七日目・朝・心の内で
仙人の雲。実に便利だ!
日の出の頃には帰宅できた。ララを病院へ送り、リリアを家へ送る。ルナは早朝の街を散歩に出かけた。元気なヤツだ…。俺はレミアが心配で早めに帰宅する事にした。
「お帰りなさいませ、旦那様!ご無事で何よりです!」
「あぁ、ただいま。おかげさまだよ…」
「お嬢様は?」
「ララは病院に置いてきたよ」
「病院…ですか?」
「ちょっとあってな…寝込んでる」
具体的な内容は話さないでおく。と言うより、説明が長くなるので面倒なのだ。所々、説明し切れない部分もあるし。
「そうですか…。ルナさんもいないようですし…。今日は二人だけですね」
「そうだな…」
「ち、朝食の用意…しますね‼︎」
「おう。よろしく」
慌てるように台所へ消えて行った。火の消し忘れか?火事には気をつけたいものだ。
〜
「あれ、料理の腕。上がってない?」
「ほ、本当ですか⁉︎」
「うん。なんか前より美味しくなったような」
料理以外の家事を完璧にこなすレミアだったが、今日の朝食は前の料理より、美味しく感じた。たどたどしく作った感じがなくなり、慣れた手つきの、プロの手が加えられたような。それに、ほのかに隠し味の風味が感じられた。
「実は、街のおばさま達と仲良くなりまして、料理を教わったんです」
「すげぇな…。たったこれだけの時間で」
「旦那様に…美味しいお料理を…お出ししたくて…///」
「ありがとな、レミア」
「い、いえ、そうな!まだまだこんなんじゃ足りません!これからもっとお勉強しなくては!」
いつもなら、ゆったりと朝食を取るのだが、驚きと嬉しさからか、あっと言う間に平らげてしまった。それを見ていたレミアも、嬉しさを隠し切れていない様子だ。
「あの…旦那様はこの後、予定はありますか?」
「いや、特にないけど…。どーした?」
「あぃ、いえ!すいません。つかぬ事を伺ったりして」
「それは別にいいんだけどさ?何かあったらすぐに言えよ?」
「はい。分かりました」
レミアは嬉しさに満ちた顔をしていたが、どこか淋しげで、虚を見つめているようにも見えた。
俺は自分の部屋に戻り、お昼まで睡眠を取ることにした。なんせ昨日は一日寝ていないのだ。疲労困憊である。ベッドへ座り、しばらくボー…っとしていると、ふと、意識が遠のいて行った。心地よい眠りが、俺の体を包み込んでいったのだ。
〜
「(失礼いたします…)」
私はやはりおかしいのかもしれない。旦那様が就寝されてから、こっそりと部屋に忍び込んで、少しでも一緒にいようとしているのだから。奴隷だった私を救ってくれたヒーロー。闇の渦から救ってくれた勇者。私に希望を与えてくれた英雄。いつしか私は、旦那様に恋こがれていたようだ。それを思い知ったのは、旦那様がここを留守にしたその日。
「(お疲れ様です。旦那様。)」
心地よさそうな寝顔を見ると、なぜか心が満たされる。これで今日も頑張れる。旦那様の頼みなら、この身を捧げる事も苦としないだろう。この気持ち。伝えたい。しかし、きっと私だけではないはずだから。身をわきまえる事は知っているから。その時が来るまで、このまま旦那様に尽くそうと。そう決めた。




