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闘神の御娘(旧)  作者: 海陽
2章 北地方
35/115

幕間-1 年上男の初恋

ミイド副隊長side

見事な、という単語が相応しい。

華奢だがこのダルムの女性達の中では少し背が高い方の彼女は、昼頃に隊長が連れて来たかの旅人だ。女性の身ながら獣神様の契約者ということにも驚いたが、連れも居ないと聞き再度驚いた。更に棒術なる槍術に似た武術を少し披露してくれた上、部下達の手合わせの頼みにも不快な様子もなく是を示してくれた。


まるで舞を見ているのかと錯覚した。足取り軽く地を蹴り跳躍し部下を伏せさせていく。そんな美しくさえ感じた彼女の攻撃技は、自分達では追視が精一杯で何の技なのかすら判断出来ない。彼女は棒術を祖父から師事したと言った。だがあれは棒術ですらない。恐らく、いや確信を持っても良い。別の武術も会得しているのだろう。何故女の身で。何故、その祖父は彼女に棒術を伝授したのか。


聞きたい。そして知りたい。今までどの様な生活をして来たのか、彼女自身の事を。成人をとうに越え、30の齢になった今になってどうして気になるのだろう。会ったばかりの旅人に、しかも成人前のたった17の娘に!


設けた制限時間も無意味に、手合わせが終わったのは夕方。しかも勝者は彼女だった。常日頃から武を鍛え、更には大勢で1人に向かって行ったのにも関わらず、勝ったのは彼女なのだ。何て情けない。明日からみっちり鍛え直してやらねばなるまい。そう思う同時に、散らばる部下達の中央で事もなげ立ち微笑を浮かべる彼女に、また少し胸が憂いた。



***



彼女が希望した水浴びが終える頃を見計らい、彼女を探して笑みが漏れた。女では先ず見ない短髪を乱雑にわしゃわしゃと布で拭く姿が何故か可愛くて。幾つか言葉を交わしながら、俺の髪を拭く手に大人しくしていた彼女の言葉に耳を疑い手が止まる。


『学問が義務』、『学問を修学した』。

そして聞き慣れない『こうこうせい』という語。馬鹿な、有り得ない。学問は貴族以上の者にしか与えられない知識ものなのだ。商人ならばまだ分かる。俺や隊長(底辺の官職)ですら簡単な読み書きと計算しか出来ないのに、何故?!

目の前の彼女が何者なのかと真剣に考えてしまう。……が、考えた所で知りたい事が増えただけ。


不意にはっと気が付けば、ずり落ちた布を肩に引っ掛けたままの彼女が恐る恐る後退りしていた。その顔は俺を見ているがぎこちない。まるで、苦手なものから遠退こうするように。慌てて尋ねれば『なんでもない』と首を振る。近付こうとすれば更に後退りの速度が上がり『大丈夫ですから!』と猛烈に首を動かした。何が大丈夫なんだ。どうして俺から遠ざかる?さっきまであんなにそばに居たのに。


次の瞬間彼女は駆け出した。その場に布を、俺を置き去りにして。……まだ何も聞いていない。何も知れていない。俺はあなたのことが知りたいのに!


ぎゅっと地を踏み締めて俺は彼女を追うとそれを感じたのか、彼女は必死になり出した。湿ったままの髪など気にもせずに。どうして逃げる?!さっきまで普通に話して居たのに……っ。思考していた間に彼女の様子が一変したことには気付いていたが、それを問おうにも彼女に追い付かなければ話を聞くことすら叶わない。


『あなたの名前すらまだ知らないのに……!』


隊長は知っているのだろう。彼女が隊長ダス・イルゥダの名を知っているということは、つまりは名乗り合ったとそういうことだ。逃げられたくない、俺の事も知って欲しい。そう思って追い掛けるのに、もう少しという所で彼女は俺の手から逃げ果せる。伸ばした腕側に急回転し、詰所内をひたすら駆け回る。……手合わせ後なのに何て体力なんだ!


彼女には未知な部分がまだまだ多い。

長くなったので分けます。

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