九日目・昼間・ケンカ前
スズの家へ上がると早速居間へ通された。スズのお母さんにお茶を出されて、一息ついた。
「坊主、外出るぞ、外」
「あれ、二人ともどこか行くんですか?」
ララが不思議そうに問いかける。まぁ、俺からしてみればそれは愚問であるが…。
「どこって…戦争だよ、戦争。スズから聞いてないかい?」
「「「!?」」」
「やっぱり…」
このオヤジ、戦う事しか考えていない。と、言うよりも自分の事しか考えていない。
「最近は役人のヤツら、すぐそこに櫓を構えやがって…。昼過ぎには喧嘩売りに来やがる」
「そんなに簡単に戦争が始まってたまるかってぇの」
「ま、お嬢さん達はゆっくりくつろいでってちょうだい」
「い、いえ、私もロッド氏と共に戦いますが…」
「ちょ!抜け駆け良くない!私も行くって!」
リリアとルナには共に戦う意思があるようだ。そりゃリリアは騎士なんだし、当然の如く戦うつもりだっただろう。ルナに関しても、俺がいる所についてくるだろうと思ってはいた。
「いや、二人はこない方がいい。多分、坊主が困るだろうからな」
「オヤジさん…。もしかして、その戦争ってやつ今日で終わらせるつもりで俺を読んだのか?」
「当たり前だ。そうじゃなきゃ俺一人で事足りるからな」
「マジで言ってんのかよ……。ならせめて、20分くらい一人で集中できる所に居させてくれ…」
「分かった。じゃあ俺は先にドンパチやってるから、途中参加してくれ」
ドンパチだ何だって、ここまで陽気な兵士が居て良いのか?この村の将来が心配になってきた。
「この部屋使ってくれ。ちゃんと来てくれよ?」
「分かってるよ。あとこの部屋、光を遮るものあったりするか?無ければ最悪、目隠し出来るようなタオルでも良いんだが…」
「なんだ。それなら押し入れの中だな!ガハハハッ!」
「押し入れか…まぁいいや、集中できるならどこでも」
まぁ押し入れに入るのは良いのだが、何か気恥ずかしくなるので、そそくさと入ってしまう。
俺はかつての感覚を思い出すよう、静かに…ただ静かに。
闇に身を溶かすように。
一切の光のない空間に歪みを生まないように。
空気の流れを遮らないように。
息を殺し音さえ消し去るように。
俺は記憶の中の"真紅の闇"に眼を開く。




