七日目・午後・作戦実行
太陽もだんだんと傾き始めている。夕暮れも近いのではないだろうか。
森の奥の謎の線。女帝の国の境界線。俺は今、その線の前に立っている。女性以外は、決して足を踏み入れてはいけない線。しかし、今の俺にとってこの線はなんの意味も成さない。なんせ俺は今、"女"なのだから‼︎
「…誰も来ないな?」
以前のような襲撃の合図はない。静かで清々しい陽気に包まれた、のどかな森の一辺でしかなかった。それが美しき自然の光景でもありつつ、戦争の前の恐々とした静けさでもあるように感じた。
俺は目的の品を早々に採取し始める。キノコはそこそこ高級な食材になる。この薬草は何種類かの薬に使えるはずだ。こっちの木の実なんかは、調味料になったりする。お手製の手帳を見ながら、それが何なのか確かめつつ、また、新しい物はしっかりと記録しておく。職業柄、ついつい呟きながら採取してしまう。本当に独り言。森にただただ木霊する俺の声。小さなガラス玉のようなその声は、耳を澄ましてもはっきりと聞き取れないくらい小さなものだったはずだ。
「それ、スープにすると美味しいんですよ?」
ふとかけられた声にビクリとしてしまう。後ろを振り返ると、髪の長い、金髪の、全体的に白いイメージの女性が佇んでいた。いつからそこに居たのか分からない。それほど採取に集中し過ぎていたのか。
「えっと…これ、結構渋みとかありませんか?」
「種をすり潰すと渋みがでますね。丁寧に種を取り出して、スープに入れるんです」
「なるほど…」
女帝の国の人なのだろう。その周辺にあった植物について、詳しく説明をしてくれた。他にも中々知られていないような植物も、売りようによっては高く売れそうだ。
「街の方に行くと、外では無いような物がたくさんありますよ?」
「本当ですか?ぜひ連れて行って下さい!」
まだ外には流通していない物があるならば、それを外に持ち出して売れば、高く売れるに決まっている。あまり良い考え方ではないが、その品の全ての特権を取ろうと言う訳ではないし、少しなら大丈夫じゃなかろうか。
「うわぁ…すげぇ」
「活気溢れる良い街ですよ」
思わず声をもらす。見渡すばかり女性。女性。女性だけ。出店や露店の類はもちろん、ちゃんとした店を構えるところでも、様々な物を売っている。商人として、興味を惹かれる物ばかりだ。
「こちらのお店なんか、特安で魔法器具が買えるんですから」
「すごい!かなりお得だ!」
「見たところ商人さんのようですし、いろいろ商品の補給なんかどうでしょう?」
女性の問いかけに答える前に、店の品や価格を見比べて、一番良いところで良い買い物を始める。ちょうど切らしていた薬や、近々取り入れようとしていたアクセサリーなど、とても良い物がそろった。
「ありがとうございます。おかげでこんなに……あれ?」
お礼をしようとして、改めて女性の方を向くと、既に女性の姿はなかった。




