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虫の一生

作者: あ

短くてマジで痛いやつです。でも書いてしまった

男は虫だった。その身に計り知れない毒を持つ虫だった。


父を、兄を、弟のように扱ってくれた初恋の人を、夢を誓い合った友を、物心もつかぬ赤子を、宿無しと語った自分を泊めてくれた老夫婦を、命乞いをする少年を、この子だけはと叫び続けた女を、子供を、老若男女全てを殺した。


やれと言われたからやった。殺せと言われた者は全て殺した。


最初の一人は、父親だったナニカは泣いて、失禁すらして、世界のすべてを恨みながら死んでいった。


思えばその時向かい合った男も、泣きながら何事かをわめいていた気がする。


その喉元をかっ切る最期の瞬間、「すまない」と言われたのは幻聴か、記憶が擦り切れる程の数の死を浴びた男には、もはや思い出すことは不可能だった。


蟲毒というものは、男に力をもたらした。感情を抑制する術を、気配や音を消す術を、人を効率良く殺せる力加減、角度、殺気の使い方、とにかく数え切れない能力を男に与えた。男の持つ、それ以外の全てを殺して。


男は最後に己を地獄へと落とした張本人、正確には一人では無かったが、その者達を殺してからは世界を見て回ることにした。


その中で、世界の全てを恨むような眼をした少女を拾った。


とある名のある豪商に用心棒として雇われた時に出会った、その豪商の奴隷とでも言うべきものか。


その豪商の元にいた女はみな齢十三、四ほどで、おおよそ感情というものが抜け落ちた眼をしていた。


豪商は特殊な性癖をしており見物人がいる中での行為を好んでいたので、毎回護衛も兼ねて男を部屋に引き入れてから情事に励んでいた。


男は、よくもまあ肥え太った体躯のくせに毎晩励むなあぐらいにしか思っていなかったのだが、やがてはっとする事があった。


ほとんどの少女が既に心が壊死したのか豪商に従順であるのに対し、一人だけ何度交わろうとも必死で抵抗し、殺す殺すと叫びながら組み伏せられる少女がいた。


それが(しのぶ)との出会いだった。


こいつが欲しい、思い立ったら行動に移すのはすぐだった。


一晩のうちに名のある商会が1つ消えた。百を超える人の死骸を前に、たかが一人の少女の行方不明など誰も気付くことはなかった。


元々もう人殺しはしないと決めた訳でもなく、ただなんとなく殺さなかっただけだったので実に半年ぶりの人殺しにも男の心は何ら変わらぬままだった。


それから拾った少女には己の持つ総ての技術を教え込んだ。


彼女はまだ殺したい相手がいる、と常々話していたので殺しの技を教えてやろうかと問うた時には喜んで頭を下げた。


忍はどうやらその道の才能をもっていたらしく、みるみるうちに男の教えたことを吸収し自分のモノにしていった。


あれから五年経った今、男から見てもハッキリわかるように成長した少女、忍は美しくなった。そして、(いびつ)ながらも男は忍を愛していた。


男は、己が愛する女を見て微笑んでいた。胸に刺さっている小刀のことなどまるで無い物のように思わせる穏やかな笑みであった。


「お師匠様、私貴方のことを一人の男性としてお慕い申しておりました」


穏やかな口調とは裏腹に、歯をガチガチとならし涙と鼻水でグシャグシャになった顔で言う彼女を見ても、憎しみや負の感情は全く湧いてこない。


ただ一言、己の擦り切れた感情の、それでも万感の思いでの一言。


「ーーーー。」


少女は男の胸に刺さった小刀を抜き、自分に刺した。


おわり

書くのは楽しいけど、虚無感と自分痛い奴だな感が凄いのでこういうのあまりオススメしません。

あと母親はどうしたとかいつの時代の話だよとかどんな状況だよとか忍はどうして男は殺したんだよとか聞かれても答えられません。考えてないから。全部テキトー。

それと、最後が少女になってるのはミスとかじゃなくて仕様だから(小説家の風格を感じさせる顔)

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