あいうえお作文
あの空に手を伸ばした
いつか見たいといっていた海の向こう
うしろを振り返っても声と姿は風の中
炎天下に焦がされた思い出はあの空の向こうへ消えた
追い風よ私の声を届けておくれ海の底まで
名を忘れられ覚えていたのは鯨だけ
二度と戻らぬ記憶のかたわれをそれは持っていた
拭う額に星の光が注がれる
眠れ眠れと鯨は歌うたゆたう水母の悲しい記憶
残り僅かのかたわれを陸のあなたは覚えていますか
まどろみのなか水柱光る
翠深き水底から聞こえるのは何
夢幻を破る目覚めの呼び声
目見開いて天仰ぐ
もう時がきた