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闘神の御娘(旧)  作者: 海陽
4章 1部 首都アトゥル
93/115

4-15 地図とお菓子と癒やしタイム

〈……シノブ、今日の話はどこまでが本当のことなのだ?〉


故郷くにのこと?』


〈うむ〉


今日の仕事が終わって、屋敷の自分の部屋に戻って来た時に掛けられた皇雅の質問。ずっと屋敷待機だった白貴の労いをもらい、部屋に篭った。『暫く4人でのんびりしたいので』とヒードさん達には部屋に来ないようにお願いしてある。ちょっと申し訳なく思いつつ、そっと扉の鍵も掛けました。いや、ほんとすみません……。でも聞かれるわけにはいかないんだ、異世界(日本)のことなんて。


〈主殿。その様な紙をどうするつもりだ?〉


そう、私の手には大きめの1枚の紙。丁度A4ノートを開いたのよりも少し大きめの。ヒードさんに頼んでもらったものだ。ちゃんと使い道はあるのですよ?うん。


『簡単な地図を描こうと思って。縮図のやり方は詳しくないからあれだけど、大まかなら描けるからさ。……この世界のじゃないよ?私の世界の方』


〈ふむ。そう言えば母国は極東にあると言っておったな。それは正しいのか?〉


『うん、それも説明するね』


ミイドさんにテーブルの上で紙を押さえてもらって、まず描き始めたのはユーラシア大陸。流石に細かい海岸線とか、国境線だのは描けないから図形を元にするんだけど。で、次にアフリカ大陸。太平洋挟んで北アメリカ大陸と南アメリカ大陸。南アメリカとアフリカの間にはオーストラリア大陸で、紙の両端は大西洋、インドの近海はインド洋、と。ずっと南に南極大陸。北には北極。あとはインドネシア諸島をちょっと適当だけど描く。そして最後に日本をユーラシア大陸の東にちっちゃく付け足す。あ、ちゃんと北は北海道から南は沖縄まで描いたよ!もちろん。流石に諸々の無人島は無理です。描いた地図は、日本が真ん中に来る描き方をした。1番憶えてるのそれだったし。


『こんなもんかな』


ふうとちょっとした達成感に浸っていると、皇雅と白貴、ミイドさんはしげしげと地球の世界地図を覗き込むように眺めていた。……あ、方位書き忘れてた。空いた白間に北を上に時計回りで東、南、西と更に付け加える。オリネシアの地図は地球とは逆向きだ。初めて見たとき、びっくりしたのを憶えてる。あと大陸の少なさにも。というか大陸っていっても1つだけだよね、島はあるけど。


〈これが主殿がいた世界か〉


『なんかごちゃごちゃしてるんだな』


ミイドさん、ごちゃごちゃって……。まあオリネシアに比べたらそうかもしれないけどさ。


『地球には大陸が6あって、それぞれユーラシア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、南極大陸って呼ばれてるんだよ。本当は無人島とか細々とした島とかたくさんあるんだけど、そこまで詳しくは知らないんだ。同じユーラシア大陸の中でもヨーロッパ、アジア、中東って別れるし、他の大陸もそう。詳しい国境は分からないけど、確か195の国があったはず』


〈何?そんなに多くの国があるのか、主殿〉


『……195?』


〈何と〉


あ、今度は目が点になってる。


『ユーラシア大陸の中には島国も含まれるんだけど、この大陸は国が多過ぎるから説明は難しいかな。でも例えばオーストラリア大陸は、この大陸1つで『オーストラリア』って国。近くには『ニュージーランド』って島国があるよ。こっちの北アメリカ大陸は『アメリカ』『カナダ』の2ヵ国。『カナダ』を挟んだここは『アラスカ』って言うんだけど、これも『アメリカ』。飛び地の領土なんだ。南アメリカ大陸とアフリカ大陸はちょっと憶えてないから説明は無し』


〈……シノブの国はどこなのだ?〉


え、あれ?皇雅なんかぐったりしてない?何で?!


『日本はここ』


とんと指でちっちゃな日本をつつく。つついた瞬間に『は?』って胡乱な表情になるのはやめて!


