六日目・夜・黒龍
彼は語る。
燭隠の目。それは、開けば日の光を注ぎ、閉じれば闇夜に包まれる。
ヤツの目がなければ、開くも閉じるも関係ない。つまり、目を潰せば燭隠そのものの存在が意味を成さなくなる。言わば"神殺し"の行為だが、そうする他に手がない。自らの目を犠牲に燭隠を葬る事。片目は自分で潰したものの、燭隠の警戒が強まり、もう片目は誰か他の者に潰してもらわないと駄目だった。一人の青年との対峙中、神下の力を使い、燭隠のコントロールを一時停滞させ、妹に片目を潰させる事にした。
ここは華の国の宮殿。黒龍と龍妃の住まいだ。リリアとルナと合流し、ララは寝室で寝込んでいる。燭隠の術により、体調になんらかの影響が出ているようだ。
「いくらなんでも、無茶苦茶よ…」
ルナが、呆れ半分驚き半分で呟いた。俺もそう思う。なんせ両目を潰すのに、なんの躊躇もなく即決で事を実行するヤツなんて、そういない。世界中探したって、十人も見つけられないだろう。
「いえ…これも一国のため。自分に課せられた使命のような物です」
「皇子として誇りを持つのは良い事だが、無茶はいけないな…」
リリアも黒龍の行為には、良いものを感じていないようだ。俺もそう思う。
「今後、どーすんだ?目が見えないんじゃ、不便が多いだろう」
「いえ、全てが見えていない訳じゃないんです。神下の力を使えば、おおよその周りの情景は見通せますから」
「すげぇチートじゃん…」
「自分が心配なのは、あなた達の方です。燭隠の術は、果たしてどのような物なのか…」
確かにララの状態が気になるところだ。早めに国へ帰還して、王国の治療を受けた方が良いのだろうが、馬車を使っても二日。その間に看病は付けられない。ここで安静にしていた方が良いのかもしれない。
「あなた達のお国はどちらですか?」
「西の地方、【ピサリ王国】だけど…?」
「かなり遠くですね。なら《仙人の雲》をお使い下さい」
「仙人の雲…?」
「仙人が移動の際に使用したと言われる雲です。人が乗って空を移動できるため、すごく便利ですよ」
「おぉ‼︎ それは確かに便利だ。すまないが、貸してくれるか?」
「どうぞ、これもお礼です」
どうやら、すぐに国へ帰れる手段が手に入ったようだ。これなら最新の設備の整った病院へララを連れて行ける。これは即決の時だ。




