仕方ない。
『仕方ない』の言葉が口から出たら答えはふたつにひとつ。
やるか?やめるか?追いかけるか?諦めるか?のどちらかってのが僕の個人的判断目安。
深夜零時。お酒を飲めない僕は薄く入れたコーヒーとお昼に仕事途中で立ち寄った古本屋で表紙買いした小説をただただ瞼が重たくなるまでのわずかな間、右手の人差し指で文字列を飛ばさぬようにとなぞるように物語を追いかけるのが今日を終える寝付け薬のようなもの。そして18歳で覚えたタバコ。
いつもは5本、6本残っているのに今夜の残りは3本。寝付け薬が効きだすまでの間に3本は心持たない不安な心持である。どうか、今日の物語が退屈でありますようにと願いながら咥えた1本目に火をつけて煙を吐き出す。残りは2本。明日の朝の一服といつものコンビニまでの車内での一服は残しておきたいものだ。
つまり、本日は最後の一服の1本。当たり前だが吸い込めば火は灰になり火元は口元に迫る。
どうして夕方にもうひと箱買っておけばよかったのに。って後悔とタバコなんて止めたい。禁煙しようなんて考えながらもジャンバーを羽織って近所のコンビニまで買いに行く気にもならない。これが大学時代なら下宿の後輩を呼び出して買いに行ってこいなんて言っていたのだろうに。なんて身勝手とわがままがまかり通った時代を懐かしみながらフィルターまで灰に攻められた本日の最後のタバコはフィルターまでの葉をすべて灰にしてもみ消した時、有価物が発するタバコの匂いとは違う煙臭い臭いを残しながら灰皿でペッチャンコになるまで押さえつけてもみ消した。諦めると選択した。っていうかタバコを止めようと思った。
明日の朝、コンビニでいつもの缶コーヒーを握りレジに向かってアルバイトの女の子が背中に背負ってる棚の中にいつもの102番を確認してまた思うのだろうな。『仕方ない』ひと箱、買っておこうって。