code・0 プロローグ
漆黒
月明かりすらなく辺りは全てが消え去ってしまったかのように静まりかえっている。
いや。
もう消えてなくなってしまっているのかもしれない。
そうだ、きっと世界は消えて無くなったんだ。
「ハァ…ハッ」
短く呼吸を繰り返しながら考える。
無くなった世界。
消えた世界。
なら…どうして俺は逃げているんだろう…
だが、決して立ち止まる事はない
止まれば必ず追い付かれる
世界が無くなっても
何があっても絶対に立ち止まっちゃ駄目なんだ。
もうどれだけ走ったか分からない
大分息があがってきている
「ッ!!」
不意に殺気を感じて後ろを振り返る
…しまった
胸中で後悔しながらも立ち止まって動けなくなる。
「許さない」
そう冷たく言い放つ影はゆっくりと近づいてくる。
ヤラレル
ニゲロ
本能が警告を発するが身体が制御出来ない感覚
頭と身体が別のモノになってしまった様な
リンクしていない感覚。
そんな曖昧な感覚なのに脳だけはやたらとハッキリしている。
恐怖だけが俺を襲う
目の前にいる影の手がゆっくりと近付いてくる。
闇の中の影
闇が黒だとすれば影は何色だろう…
馬鹿げた事を考えながら影を見やる
影と目が合った気がした
いや合っているのだ
影と
影のソイツと
「許さないから」影は何度も呟く
まるで俺を殺す呪詛のように
「…でしょ」
影が何か言う
「た……でしょ」
次第にはっきりと
「私のプリン食べたでしょ!?」
あぁ…俺は殺されるんだな…
プリンで。
巻き起こる爆発の中なんだか悲しくなって静かに目を閉じた。