九日目・昼間・闇 登場
「こりゃ坊主を呼んで正解だったな。あんたら数が増え過ぎだぜ!」
坊主が来るまでの間、俺一人で抑えるつもりだったが、いかんせん数が多過ぎる。20分だったか30分だったか…とにかく早く坊主が来てくれればすぐに片が付くと言うのに。
そう思いつつも、オヤジは最前線でたった一人戦況を狂わす事なく、安定した戦いを見せていた。中年男の怪力だけでは、一度に相手にできるのはせいぜい三人までだ。が、片手で巨大なマシンガンを轟かせ、もう片方では近距離に詰めて来た兵士を拳でなぎ払う。実に人間離れした業である。このマシンガン。実弾ではなくゴム弾である様で、兵士が撃たれてはいるが、流血していない。しかしもちろんの事、人一人倒せる程の威力はあるので、当ればただでは済まないし、急所に命中しようものなら戦いが終わるまで立ち上がりたくなくなるであろう。
そんなこんなで続いているケンカだが、オヤジの頭上に手榴弾が投げ込まれた。
「おい!火器の使用もありかい!せっかく死人を出さないようにしてんのに!」
そう言い放つとマシンガンの標準を手榴弾に合わせ、それを跳ね飛ばす。
空中高く爆破した手榴弾は熱風と共に鉄片を撃ち放った。咄嗟に取った防御も虚しく、鉄片はオヤジの頑丈な腕に突き刺さる。
「クソ!頭に来たぜ!こうなったら実弾ブチかまして…
顔を防御していた腕を退けると、目の前には二つの手榴弾。
「(マズイ…‼︎二つも処理し切れるか…ッ⁉︎)」
このオヤジ。腕はあっても頭はない。咄嗟の判断は経験と感からしか導き出せないのである。マシンガンで二つの手榴弾をなぎ払うよう腕を大きく横に振り回す。それでも一つは目の前に依然としてとどまっている。
鼻先での爆破。
それは頑丈なオヤジでさえも地に手を着く程の威力である。人間離れした怪力があっても、超至近距離の攻撃は耐えられない。顔面から血を流し、口から血を唾の様に吐き出す。目を充血させ、怒りと唖然とした表情を見せるオヤジに役所の軍勢が攻め寄る。
「(ヤツらめ…人を何だと思って……。糞食らえ馬鹿野郎共…………)」
生命の存続を諦めたその瞬間。
その瞬間からその男をターンは始まった。
「ザコに見えるぜ。オヤジさん」




