九日目・昼間・真紅の闇
「少し考えれば分かることなのです。皆の生活を支えているのは誰なのかと言うことを。私のお爺様の代までは、何かある度にすがりついてきたのに…。今では農産に対して冷たい態度を取る。時代遅れだとか、廃れた産業だとか…。我々が居なくては、ろくに生活も出来ないくせに」
「なるほど」
スズの話をまとめると、国の役人が農地を開拓して砦を築こうとしているようだ。最近は隣国同士の抗争も多くなってきていると聞くし、そうでなくとも砦があるのと無いのとでは、安心感が違う。もっとも、スズからしてみれば自分の土地を奪われるのだから面白くない話なのは明白だが。
「スズ殿も大変なのだな」
「共感して頂けたのなら幸いです」
「んで?俺たちは何すれば良いんだ?」
「役人を追い払う。だだそれだけです」
「お前のオヤジさんと一緒にか?」
「そうなりますね」
スズのオヤジさんは農家の生まれ、農家の育ち。…にも関わらず、国の兵役免除の令を無視し、一時期、軍のトップとして活躍した過去を持つ。今でこそ中年太りしているが、その怪力と運動神経、洞察力は本物だ。
「嫌だなぁ…あのオヤジさんとは、どうも上手くいかないから」
「ロッド氏の苦手な人物が、あの魔女っ子以外に居たとは」
「ルナはまた特別だろ…」
とは言うものの、ルナの次くらいに苦手なのは確かだ。今更だが、なぜこんな面倒な事になっているのか…。
「よぉ坊主。元気にしとったか」
「相変わらずですねオヤジさん。無駄に威勢がいい」
「ハハハッ‼︎よく言われるわい」
道中、何事もなく無事に和の国に辿り着くことが出来た。オヤジさんの出迎えもついてプライスレス。この世で一番いらない無料品だ。
「"真紅の闇"も健全かな?」
「ッ⁉︎」
「真紅の…闇?」
「クリムゾンブラック…和の国風にすると真紅の闇。かつてこいつが 「なぁオヤジさん。家、上がってもいいか?」
「あぁ…そうだな。こりゃ失敬」
そう…真紅の闇。こればかりはララ達に知られる訳にはいかない。




