昼間・楽しげな来訪者
「って事があってさ…」
「旦那様、お茶が入りましたのでどうぞ」
「お、ありがと」
王女様に【パルリスの樹液】を届け、帰ってきた晩の事。帰りを待ってくれていた皆に先程の出来事を話した。一応、魔法を使った事は伏せている。
「結局、その女の子はどうしたんですか?」
「どうって、帰してあげたけど…?」
「ロッドさんが女の子を帰した⁉︎」
「ロッド氏が女の子を帰した⁉︎」
「ロッドが女の子を帰した⁉︎」
「旦那様が女の子を帰した⁉︎」
いきなりみんなが声を揃えて叫んだ。
「…え?何?俺何か悪いことした?」
「(どどど、どーゆーことですか⁉︎あの天然タラシのロッドさんが女の子を帰したなんて⁉︎)」
「(いや待てララ。ロッド氏が帰しても、女の子の方からこちらに訪ねてくるかもしれないだろう?)」
「(ついにロッドは私と愛を育む覚悟が出来たのね)」
「(ルナ様。話がぶっ飛んでます)」
なぜかみんなでヒソヒソと話しているが、俺には思い当たる節がない。念のため謝っておくか…?
そんな事を考えていると、不意に玄関の呼び鈴が鳴る音が聞こえた。その瞬間、女性陣が一斉に玄関先に視線を送った。
「やっぱり来ましたよ⁉︎」
「ロッドぉぉおぉ‼︎私との愛はどーなったのぉぉお‼︎‼︎」
「旦那様……」
「やはりロッド氏はロッド氏だったか…」
「何の話だよ‼︎」
急に責め立てられても困るので、そそくさと一人玄関へ足を運んだ。玄関のドアを開けると何人かの人が立っていた。見た所、旅をしているようである。大きな荷台に山積みの荷物。相当な長旅だったのか、日除けのローブを纏っている。砂漠地帯を通ってきたことを容易に想像できた。
「すまないが、【島流しの岬】って所知らないか?」
「島流し…?」
なんとも物騒な地名だな、と思った矢先、ララが後ろから口を添えてくれた。
「【島流しの岬】はこの国を抜けた先の断崖絶壁を通ってまっすぐですけど…」
「そうか…ありがとう。ついでに聞きたいんだが、この国で一番の腕を持つ戦士はどこに行けば手合わせ出来るかな?」
「一番の腕…ですか?」
ララがこちらをチラ見した。まさか俺が一番の腕を持つ戦士だと言いたいのか?待て待て。そんな意味ありげにこちらを見たら、相手方も勘違いを……
「おっと、あなたがそうだったとは!これは失礼した」
「いやいや、違いますよ。そもそも俺はこの国の者じゃ…」
「え?…ロッドさん、この国の人じゃないんですか…?」
「え、あぁ…もうこの国の住人か…」
いや、待て待て待て。このままだと、本当に俺が手合わせする流れじゃないか?
「この国の住人なのは認めるけど、一番の戦士じゃ…」
「ロッドは国王直属の人間なのよ!しかも、単独で依頼をこなしたりするの!」
「なんと‼︎相当な腕と見受ける」
ルナぁぁぁあぁ‼︎‼︎‼︎‼︎
誤解を招く言い方するな!確かに国王直属の人間だが、商人だろ!しかも商売を一人でやってるだけだ!はやくこの依頼を断らねば…!
「ぜひ、この俺と手合わせ願いたい!」
キラキラと子供のような期待の面持ちで、力強く手を握られてしまった。何故か断る事を躊躇してしまうほどに満面の笑みである。
「ロッド氏、組手程度ならばやってやれば良いだろう?」
「あまりお庭を荒らさないのであれば、ウチのお庭を使っても大丈夫ですよ?」
「レミア…お前まで…」
どうやらこのまま、やらざるを得ない展開になってきた。




