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Story.001


季節は夏。

桜なんてとうの昔に散ってしまい、今では美しい緑を身にまとっている木々を横目に、一人の生徒が廊下を歩いている。


蝉がうるさく鳴いているが、校舎にはあまり人の気配はない。


たまに人とすれ違うが、カラフルなジャージを身にまとった生徒たちばかりだ。

朝練だろうか。


(運動部かな…)


佐倉なつめはぼんやりそんなことを考えながら職員室に向かっていた。

今日から新しく通うことになったこの高校は校舎が古く、所々寂れていたり、塗装が剥げていた。

それでもどこか奥ゆかしくて風情があるのはこの桜の木のせいだろうか。



職員室にたどり着き、軽くノックをする。


「失礼します」


ガチャリ、とドアを開けると、中にいた数人の先生から一斉に視線を集めたが、すぐに皆それぞれ自分の世界へ戻っていく。

その中で、一人だけまっすぐにこちらに向かってくる若い男がいた。まだ20代だろう、ふんわりした黒い短髪をゆらしながら、目の前で止まった。


「佐倉さんこんにちは。じゃなくておはようございます、か。まだ8時だもんね。ようこそうちの高校へ。これから佐倉さんの担任になる佐藤有希と申します。これからよろしくね。」


にっこり笑いながら、右手を差し出される。

その手をそっと握り返しながら、よろしくお願いします、と頭を下げた。



「うちのクラスは今39人いてね、だから佐倉さんが入ってきてくれてちょうど40人になるんだ。きりがいいからなんかいいことありそう。あ、今は夏休み中だから夏休みの宿題があるんだけど佐倉さんどうする?やる?」



これからのクラスやクラスメイトの話を聞いたり、夏休みの宿題、その他にも転校手続きなどについて一通り説明を受けた後、解放された時には時計の針は12時を指そうとしていた。


(急いで家に帰らないと…)


完全に話し込みすぎてしまった。足取り早く職員室を出て校門をくぐる。

途中でまた様々な色のジャージを着たカラフルな集団とすれ違うが、気にしている余裕はない。


完全に足が止まるころには、少し息が上がっていた。


「ただいまおばあちゃん、遅くなってごめんなさい!すぐに着替えてお手伝いするね」


「あらなっちゃんお帰りなさい。ゆっくり帰ってきていいのよ、汗びっしょりじゃないの。」


そう言いながら、調剤室と書かれた奥の部屋から一人の優しげな雰囲気をまとった老人が出てきた。

佐倉なつめの祖母である。旦那を亡くし、一人で調剤薬局を経営している。


待合室には患者さんが1人いて、声をかけられる。


「なつめちゃんこんにちは~。久しぶりね」


「あっ田中さんこんにちは!今日もいつものお薬ですか?今日は検査だったんですよね。どうでした?」


「うーん、ノーコメントで。」

記念すべき第1話~~


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