四日目・夜・一仕事
結論から言って、隣国の少数先鋭の部隊とは接触することは無かった。正確には、かなり接近したが問題なく回避することができたのだ。
「もぉ…帰りの分の魔力使っちゃったよ…。回復するのに2時間くらいかなぁ…」
「迷彩魔法って便利ですね」
「隠密魔法より、回避率は高いわね」
「それじゃあ、隠密魔法のメリットってあるんですか?」
「隠密魔法の方が便利よ?迷彩魔法は全然動けないからね。使用する魔力も多いし。その点、隠密魔法は動き回っても魔法が消えないからね」
「なるほど…奥が深いです…」
そう。今俺達は、ルナの迷彩魔法を使って爆砕させた穴に籠り、軍の先鋭部隊の撤退を待っている。ヤツらは、爆発の現場を検証している。現場に爆弾の破片や、爆破の魔法を使う魔法使いがいないことを不審に思っているらしく、なかなか撤退してくれない。
「そろそろ面倒ですね…。ヤツら切り捨てましょうか?」
「物騒な事言うなよ…一応、騎士だろ?騎士道とかないのか?」
「しかしロッド氏…」
「まぁ、待て。人を殺るのは、あまり好きじゃないんだ…。だから俺に考えがある」
「何すんの?」
「こーゆー時の商人鞄だろう?」
俺は愛用の大きな背負い鞄を背負い、迷彩魔法を解くようルナに言う。その代わり、本の少しの転移魔法をかけてもらう。距離にしてほんの100mほど。これくらいなら苦にならないらしいから…。さらに鞄から出したドラゴンの爪を一旦足に突き刺し、引き抜く。そして、被害者面して兵士達の前へ出て行く。
「いってて…あぁ〜こりゃまいった(棒)」
「⁉︎ お前、何者だ!どこに潜んでいた!」
「うわっ!なんですか⁉︎…私は、向こうの里から来た商人です…。ここを通っている時、ドラゴンに襲われて…」
「ドラゴンだと?馬鹿馬鹿しい。この周辺にはドラゴンは居ない。もし居るなら、こんなところに王国を築く訳ないだろう」
「本当ですよ…ほらコレ」
俺はあらかじめポケットに忍ばせておいた血のついたドラゴンの爪を兵士に見せる。
「⁉︎ これはドラゴンの爪じゃないか‼︎なぜこんな物を⁉︎」
「襲われた時に、足に刺さったんです…。商人として、これほど貴重な物は他にはないですからね…痛てて」
「…。全兵!ドラゴンの捜索に移れ!私は王国へ伝達を入れる!」
「「「「了解!」」」」
「あのぉ…私はもういいですか?コレ、早く売りたいんですが…」
「ん、あぁ、お前はもういい。むしろ早くここを去れ。またドラゴンが来たら大変だからな」
「ありがとうございます。それでは」
道を抜けるフリをして、そばの木陰に隠れる。先鋭部隊の兵士達は、それぞれドラゴン探索のため散って行く。一分も待たずに全員の兵士がこの場からいなくなった。
「やったー!さすがロッド!待ってて、すぐ回復魔法使ってあげるから!」
「いや、お前まだ魔力が溜まってないだろ?俺は傷薬で十分だから」
「あ、それなら私が手当てしますね!」
「ロッド氏、大丈夫ですか?」
「おう。このくらいなら大丈夫だ。流石に、それほど深く刺した訳じゃないし」
傷の手当てを終えると、俺達は鉱石の採掘の採取に取り掛かる。どうやらこの山は当たりらしく、バンバン鉱石が取れる。採取に夢中になっている間に鞄いっぱいに鉱石が溜まってしまった。ルナの魔力も回復するくらいなので、2時間は掘っていることになる。その間に消費したピッケルの本数11本。やはりかなり掘り続けているようだ。
「ルナ、そろそろ帰れる分の魔力、溜まったか?」
「オッケー!バッチリよ!」
「よし。みんな、帰ろうか」
「わかりましたー!」
「了解だ」
これを王国に持ち帰り、王に披露することで、俺の仕事は終わり。王国直属の商人になる為の試験的なダンジョンは終了だ。




