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闘神の御娘(旧)  作者: 海陽
2章 北地方
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2-33 ストには行かないの?

んで、結局。ストに着く残りの2日もミイドさんが不寝番みはりをしてくれた。今日こそは、と毎回思うのに彼と話してると心地良くて眠気が襲って来るんだ。彼の声音はあれだ、うん。魔法の声だ。不眠症の人にはうってつけの薬だよね。まあ私は不眠症ではないけども。


『うー……悔しいなぁ』


『何が?』


『1回も不寝番みはりやってない』


皇雅と彼の愛馬、並んで歩を進めながらぶつぶつ。不満を聞いたミイドさんが苦笑した。


『女性は男に甘える事が当たり前なんだが……シノブさんは変わってるな』


『それは、ほら。しょうがない。日本では男女問わず自立してることが多かったし』


私も高卒後を考えて自立出来るようにって一応ある程度準備はやってたし?……炊事だけは壊滅的だったけど。


『まだまだ旅路はあるんだ。そのうち1回くらいは譲ってやるから。な?』


彼にそう諭されて渋々承諾する。だけどそれ、いつになることやら。まあ、ミイドさんから敬語を取らせる事が出来ただけマシとしておこう。うん。これから3人で旅をするのに、ずっと年上で地位もあった彼に敬語を使われるのは非常に居心地が悪いのだ。それを懇々と説いて結果、私が勝利しました!


彼と皇雅は私が女子だって分かってるけど、初めて会う人は多分違う。髪は切らずに伸ばしてるものの、今だに肩にもつかない長さだから多分男に間違われるに違いない。で、もし女だとばれた時、変な勘繰りを入れられると反応に困るんだ。先ず恋人ではないし、上司と部下って関係でもないから。だから兄弟、いや兄妹……まあどっちでもいいけど家族ってした方が良いってことで、なら兄が弟(妹?)に敬語っておかしいよね?って説得したんだ。因みに兄弟案はミイドさんが言い出したんだよ。言い出した本人が複雑そうな顔なのは謎だ。でも敬称さん付けだけは止めてはくれないらしい。そして私も敬語を外せと来たので、 お互いに敬語を外した上記の会話になったってわけです。



〈……〉


『ん?』


不意に皇雅が歩みを止めた。耳が後ろに伏せられていて、じっと前方を見据えたまま動かない。


『どうかした?皇雅』


〈あれがストの関所なのだが、通るは避けた方が良いかもしれぬ〉


何で?……確かに関所の城壁っぽいの見えるけど。


『獣神様、理由をお尋ねしても?』


〈……良からぬ気が流れて来るのだ。行けば厄介事に巻き込まれると我の直感が告げている。特に……シノブにとっては〉


ちらりと私へ視線を投げる皇雅に続き、その科白にミイドさんまで私を見てくる。な、何で私?!


『それは……争い事が起きている可能性があると?』


〈うむ〉


『……』


かぽ、かぽと歩を再開した皇雅だけど、その歩みは酷く鈍い。そんなに気が進まないのか。ミイドさんまで黙り込んじゃったし。


『……ミイドさん?』


難しい顔の彼に声を掛ければこっちを見てはくれるけど、その表情は硬いまま。


『シノブさん……ストに寄りたいか?少し離れるが、トーラの関所へ進路を変えたいんだが』


『え、ううん。必ず寄りたいって程でもないよ。……争い事って、何?抜剣して戦わなきゃならない事が起きてるってこと?』


『その可能性が高い。……俺も獣神様も考えるのは同じなんだよ。シノブさんには戦わせたくない。シダ村の時のような事になるんじゃないかって考えてしまう』


『……』


もし、本当にそんな争い事が起きてるなら助けたい。若しかしたらストに住んでる人達が危ない目に遭ってるかもしれない。でも私には前科がある。その心配が2人の重荷になるなら……私に是非を論じる余地は無いんだ。あの不思議な声に救われたとは言っても、万が一にも同じ事が起きないと断言は出来ないのだし。


『トーラまで食料や水は保つの?』


『それは俺がどうにかするさ。あと3日程野宿だけどな』


『そっか、ならトーラにする。……ストの住民を思うとちょっと心苦しいけど』


『悪いな』


だいぶストの関所に近付いていたけど東へ進路を変えた筈だった。けれど。



……神様は随分と意地悪らしい。

神様とは言ってますが、忍は強い宗教信仰は持ってません。強いて言えば仏教だと思われます。

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