二日目・夜・小話
「明日また、騎士さんと戦わなきゃいけなくなったよ…」
「またですか?懲りないですね。あの人」
俺とララは、彼女の家に戻り、夕飯を食している。ララは一人の生活が長いせいか、家事が得意のようで、食事もとても美味しい。もはやここで飯を食うのが当たり前になっている。決して俺が無理言って押し入っている訳ではない。むしろ、ララの方からここへ来るようにと誘われているのだが。
「ロッドさんなら余裕ですよ!あの剣!かっこよかったですもん!」
「あぁ、あれね。あの騎士さんは剣と言っていたけど、あれは和の国の地方で発達している「刀」と呼ばれる武器なんだ」
「刀…ですか?」
俺は食事中に悪いと思いつつ、興味津々のララに愛刀を見せるべく、テーブルの上へと刀を置いた。
「そう。【対刀小太刀:逆獅子】と言う名らしい。和の国の職人さんが丹精込めて作った作品で、とある一件でお礼に貰ったものなんだけど…」
「覚えにくい名前ですね…。どーゆー意味なんですか?」
「俺にも、和の国の語はよく分からないんだけど…。対刀小太刀。つまり対になる刀があって、これはその方割れって事らしい」
「もう一方はどこに…?」
「さぁ…?それを探すのも、旅の理由の一つなんだ」
「なるほど…」
簡単に納得してしまったが実際、この刀の方割れがこの世に存在するのかは、俺にも分からない。
「あ、あの…」
「ん?どーした?」
「その剣…じゃなくて、刀で…人を…切ったことはありますか…?」
「あるよ?」
「ひぃ⁉︎」
ララは、可愛らしい小さな悲鳴をあげて、手からパンを落した。
「冗談だよ。モンスターは何体も殺ってるけどね」
「ほ…本当ですか?」
「本当本当!そんな怯えないで!」
どうやら、かなりマイナスなイメージを植え付けてしまったらしい。まぁ確かに、人殺しと一緒に食卓を囲みたくはない。
それから食事を続けたが、心なしかララが少し俺を避けているような気がした。今夜は旅の話をせずに済みそうだ。