七日目・昼間・謎の境界線
リントの森の奥の方。
ララが落ちていた隙間のある所の、さらに向こう側。そこには、謎の線があった。たまたま付いたにしては深すぎる。明らかに何かを区切る線。誰かが意図的に付けた線だ。
今日はララが病院で寝ている。一度目を覚ましたらしいが、またすぐに眠ってしまったようで、話すタイミングを失った。ルナはルナで、朝食も食べずに部屋に篭って何かをやっていた。リリアとの稽古の予定も無い。レミアは料理の特訓として、街のおばさんの家に出かけている。つまり、今日の俺は完全フリーなのだ。あまりに暇過ぎるので、森へ繰り出すことにしたのだった。
そんな中、街で売るための植物なんかを集めていただけなのだが、不思議なものを見つけてしまった。先程記した謎の線である。興味が湧かない訳がない。俺の中の探究心が、この線にどんどん惹かれていく。
「なんだ…これ…?」
改めて見てみると、線の向こう側の方が木が生い茂り、木の実や薬草もたくさんありそうだ。それに、高価なキノコや植物もあるように見える。そーゆー所には小動物も集まる。それを狙って大型の動物も集まるだろう。
俺は、この線を不思議に思いつつも、特に気に留めずに進む事にした。すると、たった数歩進んだだけで、どこからか号令が上がった。まるで敵兵の奇襲を察知し、攻撃体制に入っているような勢いだ。…いや、実際そうなのかも。
突如として森の奥に現れた人影が、こちらへ弓矢で先制攻撃を仕掛けてくる。しかも三本同時打ちである。
「うわ⁉︎ 何だ⁉︎」
スパスパと打ち出される矢が、確実に俺を獲物として狙っている。愛刀で防ごうにも、数が多すぎる。それに、向こうも着々と人数が増えている。とりあえず一刻も早くこの場を離れなければ。さもないと俺の体が落ち武者状態になってしまう…。
〜
「〜…って事があったんだが」
「あぁ、それは【女帝の国】だ」
「女帝の国…?」
家に帰還し、さっきの出来事と状況をリリアに説明する。どうやら、この地域には昔から、このピサリ王国と女帝の国が共存していたらしい。かつての王国の政治に不満を持った人々が、女帝を崇め、森の奥を開拓し移り住んだと言う。そして、この国の最大の特徴は、国民の9割が女性だという事だそう。しかも残り1割も、成人していない男性。つまり女性と男の子しかいないのだ。
「そりゃまたすごい国だな…」
「女帝さまの教えのせいで、成人男性は国内に入れないんだ。と言っても、女帝さまも結局は崇拝の象徴でしかない空想の人物だがな」
「それにしたって、かなり高価な植物もあったんだぞ?なんとかして入る方法はないのか?」
「今のところは…」
「そんなぁ…」
俺は目の前の宝を取り損ね落胆する。しかし、俺はまだ気付いていなかった。"ヤツ"がこの会話を聞いていた事に。そして、"ヤツ"がちょっとした悪戯をしようとしている事に。




