1 ここ、どこよ?
見切り発車です。のろのろ更新ですが宜しくお願いします!
「ここ、どこよ?」
皆さんこんにちは。私、五十嵐忍、華の高校2年の17歳。優しくて厳しいじいちゃんに育てられ、じいちゃんっ子の野生児です。何故野生児かって?興味があることは殆ど男っぽいものばかりだったから。いや、自分で言っといてなんだけども。
「興味を持つことは良いことだ。だが自分からやり始めたなら最後までやり通せ」
1度自分で決めて始めた事、それから逃げることは許してはくれなかった。そんなじいちゃんの下、私が習い始めたこと。
柔道。空手。棒術。珠算。新体操。唯一女子らしいものは新体操。でもこれ、柔軟性を手に入れる為に始めただけ。あ、棒術は師範代だったじいちゃんの直伝。こってり毎日扱かれて、お陰様で結構な腕前に。じいちゃんの技を繰り出すスピード、半端ないんだもの。動体視力も鍛えられるに決まってるでしょ。だから視力検査ではいっつも両眼共に2.0。
今は亡きばあちゃんの隔世遺伝らしく漆黒の髪。でも癖が強いのでいっつもベリーショート。成長期には浴びる程牛乳を飲まされたから、身長も167cm。6、7頭身位はあるんじゃないかと自負してる。暗算と習い事と身長以外誇れるところはありゃしない。これも自分で言っといてあれだけど。話を戻すね。
……誰か説明して。
私、お稽古の帰り道にうっかり、そう……うっかり工事中のマンホールに落っこちちゃったんだ。
そ・れ・な・の・に!
この、目の前に広がる原生林の様な自然は何なんだ?だって私の居る現代って、上も下もコンクリートだよ?ビルに舗装道路があるわけだし。それって勿論、地下鉄とか下水道とか通ってる訳で、地下もコンクリートなはず。なのにマンホールに落ちたら原生林っておかしくない?しかも、この原生林の先にちらほら見えるのって小さな村。どこからどう見たって山間の村。しかも、襲われてる。
……ああじいちゃん。どうやったら私、じいちゃんの元に帰れるのかな。
しくしくと泣きたいところだけど、残念ながら私はそこまで弱くない。武闘派の習い事ばっかりだったせいで、精神まで鍛えられちゃったもの、仕方ないじゃ無いか。……取り敢えず、ここに居れば安心なのかな。だってあの物騒な人達、ここまでは来なさそうだし。私は何も持ってないし?
そう。何故かマンホールに落ちた時に一緒に持っていたはずの荷物が、無い。とは言っても、バッグに入ってたのって着替えだけなんだけどね。あ、あと携帯?でもこんな原生林で、携帯の電波なんて届く気がしない。うん、絶対圏外だと思う。
じいちゃんの棒術の道場から家までは少し離れてて、あの時、私はその道場から帰るつもりだったのだ。速乾性と伸縮性を備えた運動着でも、やっぱり大量に汗をかいた身体で服に着替えるなんてなんだか嫌で、そのまま帰宅していた私。
でも一応これでも女子ですから!ちゃんとシャワーだけは道場で借りたよ!もちろん。
まあ、その度に自分の全く女らしく無い身体に虚しくもなってたけど。無駄に引き締まってるし、胸はちっちゃいし。……ちっちゃいし。ぐすん。
習い事の邪魔にならないからまあ良いか、と自分に言い聞かせてましたけど、やっぱりもう少し欲しかったなぁ、っていうのが本音。そう感傷に浸ってる内に林(森?)の外が騒がしくなって来て、そおっと出口辺りの大木の陰から村を伺うと。……なんだあれ?!
むさ苦しいおじさんが、女の人に剣を向けてる所だった。うん、多分剣であってるはず。……本物、だよね?
じゃ無くて!!
これまた残念な事に、私、他人が困ってたり無理に絡まれてるところを見過ごすことが出来ない性格。気付いたら履いてたランニングシューズの紐を固く結び直して、村へ駆けてた。
忍は髪型と身長から、よく男子に間違えられます。なんせ武闘派の習い事ばっかしているので。