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闘神の御娘(旧)  作者: 海陽
4章 1部 首都アトゥル
80/115

4-5 大所帯になりました

『……』


「どうしたんだい、シノブ』


現在、ぱかっと口を開けた私の目の前には和かに微笑むイーニス様がいる。それは良いよ、ハイドウェル家の屋敷だからね。住んでる当人が居るのは当たり前だ。問題はそこじゃない。


『イーニス様。……その格好は、一体?』


『ん?あれ、似合わない?』


いんや、似合ってますよ?似合ってるけど。と言うか目上の、それも身分も上の人の服装の似合う似合わないなんてあれこれ言えるわけないけどさ。


『何故、旅装をしているのですか?』


『僕もシノブの遠出に付いて行くからだよ?』


へ。……ええ?!

いやいやいや。あれ冗談じゃなかったの、ダウエル様?!護衛のけい達もなに『当たり前だろう』って顔してるんですか!


『酷いなシノブ。父上から僕も行くと聞かされていたはずだろう?』


『冗談だと……』


『残念、本当だよ。さあ、シノブも準備を進めておいで。明日には出発するのだから』


イーニス様は『悪戯は成功だね』ってそれは嬉しそうな顔してるし!……そうですか、確定事項なんですね。はあ。そもそもこの事の発端は私の『東地方の森にまた行きたい』の科白。どこから漏れたか、ダウエル様が知って知らない間に許可を貰ってくれたんだ。……そこまでは良かった。『ああ、この遠出にはイーニスも同行するからそのつもりでいて欲しい』と何でもない事のように言われなければ。幾ら護衛が居るとしても万が一ということもあるからもちろん反対もしたし、第一イーニス様に何かあったら私1人じゃ責任取れない。なのに結局押し切られてしまったのだ。『シノブを護る為でもあるし、イーニスの為の護衛でもある』ときっぱり言われてしまえば、もう何も言えやしなかった。





翌日。


『白貴。流石にイーニス様と護衛付きじゃ一緒には行けない。だから、先に森に戻ってて貰ってもいい?』


〈我も主殿と共に居たいのだ。……だが、今の我ではそれは拙いのだろうな〉


『うん、白貴が2神目の契約神だとはまだ知られたくない。いざという時の強みにしておきたいんだ。それに白貴も私達が着くまで家族団欒が出来るし、森でまた会うことも出来る。……ごめんね』


〈主殿が謝ることはない。我も主殿が考えている事は理解出来るからな。寂しいが、暫し別れることにしよう〉


準備の為と部屋へ戻り白貴と話せば、余り表情が動かない彼が珍しくふっと笑った。……イケメンめ。思わずどきっとしちゃったじゃないか。森で会う時も獣神の証である深紅の瞳は隠す事などを確認し、白貴が白狼の獣神姿へと戻る。久し振りに見れた相変わらずのふわふわもふもふの巨大白狼を撫で回し愛でた。あのふわもふは堪らないよね、やっぱり。


〈では我が森に戻る許しを〉


『うん。先に戻って』


鼻面で私の頬をひと擦りすると、白貴はその場から消えた。


『それじゃ行きますか。ミイドさん』


『そうだな』


ミイドさんと皇雅と一緒に屋外のうまやへ向かう。ミイドさんが手早く愛馬の準備を整えると、皇雅も獣神姿へと変わる。こっちも久々に見る姿でとても懐かしい。馬尻にダルムの職人さんお手製の固定具を付けてマトルやバムハ、その他旅道具を載せた。


『久し振りの騎乗かぁ。落ちないようにしなきゃね』


〈シノブならば心配など無用だろう。身体に染み付いた動作というものはそう簡単に抜けぬのだから〉


『そんなもんなの?』


『そんなもんだ』


ミイドさんのお墨付きなら大丈夫か。さあ、イーニス様達と合流しないとね。






『ああ、シノブ。準備出来……』


かぽ、かぽと鳴る皇雅の蹄の音に気付いたイーニス様が館の門前で振り返ったけれど、その科白は尻窄みに消えた。目を丸く皿のようにして見つめる先には隣に佇む皇雅。え、何、何でそんな驚いてるの?


『……シノブ?その馬は、』


『イーニス様、皇雅です。いつも一緒に居るじゃないですか、焦茶の髪をした人型の獣神が』


『いや、『いつも居るじゃないですか』って……馬神とは知らなかった』


イーニス様の呟きに、皇雅は〈如何いかにも〉と1つ頷いた。


〈確かに我は馬神である。だがこの肢体では屋敷内でシノブと共に居れぬからな、人型を取っておったのだ〉


『イーニス様、皆様が騎乗する馬より大きいだけと思えば良いんです。お気になさらず』


『いや、シノブ……獣神だよ?それよりも、何故獣神姿なんだ?荷まで載せているようだけど』


『私が乗るからです!』


当たり前じゃないですか!皇雅に乗らなかったらどうやって長距離移動するんだ。というわけできっぱり言い切りました。


『『はあ?!』』


おお、イーニス様とけい達の声が重なったよ。そんなに驚くことなのかなぁ。……出発しなくて良いの?とそれをざわざわしてる中でミイドさんに目で尋ねたら、苦笑された。

それから少し騒がしかったけど、無事出発出来ました。騒ぎの元は主に皇雅に乗るかどうかの云々うんぬんと、荷物が少ないだのどうので。いや、そりゃイーニス様より少ないのは当然だと思うんだ。そもそも衣だって手持ちは少ないし、畳み方によってはかなり小さくまとめられるし。でもちゃんと2、3着は持って来てるよ?因みに今の私の着物ふくは民が着る短衣。イーニス様だって旅装だとは言え、やっぱり貴族っぽい高価そうな感じ。荷物に関しては、まあ皇雅が馬としては規格外な体躯だから尚更少なく見えるんじゃないかと思う。うん。食料はダウエル様が全部用意してくれた。有無も言わせてはもらえなかったけど……まあ旅費が浮いたから良いのかな。


それからけい達にこっそり頼んで、あの公開模擬戦で使った棒を護身用に借りたのは余談だ。ほら、自分の身は自分で守らなきゃね!

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