七日目・夕暮れ・出会ったの
私は長い眠りについていたようだ。
とても喉が渇いた。しばらく寝ていたため、体が固まってしまった。暗くて白い、自分でも良く分からない夢を見ていた気がする。
そして、その夢の中で…誰か…白いイメージの女性とお話していたような。
既に一度目を覚ましていたが、隣の机にちょっとした食料があるので、その後誰かが見舞いに来たようだ。ロッドさんだったらいいな………
〜
……居ない。
辺りを見回しても、案内をしてくれていた白の女性は見当たらない。人とはぐれるほどの人混みは出来ていない。彼女は別れの言葉もなく帰ってしまったのだろうか…?せめてお礼の一言は言っておきたかったのだが。
仕方ないので一人で街を散策することにした。外では無いような物が多く、なかなかに興味を惹かれる。あちらを見ては、今度はそちらへ。それが終われば向こうに。いつしか街のかなり中心まで来ていたようだ。
出店をしているお婆さんがこちらを見ている。まさか魔法が…とは考えたが、まだ解けていないようだ。何か用でもあるのか?
「あの…何かご用でしょうか?」
「あなた、商人かえ?」
「そうですけど…?」
お婆さんは何か意外そうな顔をしている。
「いやね? 商人は男の人が多いだろう?」
「あぁ、なるほど」
確かにそうだ。俺が今までに出会った商人仲間で女性なのは二人しかいない。一人は大ベテラン。一人は後輩にあたる。もちろん俺だって今は女性の姿だが、男性の商人だ。
「もし良ければだが、うちと契約して、品を仕入れてくれないかい?」
「仕入れ…ですか?」
商人は自分で商品を売るだけじゃない。
例えばこんな風に、お店と契約して品を仕入れる。こちらの方法は金額が保証されているが、それ以上の給与はない。腕に自信があるなら、自分で商品を売った方が良いと思う。俺はそうしている。
「すみません…。訳あって仕入れはちょっと…」
「そうかい…そりゃ残念だわ」
「本当にすみません」
なんせ俺は男なのだから。女帝の国で契約しても、ここへ来れない。その度に魔法をかけるのも億劫だ。
頭を下げて謝罪する。心からの謝罪をお婆さんへする。顔を上げると、お婆さんが震えている。歯をカチカチと震わせ、目を見開いている。一体何が起きたのか分からないが、尋常ではないのは一目で分かる。しかし、そんな事も気にならなくなるくらい周りが騒がしい。何か見世物でも始まったのだろうか。唐突に始まったそれは自分に視線を集中させる。皆がこちらを物珍しそうに眺めてくる。そこである事に気付く。
「…あ」
完全に俺の声。男の声である。
「…しまったぁぁあぁぁぁぁあぁッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
周りからキャーキャーと無駄に黄色い声が立ち上る。しかしこれは完全にやらかしてしまった。もう手遅れだが、必死に身を隠そうと森の方へひたすら逃げ走る。
人混みを掻き分け、ただひたすらに、森へとひた走る。きっと俺の表情は必死その物だったろう。後ろから弓矢が身を掠める。物を盾にしつつ、素早く国の外へ飛び出る。そのまましばらく遠くまで走り続け、大きな木の下で休憩を取る。
「大変でしたね」
不意にかけられたその声は、あの白の女性の声だった。顔を上げ、その姿を確認する。確かにそこに彼女の姿がある。しかし、声はと言うと、彼女から…と言うより回りから。周囲全体から聞こえてくる。
「久々にみた男性は、とても面白い方で良かったです」
そう言うとその女性とその声は、スラッ…と消えてしまった。忽然と、その場に元々存在しなかったかのように。
「え……。え?」
理解が追いつかなかったが…。
「…………。女帝さま⁉︎」




