その6 怪しい。
真はたまらなくなって無言で下を向いた。真は自分の机の横にかかっていた鞄を無言でひったくり、一目散に廊下を駆け抜ける。背後にはクラスのざわつきと二ツ杁先生の「静かに!」という声。純が、
「おい、どうしたんだ、真!」
と叫び、真を追いかけようとして、二ツ杁先生に引き止められた。その代わりに、二ツ杁先生が真を追いかける。
恐らく、真の華々しい中学校生活はここに幕を閉じた。
そんなことはお構いなしにただ、真は駆けた。一目散に、あの筋肉堕天使の元へ。
同じ頃、ずっと校舎の裏に佇んでいたミカエルの腰のハートのペンダントが光った。
本部からの司令である。ミカエルはペンダントを腰から取ると、中央の突起を押す。すると、今までペンダントであったそれは、小型の無線機のようなものに変化した。ミカエルはそれを耳に当てた。
「こちら本部。応答せよ。」
無線機の向こうから声が聞こえる。
「もしもし、こちらミカエル。」
ミカエルは答えた。
「どうだ、パートナーはもういるのか。作戦はうまく行っているのか。」
本部は尋ねた。ミカエルは少し焦った様子で、
「えぇ、います。作戦も順調です。それはそうと、どのようなご用件でしょうか。突然連絡をなさるとは、お急ぎなのでしょう。」
と、少し話を逸らした。本部は、
「それもそうだな。」
と答えた。本部は話を続ける。
「突然だが、お前たちに、初めての司令を与えようと思う。」
少しの沈黙。本部は告げた。
「今、江吉良市に、破壊獣が向かっている。お前とそのパートナーには、そいつを倒してほしい。敵の場所はお前たちの現在地から東に2キロだ。」
堕天使は一言、
「了解。」
と答えた。
「では、健闘を祈る。」
本部はそれだけ告げて、無線のスイチを切った。
しかしミカエルは、校舎の裏にたったまま、動こうとしなかった。オネェ系筋肉堕天使、心はオトメのミカエル、傷心。
すると突然、遠くから誰かの駆ける音と、
真の怒鳴り声が聞こえた。
「このバカ天使やろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
真はステッキを持ってこちらへ暴走している。止まる気配はない。ミカエルは慌てて、
「ふ、二人まとめてテレポート!」
と叫んだ。
瞬間、真とミカエルは空中に消えた。
後を追っていた二ツ杁先生が呟いた。
「…消えた?」