3-3 不思議な生態系
『……』
〈今度はどうしたのだ、シノブ。また何か見つけたのか〉
数日前に竹……もといバンブーラを見つけてから、直々知ってる植物を見つけるようになった。やけに皇雅やミイドさんの愛馬トゥラが足元を見てるなーと思えば栗のイガだったり、大木の苔に混じってなめこが生えてたり。日本じゃ赤松の根元に生えるらしい松茸が、何故か普通に群生してるのを見た時は本当に驚いた。
……おかしい。四季とは言わないけどさ、オリネシアにだって薫花とか繁生とかの季節あるよね?季節の旬を無視してません?と言うか今繁生の季節だよ、何で紅涼のもののはずの栗が落ちてるの?!……まあ美味しいから良いけどさ。
で、だ。
冒頭の皇雅の科白。私はまた見つけてしまったのだ。この世界に来て初めて見つけたんだ、ハーブを。しかもこれって。
『レモンバームだよね……』
濃い深緑で肉厚の葉、紫蘇っぽい鋸歯。極め付けは指腹で擦ると香るレモンの香り。うん、レモンバームだ。
『その葉がどうかしたか?』
またまたいつの間にか隣に居たミイドさんに、1枚採って彼の鼻先へ近付ける。んん?と片眉を顰めた表情に笑った。
『何だか匂うな……レンモールの香りによく似てる』
『レンモールって蜜柑の仲間の果物の?』
『そう、あの黄色い奴の匂いだ。何でこの葉からレンモールの匂いなんか……』
『じゃあこの植物に名前はないんだ?』
『ないな』
おお、即答。断言したね、ないって。ならオリネシア……うーんシン国では、かな?ハーブの概念は無い、ってことか。
『シノブさんは知ってるのか?』
『日本ではレモンバームって名前なんだよ』
『れもん、ばーむ?』
発音がおかしい。まあレモンバームなんて単語が無いから当然か。
『レモンバーム。葉っぱを擦るとレモン……んーと、レンモールの香りがするでしょ?だからそんな名前が付いたんじゃないかな。日本じゃレンモールはレモンって名前だしね』
興味ありげに見てくる皇雅の鼻先にも持っていくと、〈む、〉と呻いて素早く鼻先を逸らした。その様子が可愛くてついつい笑ってしまうと、かぷっと頭を齧られた。まあ甘噛みで痛くもないけど。
レモンバームはハーブティーでもいけるし、精油にも出来る。とは言っても精油は採れる量が少ないから高値だけど。ハーブウォーターもOKな植物。種蒔いて水遣りして、放置すればすくすく育つというこのお手軽ハーブは女子には嬉しい効能があり、なんと虫除けになる!なので早速ハーブウォーター作ってみようと思います!だって目の前に大量に繁ってるし。
何でハーブに詳しいのかと言うと、じいちゃんの家の書庫のせいで。書庫と言う名に相応しいとんでもない量の本があって、私は良く入り浸っては読破していたんだ。特に図鑑系だけどね。植物系は複数回は読み直してます、ええ。じいちゃんの庭が探検にはぴったりだったんだもの。今でも思う。あの庭何十坪あるんだろうな、と。それくらい広かった。
お陰様で今現在、オリネシアで非常に役に立ってます!
さあ、ハーブウォーター作りだ!
マロート:栗。
ナコ:なめこ(ナマコじゃないよ?)。
レンモール:檸檬。
オレジ:蜜柑。
ハーブウォーターに関しては私もうろ覚えですが、ご家庭でも簡単に出来る方法があったはず……更新報告で。
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