六日目・夕暮れ・双方の決着
爆風と砂煙の中、ルナは目を凝らし、敵の位置を確認する。
もともと私の攻撃魔法は、爆破系と砲撃系くらいしかない。それゆえに、必然的に『一対多数』の構図の方が戦いやすいという事になる。しかし、現在の敵の数は三体。とても多数とは言えない。この状況を作り出したのは私なのだが、まさかここまで戦いにくくなるとは思っても見なかった。個々が素早く動く的なので、ホーミング弾が最適だがこれも中々当たらない。
「もぅ‼︎ 少しは大人しくしなさいっての‼︎」
「残念ね、私の人形は元気いっぱいなの」
それぞれが別々の行動を取り、翻弄してくるため、どの的に攻撃すればよいのか全く判断がつかない。あちこち見渡しているうちに、思わず躓き、地面へ腰をついてしまう。その瞬間を見逃さなかった三体の人形は、すぐさま私の周りを囲う。
「はい。茶番はお終い。さよならよ」
女の命令と同時に三体の人形は、一斉にこちらへ攻撃を仕掛ける。しかしその瞬間、"私自身"が大爆発した。三体の人形は木っ端微塵に消し飛ばされ、塵だけが残る。
「ちょ、どーゆー事⁉︎」
「残念、これが魔法の真骨頂!幻術魔法によって相手を騙す事よ!」
私は、爆破の時の煙に紛れて、迷彩魔法によって身を隠し、幻術魔法によって私自身の幻術を作り出して、囮をさせたのだ。
「そんな…なんでもありじゃない!」
「なんでもじゃないわ。魔法にも出来ない事がたくさんあるもの」
「そんな…そんな………」
「今度こそ、勝負ついたわね」
〜
「殺すつもりで殺らないと、死んじまうのはあんただぜ?戸惑う事はねぇ。なんせ、こいつはもう死んでいるからな」
《ネクロマンサー》つまりはそういう事だ。どうりで切っても血が垂れない訳だ。どうりで筋肉が硬直している訳だ。目の前にいるキョンシーと呼ばれた男は既に死んでいる。キョンシーとは、いわゆる西の地方のゾンビ的な存在なのだろう。それが分かった事で、私の中にあった迷いが全て吹き飛んだ。
「…ハァッ‼︎‼︎‼︎‼︎」
身を細く構え、剣を持つ手を反対側の腕に添える。姿勢を低くし、腰と膝を使って思い切り回転する。そしてキョンシーの膝を切り飛ばす。支えを失ったキョンシーは、一気に崩れ落ちた。私は落ちてくるキョンシーの首を、切り飛ばす。横たわるキョンシーの腕を、脚を、その身を"切り飛ばす"。
「な、なんてことしてくれる⁉︎」
「何って…遺体の彼の魂を報いるため、その身を処分してやったまでだ」
「く…クソ………」
「お前も切り飛ばしてやろうか…?」
そう言うと、傀儡使いの男は、目の色を変えて一目散に逃げて行く。これで一件落着だ。早く二人に合流しなければ。




