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Freude
名も無い街の 片隅の
暗く 狭い 路地裏に
名が無い少女が 一人いた
徐々に薄れる小さなイシキ
徐々にこぼれる小さなイノチ
徐々に崩れる小さなセカイ
黒い闇が覆い隠す
必死に伸ばした 手
何かを掴みたくて
誰かに掴んでほしくて
最後に 何かを 掴みたい
切なく 軽くて 辛く 重い
最後の小さなネガイ
彼女が最後に掴んだものは
冷たく白い死神の手だった
だけど 彼女は微笑んだ
自然と浮かんだ笑みだった
死神は黙って淡々と
彼女の魂を回収した
小さなシアワセと ともに
どこかでネコが にゃあと泣いた
名も無い街の 片隅の
暗く 狭い 路地裏で
一人の少女が死に絶えた
だが それを知るモノは
死神とネコしかいなかった
彼女の躯は朽ちてゆく
誰にも知られず ひっそりと
少し
微笑んだ姿のまま