」「……」
「だよなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
▽
『志藤を一言で例えると』
「石?」
「岩?」
「岩石?」
「――――」
「いやいや、皆ちゃんと考えましょうよ。流石に先生が可哀そうですよ」
「え、だって――――なあ?」
「え、ええ。……それ以外に何かあるの?」
「「「う〜〜〜〜〜〜ん…………」」」
「…………あ!」
「どうした、伊佐見」
「葛k――――むぐっ!」
「それは言っちゃいかん!」
「…………あ!」
「展開は読める! 止めてくれ、羽羅!」
「荒y「やめろおおおおおおおおお!」
「――――」
▽
「……え、今回一番酷くない?」
「だな」
「これも大してネタがないのに無理してやるからだよ。誰かさんが」
「――――」
「いや、別に貴方が悪い訳じゃないのよ?」
「……うむ」
「…………あ、そうだ、奥さんのことなんかどうだ?」
「あ、それ良いわね。どうなの、奥さんは。楓さん、だっけ?」
「うむ。楓か。彼女の良い所を挙げればきりがないのだが、そうだな、順々に上げていくとすればまず美しさだな、彼女の容姿をを超える人類など恐らく存在しないだろう、烏の濡れ羽なんていうありきたりな表現じゃ言い表せないほどの美しい黒髪に引き込まれそうなほど綺麗な宇宙のような瞳、ふっくらとした唇に絹の様に綺麗な肌にはほれぼれするどころでは済まないと断言する、だが当然彼女の美しさは外見だけではないのだ、その女性らしい心の在り方こそが彼女の美しさを物語っている、そうあれは雨の降った日、私達は二人でバスに乗っていた、あの日は二人で遊園地へと興じていた日でな、実に楽s――
(今回のネタはちょっと……もしかしたら不快に感じた方が居たかも知れません。もし感じられたら、申し訳ありませんでした)