〈世界の中では本当に小さな国なのだな、主殿の国は〉


『うん、小さいと思うよ。でも生活水準とか経済は世界でも上位にいる。日本は先進国だから。

さっき言ったユーラシア、北アメリカ、南アメリカ……っていう大陸名は大まかな分類で、日本はユーラシア大陸に属してる。オリネシアとは違って、私の世界では北が上に来るんだ。で、ユーラシア大陸の中では日本は1番東の国。だからあの時『極東に存在する』って言ったの。閉鎖的な国政は敷いてはいないよ。他国の人だって国内にたくさんいるし、他国に住んでる日本人だってたくさんいる。一度国を出たら帰ってこれないなんてことは無い。海を渡った他国に行く手段なんてたくさんあるし、戻ってくる手段もそう。日本の物作りの技術は世界から注目を集めることもあるから、忘れ去られるような国でもないし』


〈時には嘘も必要、ということなのだな〉


『うん。だってさ、皇雅や白貴は獣神だから理屈云々以前に、私が異世界の人間だって分かるんだし。ミイドさんは受け入れてくれたけど、他の人もミイドさんみたいに包容力ある人ばかりではないと思う。そもそも異世界のことを、どうやって説明すれば良いのか分からないし』


正直、異世界である自分の世界を説明することがこんなに大変だとは思ってなくて。説明力低いと思うんだよ、私は。そもそもこんな事になったのは陛下がいきなりやって来てあれこれ聞くからであって。……ああ、癒しが欲しい。休みたい。けど、その前に。


『ミイドさん』


『うん?』


『燃えにくい受け皿って持ってない?』


『燃えにくい……?いや、ないな』


やっぱりないかぁ。なら仕方ない。頼みに行こう。私は地図を内側に四つ折り以上に折り曲げて着物の懐に入れた。このオリネシアの中衣ってさ、結構便利なんだよね。襟の内側に大きめの内ポケットがどの着物にも標準装備されてるっていうのが。






そうして突撃した厨房の料理人さん達は、いきなり現れた私にびっくりはしたものの歓迎してくれた。料理長のアルヌさんはこっそり今日のおやつに、と作っていたお菓子を味見させてくれた。今日もめちゃくちゃ美味しいですアルヌさん。


『シノブ様は何でも美味いって喜んでくれるからな、こっちも嬉しいんだよ』


アルヌさんはミイドさんより年上だけど、ヒードさんよりは年下の明るい人で、私が頼んだらあっさり敬語を外してくれた人だ。というか本人も敬語が苦手だそう。そういう性格だから、と一言で片付けられたけど。まだそんな年じゃないけど、好好爺って感じ。

で、訪れた理由を伝えると、深くは聞かずに『良いぞ』だって。やったね。そうして異世界(地球)の地図は、無事消し炭になった。


『え、良いの?!アルヌさん』


『良いぞー、持ってけ。んで、感想聞かせてくれ』


『ありがとう!』


帰りはアルヌさんの新作お菓子を手土産に、部屋へ帰還。皇雅と白貴が『我はいい』と言ったから、ミイドさんと2人で食べた。……新作は、羊羹でした。懐かしいやら美味しいやらで感慨深かったなぁ。久しぶりに食べたよ、羊羹。後でお礼言いに行かないとね。で、癒しタイムですよ。


『白貴』


来て来てと手招きして白貴を呼んで、敷物の上で獣神姿になってもらう。そしてそのまま彼に寄り掛かって仮眠する。ミイドさんが『床の上で寝たら風邪ひくぞ!』と何だか焦ってた気がするけど、大丈夫……白貴、いる……し……。




もふもふふわふわな毛皮の魔力であっという間に夢に落ちて、起きたのは2アルン(2時間)後。いつの間にか毛布が掛かってて、床の敷物の上から寝台に移動していた。丸まった白狼姿の白貴に包まれた状態で。メリダさんが部屋に様子見に来たのが起きて数アド後(数分後)だったから、白狼姿はぎりぎり見られずに済んだ。ああ良かった。

……次に白貴のもふもふふわふわ堪能出来るの、いつになるのかなぁ。はぁ。

アルヌさんは最低限の敬語は出来るけど苦手で、親しい人とは砕けた話し方をする人。でも伯爵家で雇われているくらいなので料理の腕はとても良いんです。最近は菓子の新作製作や腕磨きが専らの考え事だとか。理由は気に入ってる忍が食べてくれたときの笑顔が見たいから。

ユーラシア大陸、北アメリカ大陸云々はうろ覚えの知識です。間違っていたらすみません。

忍がオリネシアに来て3年目の繁生。20歳です。

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