六日目・夕暮れ・燭隠
ヤツは独眼だ。
ヤツは一度も目を閉じない。
ヤツは一度も動かない。
ヤツがする事は、手を構え、術を唱える事。
「黒塗:鏡水月…」
「おいおい、マジかよ嘘だろ……ぅお⁉︎」
火の玉がいくつも飛んでくる。蒼い炎を纏った鉄のような鱗を剥がし、こちらへ飛ばしてくる。剥がした皮膚はとても痛々しいが、すぐさま再生するため、躊躇なく飛ばされている。俺の愛刀では、防ぎきるので精一杯だ。さらに、二人を守りつつ、ララを救出し、黒龍を助けなければならない。正直、無理ゲ。
それでもヤツはこちらの事情などお構いなしに攻撃を仕掛けてくる。無数の鱗の弾丸が、紙吹雪のように飛ばされ、カッターの刃のように鋭く切り裂いていく。
ヤツが目を閉じた。
瞬間、目の前が闇に包まれる。
俺は目を開いている。それは確かだ。間違えるはずもない。なんせ自分の目だ。しかし前が見えない。いくら目を凝らしても、何も見えてこない。ヤツの歩く音がする。近づいたり、遠のいたり。ヤツがどこから攻めてくるのかまるでわからない。思わず身構えたその時
「…兄様‼︎」
後ろから龍妃の声がした。危害を加えられたような声ではなく、単に驚いているような声だ。良く聞くと、ボソボソと男の声がする。その声の後、俺の目が光を取り戻す。目の前がよく見える。やはり、さっきのあれはヤツの術だったのか。そして、目に止まったのは、地面に崩れ落ちる燭隠。一体何が起きたのか、さっぱり理解できない。俺の死闘はどこへ行ったのか…?
「何が起きた⁉︎」
「えと、目を叩きました…?」
「……ん?」
〜
私は目の前が闇に染まった事にビックリしすぎて、腰を抜かしていた。兄様とロッドお兄ちゃんの戦いは激しすぎて見えなかったけど、目の前が暗くなったら姿すら見えない。しかし、トテトテと、弱々しい足音がこちらへ近寄ってくる。細々と苦しい声が聞こえてくる。
「龍妃…俺の…目…を、突き刺…せ」
「…兄様?」
「早く…。動きを…制御して…いるうちに…早く……‼︎」
私は躊躇したが、兄様の険しい表情に負け、言われたとおり目を突き刺した。兄様は地面に崩れ落ちた。
「…兄様‼︎」
いくら私でも、人の目を潰したらどうなるか分かってる。目ん玉が潰れて、目が見えなくなっちゃう。案の定、兄様は地面に倒れ込んでいる。大好きな兄様の頼みでも、やはりやっていい事ではなかった。
「…いったい何がどーなってんだ⁉︎」




