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闘神の御娘(旧)  作者: 海陽
2章 北地方
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2-6 言うときは言いますよ、確りと

店の近くまで戻って来ると、玄関先に男女1組が立っていた。1人は言わずと知れた大奥様。もう1人は……またあの人?


『うわっ……大奥様』


2人は何やら話しているようで、こっちには気付いていなくて。かぽ、かぽとゆっくり近付くと蹄の音に私達の方へ振り向くと、そしてぎょっと驚いた顔をした。


『ダナ!』


『あ、……っ?!』


上から大奥様、ダナのお兄さんの兵士。皇雅が脚を折り座ると、あの・・大奥様が僅かに蒼ざめた。兵士の彼が顔面蒼白なのはもう気にしないよ?会う度に蒼くなってるし。


『ダナっ!お、お前は何ということを……っ』


おや。何だか雲行きが怪しそう?だって彼女、ダナが皇雅に乗ってる事に顔色変えてたし。


「……皇雅、逃げようか」


〈我が獣神であることがあの大奥様とやらいう女に知られたのやもしれぬ。……それが賢明であろうな〉


そっと、そおーっと後退りして立ちかけている皇雅に跨る。


『あ!』


げ、バレた?!

兵士の彼が焦ったようにこっちを見たのと同時に、皇雅が踵を返した。


「皇雅、行こうギャロップ!!」


軽く賛同の鼻息を発した皇雅、次の瞬間には目の前の景色があっという間に過ぎ去るのを風を受けながら見つめ、ネイアに来た北とは反対の南の門へと辿り着く。けれど、身を挺して私達の前に現れた兵士によって前を塞がれ、いきなり前脚を上げて嘶いた皇雅に、私は鬣を掴む手と胴を挟む脚に渾身の力を込めて落ちないようにすることしか出来なかった。


『どうか!どうかお止まり下さい!』


「っ!皇雅落ち着いて……っ」


落ち着かない様子で足踏み状態を繰り返す彼の首を撫でる。私だって常歩なみあし速歩はやあし襲歩ギャロップが出来る様になったとは言えどそんなに乗馬歴が無いんだよ。あんまりやったことの無い歩法をされると落ちちゃうよ、皇雅!


〈退け!何故なにゆえ邪魔をする〉


びくうっと立ち塞がった彼が震えた。どうやら皇雅の声が聞こえたらしい。けれどはっきりと言ったんだ。『お伝えしたい事がございます!』って。……伝えたい事?わざわざ私に。いや、皇雅・・に?もし皇雅に対してなら。この兵士の彼、ううん、ネイアの守備兵達は皇雅が獣神だって知ったことになる。


〈それは我に対して申しているのか。それとも我が契約者に対してか〉


皇雅の威圧がやばい。機嫌が悪かったところに兵士に進路を止められて、更に悪くなってるよ。声が冷たいもん。


『そ、それは……っ』


〈我に申しているのであれば、答は否。我がその方らに従うと思うか?何と浅はかなことよ〉


『そっ、その様な畏れ多い事など出来ません!』


〈ならば路を明けよ。蹴り殺されたいか〉


ひっ、と竦み上がっちゃった彼。言い過ぎだよ皇雅。


「皇雅、ちょっとそれは……。路を塞いだだけで殺すなんて言ったら駄目でしょ。可哀想だよ」


〈……〉


とっくに深紅の瞳に戻っていた皇雅。耳を伏せ尻尾を苛立たし気に揺らす。前掻きまでしてるから、よっぽどイライラしてるんだね。


『ご用件は何でしょうか。……引き留められたくはありませんので、馬上から失礼します』


大奥様にはお世話になったけれど、ダナにも会えたけど。まだイラヌ村から出て1つ目の関所なんだよ。足止め食らって大騒ぎになりたく無い。けれど、既に遅かったらしい。


『本日1アルン(1時間)程後、このネイアに地方の文官がお出でになります。その方はこの北地方を纏めておられる方なのですが、我らの隊長が、その使者に獣神様と契約者の事をお伝えしてしまいました。それをお聞きになった文官が是非お会いしたいと……』


それは……非常に良くないのでは。大事おおごとにしたくないって思ったばかりなのに。文官がどれだけ偉いのかは分からないけど、ネイアの守備隊長よりも位が上なんだよね?多分というか絶対。しかも是非・・って何よ?すっごく嫌な予感がする。


『その文官はどの様なお方なのですか』


『……あの方は、その……権力や獣神様方に執着が強い、方でして……』


駄目じゃん!!興味じゃなくて執着?!そんなのやだよ、会いたくないっ。イメージからして悪い感じしかしないもん!


〈浅はかなだけで無く、愚か者であったか……〉


「どうする?皇雅」


〈叶えてやる必要などない。……だがそれではその文官が来た際にこの者らが難儀な目に遭うやもしれぬ。それはシノブの思う所では無いのであろう?〉


「うん。会わずに去ることは出来る。……でも去った後にネイアの人達が文官に何かされるのは……」


何だかネイアの人達を見捨てるみたいで嫌だな……。


〈甘い、人が良い。シノブらしいと言えばシノブらしいのやも知れぬな〉


呆れが混じった科白。……それは取り敢えず褒め言葉と思っておくよ、皇雅。


『分かりました。その文官の方が来るまでは留まります。ですが私も皇雅も会おうとは思いませんので、姿を見せたら去ります。そちらの都合で勝手に報告されたのです、ネイアの者では無い私達にはそれ以上譲歩する必要はありませんよね?』


勝手にそんな事をされて、幾らネイアに、と言うかオリネシアに来たばかりだからって……従う義理なんて無い。そりゃ大奥様にはお世話になったよ?でもそれだけだもの。私だって言う時には言うんだからね。

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