ドブ猫の痣
新聞紙を身体に巻いて
眠る三月の深夜
段ボールの風除け
見事に消えて無くなる
暴走機関車のような目が
点々と光る
一発の蹴りと共に
萎びれた動物
水飲み場まで辿り着く
一口の痛み
唾液とは違う
生きている味
麻痺して分からない
腹部の痛み
明日はきっと
動けないや
ドブ猫の痣
社会の片隅で消える
星明かりすら忘却した
時間の陽炎
燃えているのか
燃やされているのか
判断する前に
一声 鳴いた
横切った野良猫
彼奴の方が
立派だって思う
削られる関係も
日々の重圧も
その身で受け止めながら
生きていく事を
諦めはしない
時には逃げ出して
動けない動物
後は消えるしかない
烏達の注目
口煩い歌
神経を折り曲げる
出来上がらない
頭部の惨状
今からずっと
何もわからないや
ドブ猫の痣
社会の片隅で足掻く
非常口の灯り 点滅
次元の違う目線
消されているのか
消えさせられているのか
判断する前に
一口 空気を食べた
骨折音が響く
捲し立てる意識
行き先不明の身体を
洗い流す暇も無い
スピード操作
回転する道路
足跡は残るが
すぐに消えて無くなる
だから希望失調症
問われても説明は不要だ
残らない生き物が
最後まで
生きているだけだ
ドブ猫の痣
社会の片隅で浮遊す
街灯が逆立ちの練習
羽虫と落下する
自我交錯
回しているのか
回されているのか
判断する前に
一粒 自分を飲んだ
ドブ猫の痣
張り付いた身体
火をつければ
轟々と燃えるだろう
何の寒さから
身を守っていたのか
守る身などあったのか
要らない身体を捨てる
正しさがあるか
正しさなど無いか
判断する前に
一本 点火した