六日目・昼間・そこに居る
俺は燭隠のいるという部屋に向かっている。そのはずなのだが…
「ん〜。確かこっちだったような…」
「なぁ、龍妃。お前はここに来たことあるんだよな?」
「うん。兄様の仕事場だもん」
やけに自信満々に言っているが、かなり道に迷っている。リリアと別れてから、かれこれ15分くらい経つが、それらしき部屋は一切ない。それどころか、同じ場所をあっちに行ったり、こっちに行ったり。
「もう疲れてきちゃった…」
「おいおい、大丈夫かよ。部屋分かんないままじゃん」
「お兄ちゃん、おんぶしてぇ…」
「わがまま言うんじゃありませんよ?我慢しなさい」
「えー。いいじゃん、おんぶぅー!」
「駄目。俺、疲れちゃうもん」
「おんぶぅ……」
龍妃は潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。身長の差から、ちょうど上目遣いになるので、精神的ダメージが大きい。もちろんこの場所の精神的ダメージは、いい意味でだが。
「…しゃーねぇな」
「やったー!ありがと、お兄ちゃん‼︎」
やはり小さな子の相手は苦手だ。この手のものには滅法弱い。しかし、子供一人おぶってこの迷宮のような伝統的な建物の中を、あちこち探索するのはかなり厳しいだろう。しかし、仕方ないので龍妃をおぶり、指示してもらう形で部屋を探す。そのまま奥へ進むこと数分。心地よさそうな寝息が耳元から聞こえてきた。
「…もしもし龍妃さん?」
「…zzz」
「マジかよ…」
もう言葉が出ない。そもそも子供を頼りにしている時点で、こうなる事は目に見えている。この状況では、自分の考えが甘かったと痛感せざるを得ない。おまけに、首筋には龍妃の唇が付けられ、何やら生温かい液体が垂れてくる。これは絶対涎だろう。すこしエロスを感じながらも、俺はロリコンではないので興奮はせずに迷宮と化した建物の探索を続ける。
『キャーーー‼︎』
「⁉︎ なんだ⁉︎」
どこかで聞いたことのある声。俺より3〜4ほど年の小さな女の子の声。これは俺の探している人の声ではないのだろうか?すこし浮かれた気分になっていたが、よくよく考えるとそんな暇はない。聞こえたのは悲鳴である。彼女に危険が迫っているというサインである。俺は声の聞こえた方へ慌てて走り出す。かすかに蒼い光が漏れる部屋を見つけ、その部屋へ突入する。そこには一人の少女が横たわっていた。
「ララ‼︎大丈夫か⁉︎」
「ロッ…ド…さん……?」
俺が大きな声を出したため、龍妃がビックリして飛び起きた様子だ。一方ララは、意識が朦朧としているのか、おぼつかない言葉を発している。目もハッキリと開いておらず、外傷がないものの、痛めつけられたような様子である。
「ロッド…さん…。う…しろ」
「後ろ…⁉︎」
後ろを振り返るも時すでに遅く、何者かに思い切り頭を殴られる。すぐさま立ち上がり、ララと龍妃を連れて、壁際まで一時避難する。ゆらゆらと揺らめく蒼い一つの光。その光を反射し、時折みせる黒い肌は龍の鱗にも見えた。敵は既にそこに居るのだ。




