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闘神の御娘(旧)  作者: 海陽
2章 北地方
28/115

2-18 言い訳無用

『ひ、』


『はぁああっ!』


素早く肩に極近い二の腕を掴み、彼を背負い上げつつ地面へと投げる。伊達に柔道黒帯所持してませんからね!舐めるなっ。

気合声が出るのはまあ、武術やってるさがって事で。掛けた技は一本背負い投げ。柔道知らない人に掛けるにはちょっと手厳しかったかもしれないけど、有無を言わさずいきなり攻撃された私は悪くない……はず。


ズダンッと地面へ叩き付けられた痛そうな音と同時に、呻く彼を見下ろしてにっこり宣言する。


『はい、お終い』


ぱんぱん、と手をはたいて皇雅に駆けよれば、今のは何だと問われた。


「柔道の一本背負い投げって技だよ」


〈じゅうどう?〉


眼を瞬かせて皇雅が見る先には、兵士に心配される彼が居て。


私の世界(地球)にある武術で、趣味でやってる人もいるし本職としてやってる人もいるの。体術の1つかな」


〈ほう……体術の一種か。やはりシノブは面白い女子おなごだな。見ていて楽しかったぞ〉


えーと、皇雅?漢字が違う。絶対違うよね?そんなに愉し気に尻尾振ってさ。


しかった、でしょ。もう」


棒を背に戻して皇雅とそう交わしていたら、後ろから呼ぶ声がした。


『お、お前……!今のは何だ?!』


『……』


無視することも一瞬過ぎったけど、一応振り向いてあげる。そこには眉を寄せて私を睨む(敗者)が。


『只の旅人じゃないだろう!何者……っ?!』


ふーん。言い募る彼に片眉を上げる。私さ、ダルムに来て初っ端からこの詰所に連れて来られたんだけど。そっちから仕掛けて来て、何でそんな事言われなきゃいけないの?


『1つ宜しいですか?』


背から再度外した棒を斜め下に構え、ゆらりと1歩踏み出した途端、彼が息を飲んだ。


『ダルムに着いて何もしていないのに突然詰所に連行された挙句、いきなり攻撃された私は一体何をした罪で連れて来られたんでしょうか?私からは一切手は出していないのに、何故有無を言わさず2度も剣を向けられたのでしょう?』


更にもう1歩踏み出せば彼から少し血の気が引いて、引け腰になってる。ちょっと情けなく無い?


『ま、待て!謝る!謝るから!頼むっ。噂で巨体の馬を連れた旅人が腕が立つって聞いて……!』


『へえ?』


『お、俺自分より強い相手に挑むのが楽しくて……っ。そしたらシロムで旅人の通過札を出してもらった奴があちこちでがたいの良い奴倒してるって聞いて、そんなに強いのかって!た、試したかったんだ!!』


『ふーん』


悪かったとは言っても、心がこもってませんよお兄さん。隣で心配してくれてた兵士の彼の方がよっぽど良心があるんじゃない?


『あなたのその好奇心のせいで私はこんな目にあった、と』


『い、いや、だからな?』


『さぞ楽しかったでしょうねぇ。噂の旅人を有無を言わさず連れて来させて攻撃して。避けれたから良かったけど、そうでなかったらどう言い訳するんです?』


『そ、それは!いや、だが刃は潰してあるっ』


『問答無用。武を鍛えてる者が素人相手にして良い事では無いでしょう。良かったですね、私が多少なりとも武闘を習っていて』


ぐ、と詰まる彼。さて、終わり(王手)にしようかな。街見物もしたいし。


『男に負けたなら未だしも、女に負けて言い訳なんてみっともないですよ。あと私の大事な家族を巨体の馬なんて言わないで下さい』


言い放って背に木棒を戻すと、軽く姿勢を正す。そして私は彼以外の詰所に居る兵士の人達に頭を下げた。


『兵士の皆さん、お騒がせしてすみませんでした。彼が何者なのかは知りませんが、異性に挑むのは辞めるようお伝え願います。それでは失礼します』


呆然とする詰所を後に、私は皇雅と背を向けた。ずっと隣で(皇雅)が愉しそうに笑うのを聞きながら。

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