2-14 滞在出来ない原因は
シロムを出て2ヶ月。……イラヌ村から数えて4ヶ月くらい。季節が繁生から紅涼の季節に変わろうとしていた。繁生っていうのは日本で言う夏の事らしい。で、紅涼は秋っぽい。皇雅が教えてくれた。
日本じゃ春夏秋冬の四季と梅雨がある。大体3月〜5月が春。6月が梅雨、7月〜9月が夏。秋は10月〜11月で、12月〜2月が冬。季節とは言っても多少ずれたりもする。3月に入っても雪が降ったりもするし、梅雨入り情報が出てもそんなに降雨しなかったりもする。けれどこのオリネシアでは違う。
梅雨時期を入れて四季節、1ヶ月は20日間。もうこれでもかって位はっきりと季節が分かれてるらしい。日本で言う冬は無くて、春夏秋と梅雨。春は薫花、夏は繁生、秋は紅涼。皇雅の話の限りでは初秋っぽい穏やかな涼しさらしいのだけど。
1季節4ヶ月、梅雨時期は1ヶ月。って事は1年で13ヶ月……260日か。地球よりもひと月多いのに巡りは早いんだなぁ。あ、梅雨時期のひと月にも名前があって、潤水と言うのだそうだ。時計が針を刻むみたいにきっかりと季節が入れ替わる。どういう仕組みなんだ、ここの気象は。
河川が側の地域は水には困らないが、水難が危険らしい。潤水で増水した河の氾濫が猛威を奮うから。けれど逆に河川が無い地域はこれまた水難がある。生活用水に困るんだってさ。だから溜池や各々の持ってる大きな容器に潤水の水を溜めて使う。……ボウフラとか湧かないのかな。うーん、日本って本当に生活水準高かったんだって今更ながら思う。それを当たり前のように恩恵を受けてきて、凄いことなんだって失念してたのかも。何せ水道捻れば、その水をそのまま飲めたんだから。
薫花、潤水、繁生、紅涼。この四季節が毎年順に廻るこの世界で、日本に帰れる日を願いながら今、私は皇雅と旅をする。
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夕闇がそろりと迫ってくる中、皇雅と並んで歩く私の足元を夕風が抜けていく。あの日シロムを出た後、私達は幾つかの関所を通過した。通過と言ったのは過去形だからだ。そしてそのままの意味。その街その街を観光するでもなく、宿を取って滞在していくわけでもなく。
全てはあの人達の所為だ!と声を大に叫びたい。皇雅も苛立ちを隠せてないのは決して気のせいではないはず。そりゃ、1つの街に1人や2人くらい盗人は居ると思うよ?そういう人の物を取ったり脅迫するような人だって居ると思う。いや、肯定してるわけではないけれども。だからってさ、毎回絡まれる筋合いなんてないと思うんだよね?!確かに短髪の私は男に見えるかもしれないよ。服だってネイアの大奥様に仕立ててもらった男物だしさ、盗人のおじさん達から絶好の鴨かもしれないけど!けど!!
関所を出てからも追いかけて来るってなんなのよ!それも『惚れたから手下に』って意味不明の科白つきで!
絶対、絶対に嫌だー!!
オリネシアは地球よりひと月多く、一季節少ないです。そして年日数も少ない。なんと言っても特徴的なのは、日本では朧げに移り変わる季節がきっかりと変化すること。
金銭関係はまた本編内で説明をします。
さて。季節の呼び名です。
薫花=春、繁生=夏、紅涼=初秋、そして潤水=梅雨。
薫花の1ヶ月目の1日を「薫花の1月1日」、2ヶ月目では「薫花の2月1日」。
もちろん繁生や紅涼でも同じです。
「繁生の1月1日」、「紅涼の1月1日」。
潤水だけは「潤水の1日」「潤水の2日」と数えます。
時折同じような説明が後書に出てくるかもしれませんが、作者が設定を間違えないように書かせて頂いています。どうぞ見逃してやって下さい。




