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闘神の御娘(旧)  作者: 海陽
4章 1部 首都アトゥル
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4-11 今度は何?

言われるがままに『試し』なる試験を受け、ダウエル様を筆頭とする国財管理の部署に勤める事になった。というかあれ、中学3年でも解けるよ?簡単過ぎる問題だったのだけど……言えない。言えるわけがない!他の貴族の方々の話を聞いて、あれが日本でいう名門大学レベルの難問なのだと分かってしまったから。態々余計な事を言って、人間関係を悪化させる気はないです。


『ミイドさん……あれ・・は門外不出ということで』


『もちろんだ。あれ・・は漏れると大変なことになるからな』


ミイドさんとは、あの日屋敷に戻った後に部屋でこっそり意思確認をした。うん、流石はミイドさん。隠語でも1発で理解してくれた。『あれ』というのは東地方の森で彼に教えた掛け算と割り算、その2つの筆算のこと。彼だけでなく数百年以上生きてる皇雅と白貴にも確認したのだけど、掛け算割り算はオリネシアには存在していなかった。筆算自体はあるらしいけど、足し引き算限定のものだったし。


図らずも部署1番の算術の腕を持つことになってしまった私の勤務机は、ダウエル様の近くにある。言わずもがな、2番手はミイドさんですよ。もちろん……もちろん?いや、これは彼の努力の賜物だからね!私の教え方下手くそだったしさ。それで何でダウエル様の近くかというと、大まかに誰がどこに陣取るかの配置が決まってるのだそう。基準は算術の腕。部署の長であるダウエル様に近ければ近い程、算術が得意であるというわけ。ただ1番の理由は、ダウエル様自身が心配だからそばに居させたいということらしいんだ。……何が心配なんだろう?一応柔道黒帯なんだけどなぁ。






で、だ。これは一体どういうことなんでしょうか。


『おい。聞いているのか』


『……』


『こちらを向け、私が声を掛けているというのに』


……何でしょうかね、これは。他の先輩方もそうだけど、私も勤務中なんだけど。というか新入りだから早めに実績作っておきたいのに。とは言いつつも目の前で度々声を掛けてくる彼を無視するわけにもいかず、1枚書類を終わらせたところで私は顔を上げた。


『ご用命でしょうか、ミドルトリア様』


『用が無ければ声を掛けてはいけないのか?』


『……いえ』


あの日の貴族だ平民だの一悶着から、何故か彼は私にちょくちょく会話を持ちかけてくる。この人、私のこと嫌ってんじゃなかったっけ?嫌いなら何でわざわざ自分から声を掛けてくるんだろう。変な人。


『グリフィス、シノブ殿の職務の邪魔だろう。お前は終わったのか?』


……先輩、ありがとうございます。

窘めてくれた先輩の貴族にぺこりと黙礼しておく。彼、ミナト・ルェン・ハイートルード様は伯爵子息だったはず。ミナトって日本人っぽい名前なので、私が勝手に親近感を抱いてたりする。もちろん本人もとても友好的な人なので頼れる先輩。本人曰く、『僕は次男なんだよ。だから気楽に接してくれると嬉しい』だそうだ。イーニス様とも親交があるみたい。あれかな、類は友を呼ぶ?穏やかな人のそばには穏やかな人が居るよね。私としてはとても有難いです。


『ミナト様。大丈夫です、丁度区切りもつきましたし』


『……そうか?なら良いんだが』


ありがとうございます、いやほんとに。もう1度黙礼を軽くして、書類をダウエル様に持っていくことにした。ミドルトリア様の相手はそれからだよね。


『ダウエル様。今月分の集計と来月の予算のまとめになります。こちらは西地方、これが東地方になります。南地方も問題はありませんが、北は文官が不在の為にまだ確定していません。……それから、北の元文官の資産が少しおかしいかと』


『何?元文官の?』


『はい』


地方ごとに仕分けした書類をダウエル様に提示しつつ、気になったところを報告してみる。いや何かね?申告された資産額に税収額と国の指定してる王家への納税額がさ、ずれてるんだよね。シン国での100万単位の金額って、日本為替で千万の位に相当するらしい。

因みに国王陛下の、要は国庫にある金額は九千万に上る。つまり日本円額では数千億で、侯爵位は大体一千万前後。伯爵はその家によるけど、900〜数百万。次いで子爵は数百〜100万、男爵は言わずもがな100万以下。とは言ってもこの国で100万以上は豪商を除き貴族にならないと手に出来ない程の額らしいから。日本の感覚で考えたらアウトだよね、うん。何故か億兆の単位が無いけど、それは気にしない方向でいきますよ。十数桁までいくと流石に暗算出来ないし、珠算だってそろばんがないとやり難いし。今終わった書類の中には、過去の精算的なものも含まれていた。もちろん東西南北全ての地方分。いやー、東地方は関所が少ないからとても楽だった。


で、だ。話を戻すけども、その元文官というのが何を隠そうあの男、ダミエ・ドル・グルヴェ準男爵だった。……いや、うん。思い出して嫌悪感が甦って来ちゃったけど、屈したら負けだ。あいつダミエなんかに負けるなんて絶対嫌だ。



『北の文官は……誰だったか』


『ダミエ・ドル・グルヴェ準男爵です、ダウエル様』


『……準男爵?いやまて、四大文官になれるのはせめてでも子爵からのはずだ。何故グルヴェが?』


ああ、やっぱりかとダウエル様の言葉に確信した。ストの関所での出来事が脳裏を過ぎって、ちらっとミイドさんを見ると、彼も私と同じ事を考えているのだとわかる表情をしていて。


『……グルヴェ準男爵は、自身より上位の貴族に媚を売りのし上がったのではないかと思います。実際に文官でしたので』


『シノブ。……彼に会ったことがあるのかい?』


『北地方のネイアで1度、同じくストで1度会っています。どちらも悪印象しかありませんでしたが』


いかん、どんどん声が低くなるのが止められない。あの気持ち悪い顔、折角忘れてたのに!落ち着け、落ち着けと心の中で唱えつつ、私はそっと深呼吸した。……どうして皆の視線が集まっているのかな。仕事は良いのか、仕事は。特にミイドさんとミドルトリア様。いや、ミナト様もか。はぁ。

ミナト・ルェン・ハイートルード伯爵子息については、更新報告で追記あります。


http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/297806/blogkey/1047068/

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