暗転.堕ちた聖女と〝お父様〟
お久しぶりです(*゜ロ゜)!
第二部がようやく仕上がり、物語完結まで一挙放出する次第となりました!
最後までお楽しみいただけましたら幸いです( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )
こちら側と、あちら側。私とあなた、隔てる壁が割れてゆく。
硬く冷たい音を立てて、氷のように砕け散る。
床に散らばる欠片は光を吸いとり、星空のように美しかった。
そんな造りものの夜空から、小さな悲鳴が微かに聞こえる。
「……」
それは泣き声だった。それは恨み言だった。
ぶつける先のない人々の悲しみ。その上に私は、立っている。
「泣いてる……」
誰も悪くはないことを、私は知っている。
人々が理不尽な境遇に喘ぎ苦しもうが、そこに神の奇跡は起こらない。
「ごめんなさい」
神様、神様。どうか、どうか。誰もが〝神様〟に祈りを捧げた。
けれど、人々が祈る〝神様〟が何もしないことを私は知っている。
「ごめんなさい」
私は悪者。記憶を取り戻したあの日から、私は心に誓ったの。
私は悪者。だからそう、私にしかできないことがある。
「私がやらなきゃ、お父様は……」
全てはそう、優しい優しい〝お父様〟のために。
思えば私がここに来た日から、お父様はそこにいた。
私はひとりになってしまったけれども、決して独りではなかったのに。
「お父様は、どうして」
けれども私は、突然のひとりぼっちに耐えられなかった。
だからあの人は……お父様は、私の記憶を消してくださった。
「何もかもを許せてしまうの」
長い長い時を経て、私はようやく記憶を取り戻した。
お父様に似て高潔な、優しいあの子に出会ったから。
「お父様は、どうして」
その日が来たら、お前も一緒に連れて行こう。そうお父様は約束してくださった。
でも私には身体がないから、あの子の身体をもらえばいいのかな。
「理不尽の中でも笑っていられるの」
ああ、ついにその時が来たんだと。
長い長いお父様の苦労が、報われる時が来たんだと。
「ねえ、お父様」
私の役目は、お父様をここから解放すること。
鏡の中に囚われた、私にしかできないこと。
「じゃあ、あの人は一体誰なんですか?」
だから私は鏡を割る。
この厳重な封印を解かなくては。
「お父様のフリをしているあの人は、誰」
これ以上、お父様を傷つけないためにも――
読んでいただきましてありがとうございます!
楽しんでいただけましたら幸いです(●︎´▽︎`●︎)